おとッつぁんの家で感動の嵐が吹き荒れたようだ
家の中が騒がしい。ジニーが目を覚ましたようだ。
家に入ると、ジニーは天井に避難していた。
「ジニ―ちゃん! 降りといで!」
モニータが天井のジニーを呼んでいるが、ジニーは眠そうな顔できょろきょろ見回している。
俺を見つけると、降りてくる。おや、ゼナじゃなくて俺の方に来るとは。俺はジニーを前抱きにしてモニータのところに連れて行く。
「ジニー」
〈モニータだ。人の子だ〉
「ジニーちゃん! あたしはモニータだよ」
モニータ、いい挨拶だ。
「モニー?」
「モニータ、モニーでいいや」
〈いやいや、そこは教育上正しく覚えさせたいのでモニータで〉
モニータが不思議そうな顔で俺を見る。もしかして、念話、通じてる?
しかし、それよりも向こうだ。
俺はジニーをモニータに預け、モニータは笑顔満面でジニーを抱き上げる。
「ジニー」
〈モニータはお前よりずっと弱い、落とされそうになる前に自分で浮くんだぞ〉
それよりも、ゼナだ。テーブルのオオヤマカモシカの肉を挟んでおとッつぁんを威嚇している。
「ゼナ」
〈それはこの家族にあげたんだ。もうお前のじゃない!〉
ゼナは思いっきり俺の方に首を回せるだけ回して、俺を見つめる。初めて見せる拒否反応だ。
俺はため息をつきながら、扉に向かう。扉のそばから、亜空間から肝臓を取り出してゼナに見せる。
俺は外に出る。ゼナは急いでついてきた。そうだろう。今現在では一番の御馳走だからなあ。
俺は石焼用の石を置いて家の離れたところで、いつものように焚火を始める。ゼナが火の回りで落ち着かないので、肝臓を一口切って生でゼナに与える。
「そりゃあ、肝臓か?」
やや離れたところでおとッつぁんが立っている。
ジニーはリビングで大人しくしているのだろうか?
俺は肝臓を薄切りにしておとッつぁんに手渡す。
ゼナが唸り声をあげるが、肝臓の切り身を口に放り込んで黙らせる。
おとッつぁんは慌てて家に駆けこんだ。
「マロン、急いでこれを焼け! フライパンで「薄焼き」でいい」
おっかさんは栗おばさんか。俺の耳は屋内の声をよく拾っている。
「何だい、レバーかい?」
「早く食わねえとダメになっちまう」
「まあ、夕食は食わないとね。こんな時でも食えるんだから」
「おとッつぁん、この子背中に羽がついてる」
「なんてこった、こいつも魔族かよ」
「おっとー、どうすんだよ」
「腹をくくるしかねえ、とにかくザンザは俺たちを、どうこうするつもりはねえ。今夜は成り行きに任せっちまおう」
「いいのか? もうすぐ冬なんだぞ。それに、山羊が喰われたらどうすんだよ?」
「たぶん、ザンザは家畜は襲わねえ」
「何で分かる?」
「この腿を見ろ、骨の付け根の一番硬い処を一発で綺麗に切ってやがる。熊にゃ出来ねえ。ザンザが魔法か自分の技で切ったんだ。あの小さいのがオオヤマ様を狩ったのに違えねえ。オオヤマ様を狩れるハンターが家畜なんか襲うもんか。それにママクマの機嫌を取ってくれたのも俺たちには危害を加えるつもりはねえってこった」
「あんた、レバー焼けたよ。いつもの煮物と一緒でいいね?」
「ああ、みんなで均しく分けんだぞ」
「いいのかい? あんたが貰ったんだろうに」
「こんな高級食材、俺だけで食ったら罰が当たらあ」
「これ、そんなに美味いのかぁ?」
「美味いし、珍しい。これを喰うためにお貴族様が大枚をはたいて腕利きを雇うそうだ。それでも一生に一度食えるかどうかだ」
「でも、ちょっとしかないね?」
「言ったろ。珍しいんだ。オオヤマ様は山奥にしかいねえ。狩ったら、レバーは麓に下ろすまで持たねえ。その場で食うしかねえんだ。そんな山奥まで行けるような強えお貴族様はめったにいるもんじゃねえ。ちょっとずつ味わって食うんだぞ」
「・・・うまっ!」
「やわらっけえ!」
「ふおおおお!」
「お肉あまーい!」
おとッつぁんの家で感動の嵐が吹き荒れたようだ。




