竜人強襲! なんか俺、邪魔なようだ。
切り倒した木の枝に枯れた部分があるので細切れにして(空間切断で)、火魔法で着火してみる。切り株の上で焼くと煙が半端ないな。地面の上の方が完全燃焼で煙が出ない。炭火じゃなとこれまた煙が出る。そんなことを試した後、枝に狼の肉を突き刺し焼いてみる。レア・ミディアム・ウェルダン……まあ、色々試してみる。
狼肉は焼きすぎると固くなることが判明。レアが良いようだ。
ジンジもレアに焼きながら食べている。
食べ終わったら、運動だ。俺は羽ばたくために、森の外に出た。まあ、飛行訓練というやつだ。
まあ、訓練は困難を極めた。
腹一杯になっただけで、こうも背中の筋肉や翼に負担がかかるものかね。ああ、このために重力魔法持ってるのかな。
俺は、体全体を軽くするように魔力を使う。ああ、浮いた浮いた。
これなら、飛べるわ。
「ギア~~ギア~~」
宙に飛んでいる俺に対して、羽ばたいても飛べないジンジが抗議の声を上げている。
俺は着陸してジンジの手を取った。手から重力魔法を伝える。ジンジの手は軽くなっているはずだ。
〈これが重力魔法だ。お前も持ってんだから使ってみ?〉
ジンジは縦に伸びたり縮んだりしているようだ。ああ、ああ、これは重力魔法が一瞬しか作用していないのだなぁ。
〈重力魔法を使ったら、そのまま使い続けるの!〉
「ギア?」
〈ギアじゃなくて、ギーーーって感じ〉
「ギー」
〈もっと長くギーーーー!〉
「ギーーーー」
〈いや、声だけ出してもダメだから、魔法使って! 重力魔法〉
「ギーーーー?」
〈重くしてどうすんだ! 軽くなるんだよ!〉「イーーーー」〈って感じ〉
俺はジンジの手をもう一度握り、重力魔法をかけながら発声練習だか魔法練習だかを続けた。
「イイイイイ」
ジンジが縦に痙攣している。
〈なんで途切れるんだ?〉「ン二――――」〈って感じ。続けて続けて〉
「イイイ二―――?〉
〈そう、そう、そう、そう、続けて続けて〉「二ーーー」って「二―――」って!〉
ジンジの体が浮き上がる。
〈羽ばたけ! 羽ばたけ!〉
ジンジが羽ばたいて、空中を移動することができるようになった。
しかし、重力魔法が途切れたのか、すぐに地に落ちることとなった。
〈まあ、お前のMPはまだ二桁だ。この辺にしておくか〉
うん? なんだ?
音の接近が早すぎる。
〈竜人が近づいています〉
と、ナビーネが補足してくれる。
俺はジンジの手を引いて森に隠れる。
「見いつけた!」
女の声。仮性姉と思われる竜人か?
〈風魔法です〉
俺は方向転換して動く。俺のいた位置を凄まじい風圧が移動する。縦回転の風の車輪とでも言おうか。
〈へえ~、風魔法ってああやって使うんだ〉
俺は丈夫そうな大木を見つけて、その陰から魔法の使用者の方をうかがう。
「出てきなさいよ。それで隠れてるつもり? 森ごと焼いたっていいのよ?」
俺は木の陰から、ちらっとだけ顔を出して、すぐに引っ込めた。
「ちっ!」
眉間に皺だけじゃなく、鼻の横にも皺を寄せて俺を見てたなあ。そこまで憎まれる覚えは無いのだが。
仮性姉は回り込んできた。しかし、その場には俺やジンジは・いない。
空間移動で安全圏にジンジを置いて、俺はもう一度空間移動を使う。
移動先は仮性姉の後ろだ。丁度、翼を収納したところだった。ってか、収納できるんだ翼。その翼のない、間抜けな背中に空間切断を使う。
仮性姉はそれほど間抜けではなく後ろの気配に振り向こうとするが、その下半身の挙動に反してまず左腕が地に落ち、上体、肩から上そして断面よりも上は元俺のいた場所を向きながら地にずり落ちていった。
脇より上にあげていた右腕はついたままだ。
〈結局、名前を付けてくれないだけでなく、自分の名さえ名乗らなかったな、仮性の姉さん〉
仮性姉の顔はまだ生体反応はあって、大口を開けて不自然に痙攣していた。
その、頭部と付属部分には構わず俺は胴体部分の断面に手を潜り込ませ、魔真珠を引き抜いた。
一気にステータスが変化するのが分かる。手にした魔真珠はLV十八だった。
なんだよこれ。努力足りねえんじゃねえの! その年でLV十八ってよ!
〈来いよ。ジンジ〉
ジンジは歩いてこちらに来るようだ。その間に俺はステータスを確認する。
ザンザ・ガンガ(零歳)
LV 三一
人種 竜人 、
状態 ラウドズライグ
HP 一五五
MP 一〇七(三〇四)
強 三九
速 六六
賢 一八二
魔 二二二
耐 四二
運 四五
スキル
強発声・強化爪・鑑定眼・ふりおろしっぽ
空間魔法・重力魔法・風魔法・火魔法・土魔法
熊とか、戦うには俺自身の質量が足りなさそうだが、ボア(想像)くらいなら十分倒せそうだな。
ジンジはおっかなびっくり仮性姉の死骸を見ている。
〈これ、食うか?〉
仮性姉の魔真珠をつまむようにして、ジンジの眼前にかざしてみた。ジンジは珍しく逡巡したようだが、やがては手に取って口に入れた。
これで、恐らくはジンジが竜人となる、か………… ジンジが縮み始めた。
ベビージンジがあらわれた。いや、赤ん坊が地べたに座っていた。
全裸で背中に翼がある。赤髪、肌色、血色の良い赤ん坊が俺を見上げていた。赤髪の頭には小さな角は生えているが、尻尾は無くなってしまったようだ。
〈無事、竜人になれたようだな。いや、これって無事なのか?〉
俺はジンジの両脇に手を入れ抱き上げた。そして、俺は自分の根本的は間違いを見せつけられることになった。
「ジンジ……お前、女の子だったのね」
ジンジの股間にはあると思っていたものがなく、表現しがたいシンプルな形状を俺はしげしげと見てしまった。
全く欲情は発露しなかったが。




