モニータと念話出来るようだ
朝目が覚めると、ほぼ同時に起きたマロンが朝食づくりを始めた。
木造の家の中は暖かい。初めての経験だ。竜人の房は窓とは名ばかりの横穴だったからなあ。
ガトーが起きて、俺たちを横目で見て外に出て行った。
おとッつぁんも起きてきた。下着のままだが、俺を見て何かを思い出したように寝室で服を着るようだ。
「おっとー、手伝ってくれ、塩取り換えねえとダメだ」
「なんだと? もうなくなったか。石は山羊の箱から出して捨てるんじゃねえぞ」
トイレかと思ったらガトー君、早朝から山羊の世話か、偉いねえ。
おとッつぁん、外に出ようとして中に顔を入れて俺に言う。
「しばらく、ゼナは外に出さないでくれるとありがてえ」
バタバタと家の裏に回ったようだ。やがて、何か硬いものを叩く音がする。
「今は良い塩が手に入らなくってねえ。塩付きの石の塊を山羊にやってるんだけど、すぐにダメになっちまうのさ。塩だけなら放り込んで、なくなるまで放って置きゃいいんだけど、一々取り換えなきゃならないから男どもは大変さあ。あんたがくれたこのオオヤマ様の肉も塩がありゃ塩漬けにできて、ゆっくり食えるんだけどねえ」
そう言いながら、マロンは張りから吊るした肉を薄切りにして鍋に放り込んでいた。
気が付くと、ゼナが起きてジニーに授乳していた。
「ゼナ」
〈ゆっくり乳をやってくれ。今外に出ると山羊が驚くんだと〉
「クフー」
「おはよジニー! おはよゼナ! おはよザンザ! おはよおっかさん!」
おお、挨拶の習慣あるんじゃない。
「オー!」
〈おはよう〉
俺はモニータに手を上げて返礼する。ネイティブアメリカン風だな。
「オー!」
〈・・・おはよ?〉
なんと、モニータが念話してきた。そう言えば昨日間近でジニーと念話していた時反応があったよな。
〈わかるかい? 俺たちはこうやってゼナとジニーと〈話し〉をしてるんだ〉
「頭で?」
〈頭で話をしてるの?〉
〈そうだ、直接頭の中に話しをしてるんだ〉
〈ジニーともお話しできるの? していいの?〉
〈ああ、乳を飲み終わったらな。でも、ジニーは〈話し〉を聞くだけで自分では〈話せ〉ない〉
「そっかあ」
〈ジニーはまだ〈話せ〉ないのかあ〉
〈ジニーは賢いから〈話せ〉ば分かるさ。モニータが話しかけてくれるとジニーも〈話せ〉るようになるだろう〉
「ほんと?」
〈ほんとにジニーは話せる? お話しできる?〉
〈ああ、仲良くしてやってくれ〉
「うん、仲良くする!」
〈仲良しなんだからね。ジニー!〉
今のはジニーに念話したようだ。念話は直通の場合もあるが、意識しなければ漏れてしまうこともあるようだ。
「モニータ。お前、こいつらと話しぃしてたのかい?」
「うん、ザンザはね、ザンザは頭でお話しできるんだよ。仲良しになれるんだよ」
「ほんとかよお、声に出さない話って、神託じゃないか? いいのかい?これ」
〈神託、ナビーネって他に話かけたら神託になるの?〉
俺は意識してナビーネに限定した念話を送る。
〈随分ほったらかしにしてくれましたよね?〉
〈そちらから念話してくれても良かったんだぜ?〉
〈天候把握と索敵を同時に行っていたので、致し方なかったのです〉
〈そうか、ナビーネはいつもそばにいるんだなあ〉
〈そして、念話ですが、モニータの例の通り、個別の才で通信能力に差があります。才のない者に念話しようとすると、その他諸々にまで念話が接続されることになり、神の声として混乱を来すでしょう〉
〈そうか、神託とは関連付けないでおこう〉
俺はモニータに念話をつなげる。
〈モニータ、これは〈念話〉だから、神託とじゃないとおっかさんに言ってくれ〉
「おっかさん、これは念話だから神託じゃないってザンザが言ってる」
心配そうに配膳しているマロンにモニータが伝える。
「ほ、本当に声無しで話をしてるんだねえ」
おとッつぁんとガトーが戻ってくる。




