一番乗り気なのは俺なのだった
俺は奥屋の裏を覗いてみた。裏側は屋根から伸びた庇の下に二〇頭ほどの山羊がいる。山羊は中央の柵で分断されており、柵の中には一頭ずつ一際大きく長い角を持った山羊がいた。つまり、牡は二頭であとは牝とその仔山羊のようだ。
朝食の終わったエレトンとガトーが柵の脇の扉から中に入ってロープで山羊を繋ぎ始めた。牡を先頭に二列二班で、二人で分かれて先導をするのだろう。
べーべー、メーメーと騒がしく鳴き始めた山羊の隊列は柵を出て、道を通らず緩い谷間へ降りて行った。
俺は家に入ってみる。マロンは衣類(多分下着だろう)を抱えて、モニータはジニーに毛皮の靴下のようなものを履かせていた。何か思い出して寝室に駆け込むモニータ。
何気に鑑定してしまった。
モニータ(七歳)
LV 八
人種 ヒューマン
状態 ノーマル
HP 一二
MP 一二
強 七
速 九
賢 一六
魔 一二
耐 五
運 一二
スキル
――――
火魔法
そうか、視界に単体で入れておくと、鑑定しやすいのか。
やっぱり、モニータは賢い子なのだなあ。先が楽しみだ。・・・なんか一二って数字が多いな?
〈モニータ、俺たちはこれから塩を取りに行く〉
「えっ、行っちゃうの?」
〈塩が取れたら戻ってくる〉
〈ジニーは?〉
〈一緒に連れて行く〉
〈塩は山奥にしかないんだよ。赤ちゃんは危ないよう〉
〈俺とゼナが守るから大丈夫だ。それにジニーはエレトンより強い。多分〉
〈いつ、戻る?〉
〈多分、今日か明日〉
ゼナの「近く」と言うニュアンスは一日行程のはずだ。長くても今日中に片道を走破出来るだろう。
〈マロンに伝えてくれ〉
「おっかさん、ザンザたちが塩を取りに行くって」
「はあ? 塩はこの谷の奥だよ。今はもう堀りつくしちまって、どんなになってるのか分かったもんじゃない、止めときな」
ゼナの意識は北の山の向こうだったが、全然違う場所じゃないのか? 熊の里もあるみたいだし、ついでに見てくるか。
「やっぱり行くって」
「は~あ、あたしたちゃ、そんなに切羽詰まっちゃいないんだよ。南に越冬しに行ったら塩はいくらでもあるんだ。無理しなくたっていいんだよ」
「無理じゃないって、見に行くのが目的だって、あたしも行きたい」
「ダメ!」
〈ダメだ〉
「えーっ! ザンザまでなの? ジニーは連れて行くのにい!」
どうした? 「賢」一六が崩壊しかけてるぞモニータ。
「ジニーもだって? うーん、まあ、人の子じゃないから推し測れないけどお。それにジニーは空飛べるからねえ。ジニーは空飛べるからねえ」
「おっかさん、意地悪ううー」
モニータは半べそをかいていた。
まあ、戻ってくれば機嫌を直してくれるだろう。
無理に行かなくてもいいのかも知れない。しかし、塩の鉱山、鉱脈とか見たことないもんなあ。やっぱ、異世界来たんだから、まだ見ぬ未知の世界、見に行きたいじゃん。探したいじゃん。
つまりは一番乗り気なのは俺なのだった。




