最近の女神はお楽しみのようだ
〈二本狼からのシカの恵みに感謝します〉
〈女神ポイントが二〇付与されました〉
〈今朝よりずいぶん少ないね?〉
〈女神ポイントが二〇〇追〈いえ、二〇で十分です!〉・・・遠慮深いのですね?〉
〈気分でポイント決めてない?〉
〈今朝のは初回サービスです。今回は一日二回になるので厳しく採点しましたが、お試し期間の先行ポイントの追加サービスもありでしょう〉
〈出会い系だか占い系だかの運営みたくなってますよ!〉
〈仮想通貨や電子マネーのポイントよりは緩い匙加減にするつもりです〉
〈だ・か・ら、どこで仕入れた知識なの? それ!〉
突っ込みを続けると眠れなくなりそうなので、その辺で切り上げる。
今日の事案の最大の問題はここが間借りされた場所であり、山羊の牧場に狼を呼び込んでしまったことだ。
エレトンの帰還後、山羊を一頭でも襲ったら、粛清しなければならない。それが借り手の誠意だが、二本狼には悪気はないのだろうから、そんなことになったら不幸だよなあ。
翌朝外に出ると、狼たちは軒下に固まって寝ていた。
俺は仕方がないと思うことにして、木材の調達に向かった。二本狼の寝床を作るためだ。
根元の直径が三〇㎝の直立した針葉樹を一〇本ほど仕込んで戻る。
空間切断で縦割りにし長い板材を作り、平地と斜面の境がある土地を選んで、雪を吹き飛ばして地肌を露出させ、そこに並べて立てかける。三重にして板を置き雨漏りしないようにする。板と斜面の隙間はかなり大きな空間があり、七頭が寄り添う十分なスペースが確保されているはずだ。
早速、牡親が様子を伺いに来た。
〈仲良く使えよ〉
俺は中の具合を見ながら、二本狼に念話した。
「ハフッ」
返事のつもりなのかな? 狼だから犬とは発声が違うのかも知れない。
俺が離れると狼たちは「掘っ建て」の周囲に集まっていた。
俺は、家の前に戻って鹿を亜空間から取り出して、処理を始める。
首を落として、軒に吊るし、血抜きをするも、狼に痛めつけられたせいか、血はほとんど出てこない。
雪の上に下ろして首から腹を薄く裂いて、皮を剥ぐ。右の後足はすでに剥いで肉と骨は無くなっている。皮は胴につなががったままにしている。小道具の石器があるので仕事がはかどる。
更に腹に切れ目を入れて内臓を取り出し部位ごとに亜空間に入れていく。角がないから判ってはいたが、この個体は女鹿だった。子宮の中に仔はいない。肝臓はやや硬くなってしまっているが、鮮度は悪くないようだ。
肉と骨だけになった鹿の前足を切り取って残りの胴体を再収納し、家の前で焚火の準備をする。
もう、昼前だがゼナからの催促はない。肉が焼ければ出てくるかな? と、思い時間をかけてゆっくり前足を焼く。
二本狼たちが先に寄ってきたので魔狼の肉を与えておく。特に生でも文句はないようだ。
狼たちがガリガリ骨をかじる音を聞きつけたのかゼナも外に出てきた。ジニーも一緒だ。
俺はとりあえず追加で鹿の肝臓を焼く。血管の多い部分と少ない部分をゼナに見せて選ばせる、血管側をゼナが飲み込んでいく。歯ごたえがある方が好きなのね。
俺は残りの肝臓を二つに分けてジニーにも与えてみる。手に取らないで直接俺の手から噛り付くジニー。マナーは・・・三歳児前に覚えさせよう。
肝臓のお味は、オオヤマカモシカのように甘くないのに甘く錯覚させるような風味はないが、濃厚な内臓の味と言うか、豆腐を凝縮したような食感と言うか、独特な旨味を感じる。尚且つ、個体の若さのせいか口の中で弾けて広がる食感も素晴らしい。二本狼よ、よくぞ狩ってきた!
その二本狼たちは鹿に執着することは無く、魔狼の骨で遊ぶ若狼を親二頭が眺めていたりする。
ゼナに焼きあがった鹿の前足を与えようとすると、鼻先で軽く突き返してくる。先に俺が喰う分をとれと言うジェスチャーらしい。俺の方が喰う量が少ないから、こう言う気配りするようになったのかな? 腿の上の方を一筋、二〇〇gほど貰って咀嚼する。部位のせいか昨日の肉より柔らかい。
食べ終わったゼナは満足のようで家の中に入って行く。俺は家の中の竈に火を入れ、軽く屋内を温めつつ、外の火の始末をしてゼナたちと共に寝る。
〈今日の豊かな食事に感謝します〉
〈あなたの隣人に分け与えた糧を評価し九〇ポイント付与します〉
〈女神ナビーネに感謝を〉
〈あなたの感謝の気持ちに〈一回のお祈りで一度のポイントでいーんだよ!〉ポイントは私の慈悲なので無制限ですよ? 評価基準がまだ曖昧ですけど〉
〈そうやって、続けると無限ループに陥るから〉
〈ポイント付与の理由付けが楽しくて〉
〈楽しんでるのならいいけど、次回の祈祷に繰り越しときなさいよ〉
〈なるほど、時を待って楽しめと、期待することは良いことですね。ではおやすみなさいザンザよ〉
信徒に戒められる神ってどうなのよ、ナビーネ。




