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レベルアップがあるらしい

 〈竜人が近づいています〉

 ナビーネさんが起こしてくれた。これは何気にありがたい。今後とも続けてくれるのだろうか?

 〈こんなことでよろしければ〉

 扉が開かれ、男が二人立っていた。一人は仮性父親だ。もう一人は初顔だ。

 兄弟も目を覚まして、喧しく鳴きだした。

 初顔の男は一匹の蛇を両手でつかんでいる。生きているようだ。それをこの部屋に放り込んで扉を閉めやがった。

 〈ネイビーマンバです。まだ小型ですが、猛毒で凶暴な魔物です。HP二〇/一二〇です〉

 魔物? 野生動物とは違うのか?

 〈野生動物はここまで痛めつけられると、死んでいきますが、魔物はとどめを刺さない限り回復していきます。一部を除いて逃げることなく死ぬまで攻撃を止めません〉

 ネイビーマンバは鎌首を持ち上げてこちらに近づいてくる。

 兄弟がかつてない大声で喚きだした。

 俺は空間切断魔法の三支点を鎌首の位置に定め魔法を発動する。三角形の区画から火花が飛ぶ。この現象は空気中の切断された分子が弾かれて発生する現象なのだと、ようやく理解した。

 切断空間を解除すると頭部五㎝が、ぽとりと地に落ちた。

 敵HPは?

 〈0です〉

 俺は窓なのか建築物の隙間なのか、わからないような横長の間から、毒蛇の頭を放り捨てた。残った胴体の切り口を舐めてみる。強烈な生臭さと血臭に顔をしかめるが、吐き気までは起こらない。新人生初の食事が生の蛇かあ。

 俺は残念な食材に失望しながら、蛇皮に切れ目を入れて縦に引き裂いた。爪が良い仕事をしてくれる。首の切り口から、さらに肉を縦に裂く。

 内臓を消化器官、気管とひんむいて外に放り捨てる。循環器を外すと丸い石のような物が転がり落ちた。俺は、それを拾い上げる。

 〈魔真珠LV二ですね。食べるとレベルが上がります〉

 RPG的な? まあ、何事も経験だろう。俺は魔真珠とやらを口に入れると、飲み込む前に口の中で溶けて腹に何か入っていった。

 〈レベルが上がりましたが、条件を満たしていないため表記できません〉

 なんだそりゃ。

 〈条件は命名によってオープンになります〉

 表記されないだけでレベルは上がってるんだよな?

 〈はい〉

 なら、いっか・

 捨てた内臓は裂き割った腹の中を縦に並んでいたので、蛇の体を八割ほど開いた状態だ。俺は皮と肉と骨になった蛇の皮を切り口部分から剥き、皮を肉から引き離していく。労せず、骨と肉だけが残り、少しずつ肉をついばむ。

 そう、俺の口はくちばしのように尖っており、そういう食い方に向いていたのだ。

 兄弟が俺の食事を見ている。涎を垂らしながら。

 俺は、空間切断を使って蛇を中央からぶつ切りにする。しっぽから半分を兄弟の眼前にぶら下げた。

 兄弟は匂いを嗅ぐようなしぐさをして、蛇をつかんでしげしげと見てから丸飲みにした。あっという間に全部飲み込む。 俺も兄弟にあやかって、丸飲みにしてみた。 飲み込むには太いかなと思ったが、のど越しはすんなりしたもので、確かに喰ったな~的な充実感はある。

 しかし、あいつら(竜人)、俺達のこと完全に家畜扱いだよなぁ。しかも、ふたり(二竜)に対して餌は一匹のみとか、半端なネグレクトなんかすんなよな。

 それはともかく、検証が必要だ。

 奴ら竜人は、俺のように竜として生まれ、その後人型になるようだ。竜人になる条件は同時期に生まれたものより強くなること。

 その見極め、基準、具体的な方法が今のところ分からない。例えば俺が兄弟より明らかに強くなった時、どういう処置で竜人に変化させてくれるのかは、まだ分からない。

 二人に対して餌一匹ということは、片方は飢えて死んでもいいということか? 兄弟が死ねば竜人の権利が俺に決定するということか。

 これは蟲毒だな。

 狭い器に同種の生き物を集めて共食いさせ、最後に残ったものを使役するという呪術だ。

 ずいぶん忌まわしい人種のようだな、竜人。


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