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ジニーは「ジニー・ギンギ」に熊は「ゼナ」になったようだ

 ジニーが目を覚ましたようだ。クマの毛に潜ってごそごそしている。もうこれは完全に獣臭が移ってるよね! 女の子なのに酷い。

 俺は即席竈に薪と言うより丸太の輪切りに火をつけて、くべていく。

 熊は自分のお腹を舐めている。ジニーはそれに興味を持ったようだ。涎のついたお腹をまさぐっている。ジニーが顔をそこに押し付けると、熊が驚いて声を上げる。

 「クマッ!」

 熊は体の位置を変える。熊って「クマ」って鳴くんだな。

 それはともかく、俺は軽く熊に振り払われたジニーを起こして座らせる。

 「マンマー、マンマー」

 ジニーは不満顔だ。

 「ジニー」

 〈乳首は噛んじゃダメだ〉

 俺はこの一連の成り行きがどういうことなのか理解できたので、ジニーに教育的指導を施そうと思う。

 「ジニー」

 〈指を出して〉

 差し出したジニーの指を俺は甘噛みする。

 ジニーが驚いて手を引っ込める。

 俺が熊の腹を見ると、ジニーもクマに首を向ける。

 「ジニー」

 〈もう一度指を出して〉

 ジニーが恐る恐る指を出したので、今度は俺は舌を出しておいて、それをジニーの指にからめ、巻き付ける形にして吸引する。

 「ジニー」

 〈噛んだら、ダメなんだぞ。ちゅーちゅーするんだ。ちゅーちゅー!〉

 俺はジニーを熊の腹に押しやる。熊はさっきとは違う乳首を舐めてはジニーを見つめる。ジニーは熊の乳首を見つけ吸い付いた。ジニーはうまくチューチューしている。哺乳類じゃないけど、授乳はうまくいっているようだ。

 俺は一時間ほど火をくべ続けて、狼の皮を剥いては温まった石の上で肉を焼き始める。

 ジニーは二度寝を始めて起きてこない。

 熊と肉を交互に分け合っていたが、すぐに俺は腹が太ってきたので、熊が満足するまで焼肉作業を続けた。

 ジニーが起きたので暖かい肉を与えてみる。ジニーは肉を食べ始めるが、すぐにゲップをする。分かりやすい奴だ。

 焚火が灰だけになるのを待って、俺は下流に向けて移動を再開することにする。

 ジニーは宙に浮いて、その手を引いて俺は歩いていると、熊が前に出て歩き始めた。

 まあ、それが野生の自然なポジションなのだろう。俺は熊の誘導に従うことにした。

 当てのある旅ではないのだ。何処に連れて行かれようが、不都合があるわけではない。

 その日は大きな渓谷の脇を通って、岩肌を乗り越えて、大きな森林が見え始めたところでビバークすることにする。

 熊は地に横たわり、ジニーは体にまとわりついて、遊んで、やがて乳首を探し当てて乳を飲もうとするが、必ず熊は乳首の周囲の汚れを舐めとってから、ジニーをそこに誘うのだった。

 母熊してるなあ。しかし、このままではジニーが野生児になってしまう。

 俺は、最低限の教育を施そうと思い、ジニーが乳から離れるのを待つ。口を乳首から離しうとうとし始めるので寝付く前に石の上に座らせたジニーは、眠そうな怪訝そうな顔をしている。

 「ジニー」

 〈おさらいだ〉

 俺は、自分を指さして発声する。

 「ザンザ」

 俺はジニーを指さして発声する。

 「ジニー」

 ジニーは自分の頬に両手を添えて反対する。

 「ジンジ!」

 おお、覚えていたのか! 発声もギンギじゃなくジンジだ。

 「ジニー」

 〈お前、女の子だから、名前を変えるんだ。ジニーになるんだ。いいか?〉

 俺はジニーを見つめながら念話で伝えてみる。

 「ジニー?」

 ジニーは頬に両手を添えて、胡乱な顔を俺に向ける。

 「ジニー」

 俺は頷きながら念話を続ける。

 〈お前の将来のためだ。大きくなって物心ついて反抗期になった時、自分がジンジって呼ばれてみろ。絶対、思春期を拗らせることになるぞ。拗れた思春期は必ずや中二病を併発して引きこもり症候群だ。せっかくのお前の翼が暗い部屋で陰気にたたまれ続けることになる。ジニーという名はお前の未来と明るく広い空を強く羽ばたく飛翔を保証するのだ〉

 ジニーはうつむいてもじもじしながらこちらを見上げた。

 「ジニー?」

 「ジニー!」

 〈そうだ! お前の名前だ。ジニー・ギンギ! こっちだっていい名だろう?〉

 「ジニー・ギンギ」

 〈おお、フルネームちゃんと言えたな! お兄ちゃんより優秀だぞ! お兄ちゃん未だにザンザ・ガンガがザンザ・ザンザなんだからなあ〉

 〈改名が成立しました。ステータスを開示します〉


 ジニー・ギンギ(齢歳)

 LV 一〇

 人種 竜人   、

 状態 真竜人

 HP 四三

 MP 三七七


 強 二一

 速 二二

 賢 一七

 魔 二八七

 耐 一九

 運 一一

 スキル

 ――――

 重力魔法・風魔法・火魔法


 ああ、名前変わったなあ。名前が変わったからって、能力値は変わったりしないか。

 「ジニー、ジニー!」

 俺はそう名を呼びながら、ジニーの頭を二度撫でた。

 そこに、熊が頭を割り込ませてきた。あえて、邪魔になる様にジニーと俺の間に突っ込んで、片目でこちらを見ている。

 〈なんだよ、まだ肉が足りないのか?〉

 熊は頭をぐるぐると回す。横に振るのではなく左右に回して、こちらをまた見て、荒い鼻息をかける。

 〈物欲しそうだな? なんか欲しい?〉

 熊は明らかに頷く。

 頷いて下に向けた頭を俺に押し付ける。

 何だ、撫でてほしいのか? いや、名前か!

 〈お前、名前が欲しいのか?〉

 熊はさらに小刻みに俺に頭を擦り付ける。

 〈名前、名前かあ〉

 うーん、どうするかなあ。

 ジニーが声に出して俺が声に出せる名前って、この路線しかないよなあ。

 「ジャニー?」

 熊は頭を上げたが、納得はしていないようだ。

 〈アイドルを多産できるかもよ?〉

「じゃあ、ザニー?」

 なんか残念だなあ。

 ザジズゼ、ゼニー、ダメだ。こいつが金に縁があるとは思えない。

 ゼナー……ゼナ

 「ゼナ」

 〈どうだ? ゼナ?〉

 女名だぞ! カッコいいぞ! 熊は口を開けて舌を出している。

 この名が欲しいよな?

 「ゼナ!」

 〈ほれ、ジニーも呼んでみろよ?〉

 「ゼナ」

 「ゼナ?」

 〈ああ、この熊はゼナ! いいな?〉


 〈命名が成立しました。ステータスを開示します〉


 ミカヅキグマのゼナ(二〇歳)

 状態 産褥期

 LV 二〇

 HP 四四八

 MP 二三


 強 五八〇

 速 六〇

 賢 四〇

 魔 二六

 耐 九九九

 運 三〇

 スキル

 爪落とし


 あれ? なんかタイトル的な名前になった。

 ミカヅキグマのゼナは、納得した様子でうつ伏せに寝始めた。ジニーもゼナの胸元に潜り込んでいる。

 俺も座り込んで寝ることにした。その夜は敵襲もなく、一回きりの睡眠を朝まで維持することが出来た。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 子育てもののなろうはわりと見かけますが お母さんを育てる本作は珍しいですね
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