野生の雨宿りは大変なようだ
俺は川岸の岩の上で亜空間の中を窺ってみる。
うわっ、この一列に並んでるの!ゼナの抜け毛? シュールだなあ。
俺は取り出して、川の中に廃棄した。いいよね、違法廃棄じゃないよね?
消費MPは一だった。良かった!あれカウントされたら数千の消費だよ。
ノミは、ウヒャー、これも酷いな。一列並ぶと延々と続くヤスデの体みたい、大小差があるのが不気味だよね。ちなみに小さいのに極細まで観察できるのは亜空間チートのおかげだ。
ノミと、ダニは別の列だ。もう一列なんか短いのがある。色が薄いのアレはシラミだという?
それらを川の中に投棄すると、水面がざわつく。おお、魚が食ってる食ってるマスか、アマゴかな?
一仕事終えた俺は、元の岩の上にいるゼナとジニーに合流する。
再出発してゼナの様子が急変した。何か焦っている。
俺たちを振り返りながら走ろうとする。
「クマッ、クマッ」
久しぶりに聞いたな、その鳴き声。
〈ナビーネ敵が来ているのか?〉
〈いいえ、周辺は静かなものです。外敵どころか獲物もいません〉
ゼナは森の中に入り、斜面の急な所を何か探しながら移動している。そして崖の下に沿って走り始めた、俺はジニーに重力魔法を使わせて飛行しながら追いかけている、
「ゼナ」
〈おい、そっちは!!〉
俺が焦った念話を送ったのは、その進路の先には明らかな敵の反応があったからだ。
〈ブタバナオークです〉
その、ブタバナオーク五体は岩場の窪みの周囲に散開していた。
ものすごい勢いで突進してくるゼナに大慌てして、武器を構えることが出来たのは一体だけだ。と、いうか、武器を持った敵って初めてじゃないか!
二本足の魔物に体当たりをかまして吹き飛ばし、反動でもう一体が巻き込まれ、岩の壁に叩きつけられていた。次いで近くにいたのは武器、石斧を持ったオークだった。
あれがオーク? 俺はイメージとのギャップに具に観察してしまった。顔は種名のとおり、豚の顔だ。丸い輪郭にブタバナがついて上下に短い牙、犬歯を持っている。しかし、体はやせ細り茶色い皮膚を持った貧相な裸族のような姿だった。
石斧を振り上げることが出来ただけで、ゼナの爪による下からの弾き上げにその身は分断されてしまった。
ゼナ、うまく新技を実戦投入出来てるじゃない!
ゼナはもう一体を仕留めるべく接敵している。俺は逃げる最後のブタバナオークを空間切断で切り飛ばす。
ゼナが襲っていたオークは大した抵抗もできず、爪落としで叩き潰されていた。
俺は周囲を確認する。最初に弾き飛ばされたブタバナオークはすでに絶命していた。巻き込まれた奴は、まだ息があるが意識はない。起こして意思疎通できるかどうか試すか――― ゼナが戻ってきて問答無用でブタバナオークの頭を叩き潰してしまった。
ゼナは崖の洞にあるブタバナオークの収集品を引きずり出し、放り捨て、洞を拡張し始める。洞の壁をガリガリ、バリバリ広げている。あれ、土魔法だよね。ゼナはほとんどアナグマ。
ゼナは殺したブタバナオークには見向きもせず、ジニーの服の裾を咥えて/くわえて洞の中に引き入れ、次いで俺を頭で押しやる様にジニーと一緒にする。
その時になって俺は雨が降り始めたことに気づいたのだった。
そうか、ゼナのこの慌てぶりは雨宿りしたかったのか。しかし、俺たちはこのゼナの雨宿りが本当に緊急事態であったことを、しばらくして理解する。




