やっぱりオークは下世話なようだ
ゼナを見て明らかに警戒するオークたち。
〈敵意を見せるなよ。お前たちとは強さの格が違う〉
まあ、HP、「強」「耐」の物理特化型だが。
ゼナはひも状に焼きあがった腸にご執心だ。順次焼けた順に平らげていく
「この熊は、「熊の女王」ではありませんか?」
そんな、通り名もあるのか? まあ、二〇歳だからいろんなところで知られているのかもな。
〈ゼナと言う。年の割には強壮な牝熊だ〉
「強壮なのでありますか? あやかりたいものであります!」
〈あやからんでよろしい!〉
「ちなみに、この一緒にいる御子は?」
〈名をジニーという。魔族だ〉
「お聞きするのが遅れたであります。貴殿の御名は?」
〈俺か、ザンザ・ガンガ。見た通りの魔族だか、羽トカゲだかだ〉
「いや、見て、全然わからないでありますよ」
まあ、ホントは竜人なんだけどね。
〈まあ、こんな奴だ。宜しくしなくてもいいけど、胡椒だけは宜しくな〉
〈もちろん。宜しく約束するであります〉
ゼナの食事が終わったようだが、まだ小腸はある。胃もある。
〈まあ、軍曹も食ってみるか?〉
「はあ、そういう焼き方を見ると、確かに美味そうでありますな」
塩の板の上で、肉汁を垂らしながら焙られている腸は食欲をそそられる。皿は人数分ないので木の板の上に乗せて軍曹に差し出す。
〈熱いぞ〉
軍曹がハフハフしながら食べる。
俺は重力魔法で浮かして食べる。
味は・・・ホルモンだな。牛ホルモンよりあっさりしてると思う。
「うんまいであります! 初めて食ったであります。こんなもの!」
〈そうか、お前らもこの部分は避けてたか、それが賢明だ。自分たちで捌いて処理しようとするなよ。俺だから食いモンに変えられる〉
「ところでそれは、念力でありますか?」
〈重力魔法だ。浮かしてるだけだな〉
浮かして、食える温度になったところで口に入れる。胃だな、これ。
「は? 詠唱してないではありませんか?」
〈詠唱? そういうのあるの? イメージが大事って聞いたけど〉
女神様からね。
「魔族だからなのでありましょうか?」
〈いや、この世界共通の正当な魔法、魔術の使い方のはずだけど?〉
「いや、魔法は詠唱と魔法陣が無ければ発動しないであります。ああ、いや、今、確かに発動中なのでありますなあ」
〈だって、ゼナだって無詠唱で土魔法使ってるぜ?〉
「は? 熊が? 獣が魔法を使うのでありますか?」
〈ジニーもな〉
「赤子が? MPがあるのでありますか?」
〈あるはずだが。少なくとも使ってる重力魔法でMP枯渇を起こしたことは無い〉
MP四〇〇以上あるって言うと、さらに疑うんだろうけど。
〈ところで、君の部下がすんごい目でこちらを睨んでいるのだが?〉
「頃合いでありますな、交代するであります」
ムニム軍曹は俺の横に座りなおして、ジェスチャーでオークビッチを呼び寄せ、二列に並ばせた。
俺は、人化して戻ったオークビッチたちに木の板を持たせた。焼きあがった肉から木製スティックですくい上げては板に乗せて与えていった。
お前ら、喜ぶのはいいが、股広げて喜びながら飛び上がるのは止めろ!
しかし、一一人? 一一頭? 多いな。胃の切り身を倍乗せて蒸し焼き状態で、火を通す。味見すると、塩が効いて火が通っていれば十分食えるんじゃね?
こうして間近に見るとそれぞれ特徴はある。目の向きが吊り上がってるの下がってるの、鼻先が大きいの小さいの。
〈一巡したなあ、お前らどうすんの? 直ぐ帰っちゃう? 一泊すんの?〉
「このまま帰るであります。夜の雪道は明るいのであります」
〈本気か? しかし、宿泊場所の心配をしなくていいのは助かる。なんせ一二人分だからなあ〉
俺は、割れた岩塩の二枚のかけらを渡した。更に催促されていたが、これでも一kg以上はあるのだ。
ムニム軍曹は部下のリュックサックというか背嚢にそのまま入れようとしたので、狼の皮で包んでやると恐縮していた。
「整列!」
〈待て!〉
「な、何で止めるでありますか?」
〈この次は「捧げ乳」だな?〉
「び。微妙に違うであります」
〈いいから、「捧げ乳」にしておけ。でもって最後の一字を絶対に変えるな〉
「それでは、隊が閉まらないであります。股も閉まらないであります」
〈捧げた方が閉まらねえだろうが! ここにゃ、下世話なお前らの習慣に付き合う奴ぁいねえんだよ!〉
「むう~、分かったであります。閉まらないけどやるであります。捧げ~乳!」
仕方なしに乳に手を添えるオークたち。
〈何で全員、不満顔なんだよ! もういいよ、行けよ! 道中気をつけてな! まったく〉
ブーブー言いながら去っていくオークたち。二度と来て欲しくないけど、来訪の約束しちまったんだよなあ。
雪道に足跡を残して姿が見えなくなるオークを見送って俺は今日の祈りに願った。
〈次来る奴の中にせめて恥じらうのが一頭くらいはいますように〉
〈女神ポイントを一〇付与します〉
〈納得!〉




