今夜は焼肉パーティーのようだ。タレ無し(泣き)
湖が浅くなって対岸が狭くなり、水の流れが顕著になってきたので、湖出口が近いと思われる。このまま、滝や渓谷になるのではなく、緩やかに川になるのかもしれない。
熊は相変わらず、ついてくる。もう骨や肉は咥えてはいない。
俺は思い出したことがあって、もう一度熊を鑑定してみる。
ミカヅキグマ(二〇歳)
状態 産褥期
LV 一八
HP 四三〇
MP 八
強 五二一
速 五二
賢 一九
魔 一
耐 八一九
運 二〇
スキル
爪落とし
ああ、これだ、「産褥期」!
〈おい、熊! お前子供どうすんだ? どうしてんだよ?〉
思わず、念話してしまった。熊は念話を受信しているのだろうか? 明らかに俺に反応している。ていうか、こいつ雌だったんだな、今更な認識だが。
〈子連れの熊は余程のことがない限り、子から離れようとはしません〉
ナビーネが補助解説してくれた。
〈あの森には魔狼の群れがいたなあ。撃退したけど〉
〈恐らくは、もう、子は食われてしまったのでしょう。〉
〈竜人の世界も世知辛いけど、野生の熊も世知辛い人生送ってんなあ〉
いかんいかん、警戒を解いてはまずいよな。
しかし、明らかに物理的に熊との距離は縮まっていたのだった。
もう一つ俺は気づいていた。熊のステータスの魔が〇から一になっていた。やはり、竜人の肉を喰ったせいだろうなあ。
俺は、振り返るのをやめて下流に向けて再び進み始める。あえて、ゆっくりとだ。周りの植物や岩石を鑑定しながら進むのだ。
雑草三割、薬草二割、食草四割、毒草一割。稀に魔草の苗とかあったりする。マンドラゴラやトレントの幼生だろうか?
岩は玄武岩が殆んどだ。鉱石類は見つからない。
ジニーは虫や小さなサンショウウオが気になるようだ。
「ジニー」
〈それはウシアブだ。魔法で燃やしちまえ〉
俺は体に取り付こうとする害虫を魔法の火球で焼いて見せる。
「ジニー」
〈それはサンショウウオだ。食うと喉がネバネバになるぞ〉
しかし、零歳児が捕まえるには手に余るようだ。
ジニーの野外観察が一巡すると、今度は熊が気になり始めたのだろう、しきりと後ろを気にするようになった。
「ジニー」
〈あいつには構うなよ。触るとダニや害虫に取り付かれるぞ〉
「ガーガー?」
ジニーが返事をした? いや、質問か?
〈ああ、ガーガーは痛いし痒いから面倒なんだ〉
そんなことをしながら下流に向かっていると薄暗くなりなじめた。夕暮れだ。外で迎える初めての夜だ。俺は倒木のある場所をビバークに選んだ。焚火の薪に事欠かないからだ。
俺はまず、倒木を空間切断で輪切りにして、薪をストックしておく。ついで、凹凸の少ない石を選んで、狼の毛皮で綺麗に土や汚れを拭き落として円形に並べていく。乾いている木を円形の真ん中あたりで着火して随時足していく。
最初は白煙が凄い。二時間ほど燃やすと白煙は無くなり、炎が安定し始めた。
俺は亜空間から狼の死骸を取り出し皮をむき、肉を石の上に置く。暖められた石の上の肉が表面から肉汁と油が溢れてきたら、レアで食い頃だ。
俺は据わりの良い石に座っているジニーに食い頃の骨付き肉を与えてみる。しかし、零歳児の手には余るようで、取り落としてしまうジニー。
しかし、なんと負けじと石の上に取り落とした肉を両手で押さえつけ、犬のように口で引き裂きながら食べ始めるのであった。
何とかして、皿やナイフ・フォークを手に入れないといかんなあ。
熊は大人しくじっと座っている。
ミカヅキグマというのは前世のツキノワグマと違い、下腹の中央から胸の端にかけて三日月状に毛の色が違うからなのだなあとか、思っていると涎を出しては啜っている。
俺は亜空間から新しい肉を取り出し、石の上の焼けた肉と、生の肉を持って熊に近づき、熊の前に差し出してみる。熊は焼けた肉の方を選んで咥え、手(前足?)を添えながら咀嚼し始めた。
俺は火の元に戻り、焙るべき肉を加えながら、自分、ジニー、熊の順に肉を回していった。
ジニーや俺はすぐに満腹になった。
俺とジニーは川に行って水を啜り、足場の安定したところで、あえてジニーの前で放尿と脱糞を実践する。
ジニーは力んで放屁から始めた。
俺は慌てて後ろに回って、裾をまくり上げ、簡易なしーしースタイルを取らせて、ジニーの体を安定させる。
そしてジニーも見事に、事を済ますことが出来たのだった。おむつ未経験で排泄できるのだから大したもんだ。
お前は大物になれる! 兄ちゃんが保証する。




