初めての祈りから始まる朝
朝だ。今日も外は寒い。
〈ナビーネ、おはよう〉
〈ザンザ、おはようございます。挨拶してくれたのは初めてですね。ついでに祈りも捧げてくれると良いのですが〉
〈祈り? 俺は願いは自分で実現していく主義なのだが、何を祈ればいいのだろう?〉
〈そうですね。他者の安寧を祈るというのはどうでしょう?〉
〈そうだ、エレトンの安寧はどうなった? あれから危なげなく南下してるのか?〉
〈あれから、大分進んだようです。南南東へ一三〇㎞〉
〈早いな〉
〈今まで彼らは山羊の食草を求めながら移動していたので、足が遅かったのです〉
〈あの移動は放牧兼用だったんだなあ。では、エレトン一家の安寧をナビーネ様に祈願するか〉
俺はうろ覚えの祈りのポーズをとる。
〈彼らの旅の安全と穏やかな天候に恵まれることを祈ります〉
〈エレトン一家とあなたと友人に福音を〉
光が周囲を包んだ。いや、俺が光を発したのか?
〈今、光ったよな?〉
〈これが信仰の光です。光であり、音でもある〉
「クフー」
あ、起きたか。ゼナが周囲を気にしている。何か、さっきのことを感じ取ったのかも知れない。
信仰か、信仰で腹が膨れるのは聖書の中だけだよなあ。しかし、この安定した食料供給はナビーネが与えてくれた空間魔法に頼ってるんだから信仰の賜物か。
と、いう訳で朝食づくりだ。竈で焚火だ。
ダイモンマス・・・は残しておくか、では、いつものようにオオヤマカモシカだな。
肉を焼いていると、すぐにゼナが寄ってきた。ただし肉をねだるわけではなく、火の近くにいたいだけのようだ。ジニーは一緒にしがみついている。ていうか、地味に腕力握力ついてるよね、ジニー。
今日は狼の毛皮の処理だ。肉と脂肪をそぎ落とすのだが、鉈ってここに置いてるのかな? せん刀なんてないよね?
無ければ作る! 俺は外に出て適当な大きさの石を拾った、今回だけは四角形に切る。斜めに細い面を斜めに切り、石の刃物、石器を作る。鉋の刃の大きい奴だ。
俺は岩の下敷きになってる狼の皮を収納し、川に向かう。水にさらして塩を抜いて岩の上で石器で肉と脂肪をこそぎ落とす。石器、いい仕事してるじゃん。うまい具合に皮を傷つけないで肉脂肪がはがれていく。握り具合もいい。疲れも来ない、のはステータスのせいか。昼までにノルマは終わった。
俺は皮を一旦収納。
外側の柵で傷んでいる横材を回収し、収納から新しい木を取り出し、空間切断で縦割りにして、横材にする。そこに皮を干して並べる。天気の悪い日は回収だけどね。しかし、ミョウバンかタンニンが手に入るまでは半乾きで収納しておくか。
午後は飛行訓練だ。目標高度二〇〇〇m、自力で上がれるか? 重力魔法なしで羽ばたき、弧を描きながら上昇していく、周囲の山は三〇〇m程度だったのでその周囲は上昇気流があって、簡単に四〇〇mは登れたが、これ以上が問題だ。体が重い、気温低い、空気が薄くなる。ダメだ一〇〇〇mで限界を感じる。そうだ、グルーミング時に大量の空気を亜空間に吸い込んだはず、眼前に亜空間を開き、空気を取り出すタイミングで吸気する。おお、喉があったけえ! 一五〇〇mは上がれた。自力では・・・反則したような気もするけど、この辺が限界みたいだ。これ以上は魔法で自重を軽減するか、空間移動で上るか。今後の冬空に挑戦するなら防寒対策もしなくちゃな。気圧は純粋に俺が慣れていくしか対策がないような気がする。
下りるついでに、急降下の練習だ。行き成りは危ないから、一〇〇mずつ、降下して勢いを殺す。あ、これ、急降下の練習じゃなくて、制動の練習だ。制動かけた時の翼への負担が大きい。できるけど、翼と筋肉が酷使されてるけど。地上に無事降りることが出来ました。
命がけ? いや、最悪、空間移動で上に戻ってグライディングに切り替えるつもりだったから。




