兄弟もいるみたい
俺は無事生まれることが出来たようだ。しかし、周囲には親はいないようだ。
生誕を祝ってくれるようであれば、一人称を「僕」にして、大人しく育てられも良かったのだが、周囲は扉もない窓一つの殺風景な部屋だった。
毛布のような物の上に俺と俺の入っていた卵の殻が転がっている。まあ、敷き藁や小枝の上でないだけましか。
そして、注視すべきはもう一個の卵! 当然だろうが俺の殻と大きさと色は同じである。その卵を爪の先でコツコツとつついてみる。何かが、中で動く気配。俺は卵に手を押し当てて、少し揺らしてみた。
卵の中身は更に大きく動いて卵自体が揺れていた。
まあ、つまり、俺の兄弟は元気そうだった。
兄弟が健康かどうかはともかく、まずは、俺自身のことだ。卵の中で触診してみたとおり、手の指は五本ある(鋭い爪付き)。生まれたてだからかどうか知れないが、腕力はなさそうだ。かと言って、竜盤類の恐竜のように貧弱な腕でもなく、力仕事も出来そうだ。
胸があり、肩があって、腹はポッテリだ。腹筋は弱そうだが三列の横長な鱗が縦に並んでいる。
膝は鳥足、いや、恐竜の足か? 丈夫そうな指が前方に三本、外横に一本、後方に一本、鳥とは違うが起立状態の安定には貢献してそうだ。
そして、しっぽ。横から見てみると、長いなぁと実感できる。
そして、なんと背中も見ることが出来る。首を真横より後方に回すことができ、目も側面に位置しているからだろう。
翼は、翼は……なんだこれは! 見たことがないタイプだ。一番上? 前? にあるのはプテラノドン型のような被膜型の主翼がある。違うのは付け根のほうで被膜がなくなり、下に向かって三対のオールのような、主翼の半分程度の細長く二つ折りの翼が並んでいる。
そこまで見分して気づいたが、俺の視界が広い。真正面に顔を向けて前と左右やや後方二七〇度を普通に見渡すことができた。
そして俺は目が三つあることを思い出したのだった。
俺は何だか脱力してしまって、膝の力を抜いた。膝を伸ばすと、しっぽの三支点で全身が安定する。顎を胸につけると更に上半身も安定する。
そして俺はそのまま意識を手放した。