エレトンたちは冬の間、家を貸してくれるようだ
朝起きると、まだ、雨で霧が濃い。しかし、エレトンの見立てでは昼までに上がるそうだ、
朝食は鶏がらスープにカブとオオヤマカモシカを入れた煮物だ。あっさりした汁に肉は濃厚で美味しい。
午前のお勉強会の時間にエレトンとマロンは寝室で何やら深刻な話をしている。これからの、俺らとの付き合い扱いが議題のようだ。
俺からも言っておかなくてはならない。
ここにいるのは恐らく冬の間だけ。
冬の間、この家を貸してくれるのか?(エレトン一家が許せばだが)。
長くてもゼナが熊の社会にもどるか、次の自分の仔を孕むかすれば、俺たちはまた旅に出ること。
そして、問題はモニータを中継にしてその話をしなければならないことだ。話の進行次第ではモニータがごねて会話にならないだろう。
とか、考えていたら夫婦がテーブルの椅子に腰かけて俺に話しかけてきた。
「昨日、みぞれが降った。次に降るときは雪になるだろう。そうなる前に俺たちは山羊を連れて南に行かなくちゃならねえ。お前さんたちは連れて行けない。これからどうするつもりだ?」
俺はモニータの横に座って、モニータに中継してもらう心構えをしてもらうため、おはじき遊びをやんわり止めてもらう。
「冬の間、この家を貸して欲しいって」
「そうか、しかし、冬の間だけなのか?」
「ゼナの乳が出ている間はここにいさせてくれるとうれしいんだって。夏まで?」
「熊は夏が来る前に発情するんじゃなかったか?」
「その時が出ていく時になるー え、出ていくの? やだ、一緒にいる! ジニーもザンザもうちの子になったらいいじゃない!」
「ジニーもザンザも空を飛んでどこにでも行けるのに、この家に留めることはできないだろ?」
「やだやだ、一緒がいい。お友達なんだよ。お友達は一緒がいいんだよ」
単純だがいい言葉だモニータ。
〈モニータ、お前たちは南に行って俺たちと別れる。春になったらまた一緒になる。夏になったら、別れるかもしれない。その後はまた会いに来ることもあるだろう。友達だからなあ〉
「ホント? ホントにまた会いに来てくれる?」
〈ああ、約束だ。そうだ、約束の印を作ろう〉
「約束のしるし?」
俺は扉を開けて外に出た。霧は出ていたが雨は上がっていた。
道の横の柵の外に大きな岩が飛び出している個所がある。俺はその岩に空間切断魔法で平らな面を作る。その面に移転魔法陣を焼き付ける。
〈これが約束の印だ。これがここにあると俺とジニーは遠い場所にいても、ここに戻ってくることとが出来る〉
三〇㎝ほどの円形の中の六芒星には魔法発動と共にこの地の座標と俺のマーキング(サイン?)がが刻まれている。初めて描いてみたがうまく機能するはずだ。あまり大きくないのもいいな。
俺は少し離れた所に草の生えていない地面を見つけて移転魔法陣を焼き付ける。そこに手を添え移転先をイメージすると最初の岩の位置に瞬間移動した。成功だ。
〈こんな感じで戻ってくるから〉
岩の横にいたモニータに念話する。
「こ、これは移転門なのかい?」
マロンが恐々と尋ねるので、モニータに念話中継してもらう。
「そんなだいそれたもんじゃないって、ザンザとジニーしか移動できないって」
俺は土の上に書いた陣を「解消」するよう念じると、陣は消滅した。取り合えず見える位置からなら解消できるようだ。
「これがあったら、また来てくれるんだね?」
エレトン一家に分かるように俺は頷いた。
「わかってるだろうが、これは秘密だからな」
「なあ、おっとー、こんなのがここにあったら不味くないか?」
「ここは、そうそう他人が来たりしねえ。人が来そうな時はさりげなく干草でもかけときゃいいさ」
「つまりは、冬の間、あんたたちにはにここを預けるから、よろしく頼むよ」
マロンが締めくくって一家は昼の作業にかかるようだ。
その日はガトーだけが山羊を連れて放牧に出た。
エレトンは移動の準備、バックパックというか背負子に積み込むものを積み込んで移動の準備をし、マロンは移動用の着衣を整理するのだった。




