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カルナの子の名付けは用意されていたようだ

ナビーネから脱皮のお祝いに2000ポイントもらった。

包茎のままなのに。

翌朝、俺は川で水浴びした。

岩場に上がって体を伸縮させながら、魔法のお湯を浴びて温める。

まだ翼は動きが悪いので今日一日、飛行は控えた方がよさそうだ。

体の大きさはガトーやツバキよりやや背が低いくらい。

脱皮後の成長率が凄いが前回比よりも伸びは抑えられた模様。

前のままの成長率だとホント数年後には牛や馬並み(下ネタではありません)、民家での生活に不便を来すような大きさになってしまうところだった。

濡れた身体を乾かすついでに火を焚いて朝飯を用意する。

最近は朝は魚、昼はオヤツを兼ねた果物、夜は肉を使ったメニューで安定している。

ロッセンマルタが不味い不味いと不平を言ったり、木苺のクレープもどきを奪い合ったり、アナウサギが美味いとか好評だったり、贅沢なことだ。

ちなみに、オヤツはオリパがガトーの分をキープして夕食時に渡したりするのを見て、マロンはエレトンの分、ツバキはヤイバたちの分をキープするようになった。

オヤツを所望する獣はゼナぐらいだ。

今日はタエがクレープの皮だけを食べていたが。

仔狼たちはタビトナカイの厚皮からはぎ取った固いゼラチン状の部分を奪い合って遊ぶのが日課になっている。

日課と言えば、俺は重く大きくなった体で飛行訓練をしている。

この体、重力魔法なしでは飛べなくなってしまった。

代わりに、飛行時の魔法消費が訓練をこなすにつれて減少するようになった。


今の季節はまだ春なのか、もう夏なのか、涼しいが植生は初夏の様相。

地域的には高山地帯に近いし梅雨なんてものもないとツルギも言ってるし、秋までずっとこのままなのかもしれない。

若い熊が数頭南に行ったり、清湖方向に行く親子連れのシカをうちの狼が見逃したりと言った報告をヤイバとハガネが報告する日々が過ぎる。

そんな夏の夕食時にカルナが自分の股をしげしげと見て気にしている。

「どうした、産まれるのか?」

すごく、軽くツルギが訊ねている。

それに対して軽く二回ほど頷くカルナ。

ヤイバとハガネは急いで晩飯を掻き込んだ。

「てて者、川の横でいいな!」

「洗濯場の下がいい。カルナ、歩けるな?」

「ガウ」

俺は念話でモニータに知らせる。

慌てた様子でマロンが外に出てくる。

「ちょいと! 外で産ませるつもりかい?」

「大丈夫だ。カルナのは一瞬で終わるから。ただ、ちょっと驚かせることになるかも知れない。怖かったら家の中にいてくれ」

怖かったらって、どんな分娩をするつもりだ?

「湯はいらないか?」

俺は指先から温水を出して見せる。

「それは、すごく助かる」

そんなことを打ち合わせているうちに、ヤイバとハガネは川沿いに長い杭を4本立てて、陣幕のようなものを作り上げた。

その内側にカルナとツルギが入って行く。

臭いで判るが、カルナはすでに破水しているようだ。

「父者、布は足りるか?」

「ああ、十分だ」

カルナの唸り声が聞こえる。

「グオオオオオオオアアアアアー」

唸る声が叫び声に変わって、陣幕の高さを超えて人型の影が膨張する。

稲光のような紫電を纏ってるが大丈夫か?

獣座りのようなポーズをとって、暗がりの中で巨大化してるのがカルナなのは分かる。

ゼナは家の外に出て遠巻きにこちらを見ている。

狼たちは更に遠くで、落ち着かないで歩き回っている。

これはメタモルフォーゼというスキルか?

獣化するんじゃなくって、巨大化のことだったの?

「良し、女の子だ! カルナ! 女の子だぞ! 名はサツキだ!」

中でツルギが大声で告げると産声が響き始める。

いや、巨大化して1分も経っていないぞ?

布に繰るんだ赤子を抱いてツルギが陣幕から飛び出してくる。

「湯を頼む」

「ああ、人肌で良いんだな」

俺は水圧を上げないように羊水まみれの赤子に産湯をかける。

へその緒を短く縛り上げて、余分を切り取り、産声を上げる赤子をツルギが手慣れた手つきで濡れた布で拭き取っていく。

「サツキか。名はもう決めていたんだな」

「ああ、あと3人分は、母者が決めていたんだ」

「元帥様も用意がいいことだ」

「ザンザ、もし、気にならなかったらだが、カルナにも湯を流してもらえないか?」

産褥を汚れとして忌避する者もいるらしい。

逆にお産時に男は不潔として、清めてからでないと接触させないようにする事もあるとか。

「ああ、産まれは下賤な魔物だ。産褥を気にすることはないよ」

俺は、陣幕の中に入って行った。

既にカルナは元の大きさに戻って、片膝をついて座っていたが俺を見ると立ち上がった。

「後産は良いのか?」

「ハー、ガウ」

気だるそうな返事をする。

「胎盤は?」

「ガウ」

川の向こうを親指示すカルナ。

そっちへ放り捨てたようだ。

「じゃあ、お湯で流すぞ」

カルナの下半身を指先のお湯魔法で清めながら、俺はこの大胆な分娩を検証していた。

メタモルフォーゼと言うスキルで自身を巨大化し、子宮の胎盤を物理的に引き剥がして、産道も巨大化してるため分娩は正しく一瞬だったわけか。

恐らく普通人が赤子から後産で胎盤と生み出すのに対して、カルナは胎盤ごと産出したのだろう。

すごい安産だな!

これなら、9人も産むわけだ。

カルナの外陰部からは既に出血も止まっている。

そう言えば超回復とか言うスキルも持ってたなあ。

コットン生地の布を持ったツバキが入ってきて、カルナを拭き始める。

「母者~もう少し恥ずかしがってよ。世が世なら王女様なんだからさあ」

「グッケッ!」

「何だそりゃ、王族なんて糞くらえ!」とでも言いたそうだな。

「しかし、回復力が凄いのは分かるが、腹も弛んでないのはどういう事?」

「弛んでるよ母者の腹、ホントは筋腹だよ。腹筋割れてるよ」

という、ツバキの頭をカルナが掴んだ。

「痛い痛い! ごめんて!」

「オーイ、カルナ! サツキが乳欲しがってるぞー」

外でツルギが呼んでいる。

カルナが不意に俺の首に腕を回して抱き寄せ自分の頬に摺り寄せた。

直ぐに俺は放され、カルナは全裸の上にローブを纏って外に出て行った。

「母者が他人にあんなことするの初めて見た」

俺をちらりと見てツバキも外に出る。

俺は川の水を空間に移動で幕内の地面を流して、外に出た。

外に出ると、まだ授乳は始まっていなかった。

「もう少し待った方がいいって産婆さんなら言うよ」

等とマロンが言っている。

「大丈夫だよ。普通の出産と違って、母子ともに殆んど疲弊していないから。欲しがっていそうなら乳も飲ませてやっていいだろう」

狼、カルナと安産続きなので安請け合いな意見を言ったが、あながち間違ってはいないだろう。

サツキは白いコットン地の布にくるまれて今は産声を出してはいない。

「オリパ、ガトー、新築を使わせてやっていいか?」

俺は二人に訊いてみる。

「いいですけど、良いわよね? ガトー?」

「ああ、いいけど、あそこはまだベッドも無いんだぜ? しかも、ほこってないか?」

「イヤ、作業が終わると浄化している。土間に寝たんでいいんだろ?カルナ?」

「ガウ」

「どんな形であれ、仕切りは必要だ。特にカルナ様の授乳なんて恐れ多くて見ちゃいられねえ」

「いや、エレトン殿、そのうち妻の行動に収拾がつかなくなって色々あからさまになっていくだろうから気にしなくて良い」

「そこは、そちらが気にしてくだせえよ」

「俺も妻に付き合って中で寝て良いか?」

「もちろんでさあ」

俺は新築の中に入ろうとする夫婦に警告しておく。

「ツルギ、カルナ、中で子作りは禁止だからな」

「ううん、ああ、もちろんだ」

パンとカルナがツルギの股間を叩く。

なるほど、抑えが効かないのはツルギの方か。


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