塩の効果は偉大だったようだ
俺たちは家に入らずに焚火をする。
「早かったねえ、塩は採れたのかい?」
俺は最初に切り取った塩の塊の一部を取り出し、マロンに渡す。
「こ、こりゃ、驚いた。真っ白じゃないかい!」
実際には茶色の素が沢山入っている。但し、砂や岩の含有は少ない筈だ。
マロンは急いで家に入ろうとして、引き返してきた。
「も、貰っていいんだね?」
と、確認してきたので俺は首を縦に振る。
マロンが家に入って立ち替わりに出てきたのはエレトンだった。
「あ、あれをどこで手に入れた?」
俺はモニータに中継で念話を伝える。
「谷の崖の上の方だって。飛べないと採れないんだって」
エレトンは微妙な顔をしていた。
半分嘘を教えたのは、普通の人間の行程では、あの五頭がいた熊の里を通過することになるからだ。最初は通ろうとした人が熊に襲われるだろう。そして次は熊の群れが人の大部隊に殲滅されることになるだろう。恐らくはゼナと浅からぬ関係のある熊たちだ。そっとしておいてやりたい。
俺は家の中に入って、テーブルの上に塩の三角柱を五本出して並べた。それぞれ一辺二〇センチ長さ二メートル程度だ。
「わあー、綺麗な塩―!」
確かに透明感はないが、家の照明魔道具に照らされた塩柱はキラキラ輝いて美しい。
他の三人は目を剥いて絶句している。
「お、お前ら、分かってるな?」
「ああ、ああ、絶対秘密だね?」
ガトーはただただ頷く。
「モニータ、誰にも言っちゃダメだからね」
マロンはかすれた小さい声でモニータの耳元で囁いた。
「うん、ヒミツ!」
「できるだけ、塩の話もしない、口にも出さない、約束だよ」
「うん、約束」
マロンの囁きさえ拾う俺の耳はかなり優秀なようだ。
それはともかく、外に出て火を焚きなおす。白煙は出なくなったので、石の上に三角形の塩の板を乗せる。塩の表面がザラザラしてきたので、オオヤマカモシカの肉を乗せてみる。シュウシュウと音を立てて石の上とは違う焼き具合となったので、口に入れる。
ああああああ! 塩だなあ! 塩利いてるよ! 文明の味だよ! 良し! 次行こう! 次っ!
俺は次には大きい塊を取り出して皮を剥き、塩の上で焼く。表面がピンク色になったのでゼナに与える。ゼナの反応は・・・いつも通りか。塩気は分かるはずなんだけどなあ、岩塩も舐めてたし。
俺は塩味肉をジニーにも与えてみる。お、ジニーは分かるようだ。肉の表面を舐めている。けど、それ、お下品に見えるからやめようね。噛み噛みしよう。ああ、この肉は堅かったか、すぐに食べるのを止めたのでゼナに渡し替える。ゼナは塩付きよりジニーの涎付きの方を美味しそうに食べるのね。
ゼナは乳首を舐め始めたので、ジニーは下腹の方に飛びつく。授乳開始だ。俺はその間、狼、ゴートの肉を塩で堪能する。
ああ、全然違うなあ、特に狼、なんと言うか、すっごい味が引き締まるね。ゴートは匂いがきつくなるけど、悪くはない。塩なしよりはずっと良い。ゼナはえり好みしてオオヤマカモシカしか食べない。そんな、食い方してたら直ぐに無くなっちまうんだぞ。
エレトンが外に出てきた。
「塩をありがとよ」
俺は、エレトンを鑑定してみる。
エレトン(四〇歳)
LV 二九
人種 ヒューマン
状態 山羊使い
HP 一五〇
MP 七
強 四三
速 一九
賢 一一五
魔 九
耐 八〇
運 三二
スキル
――――
風魔法
へえ、おとッつぁん「魔」が低いのに賢いのね。HP高いのが目立つけど、鍛えてるからかな? 環境による強化かな?
俺は薄く切った肉を岩塩に載せて焼いていたのを、しっかり見られる。
「かあー、なんつう贅沢な焼き方だあ」
串状の白木の枝で引っ掛けて、ミディアムな肉をエレトンに渡す。
「い、いいのか?」
エレトンは俺よりもゼナの方を見て確認してくる。ゼナは満腹のせいか今日は腹を立てたりはしなかった。
「チックショウ! うっめえなあー」
「おとッつぁん、ずるい!」
と、言うモニータと二人がエレトンを睨んでいた。
「す、すまねえ、もう一枚大きめのをお願いしていいか?」
俺は、薄切りの広い肉を取り出して、焼き始める。
モニータに皿を持ってくるように伝えると、いいタイミングで木皿を持って来たのでそこに載せる。
「中で三つに切れって」
マロンが皿を持って家に入る。そして感動の声がする。
結局、昨日と同じように俺たちがリビング、四人家族が寝室で寝ることになった。




