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2回目の脱皮はみんなで祝ってくれるようだ

牧場に戻って、翌日から屋根の「紋付け」を施していき、東屋、新宅、そしてイノキバの教会の屋根が完成した。

現在、新宅の中ではダイニングテーブルが完成し、ベッドを組み立て中だ。

キッチンでは出てきた家具の端材を燃やしてオリペアーネが独自で料理の修行中だったりする。

が、

「何で塩振っただけのザンザの料理に負けてますの?!」

それはね、鑑定眼で焼き具合を見極めてるからだろう。

肉の中の雑菌が死滅したタイミングで塩振って引き上げてるのが、たまたま上手く(旨く)仕上がっているのだろう。

あとは切り方かな?

空間魔法の断片に押し当てながら切った野菜や肉は断面が綺麗に分離されている。

オリパが使っている調理ナイフは、切った時、具材を押しつぶしてしまっているのだろう。

イノキバたちへの発注に上質な砥石か和包丁に近い刃物を加えておくか。


仔狼たちは動き回るようになり、ジニーやコナタの後をついて母狼とゼナの間を行ったり来たり。

カルナはゼナにもたれて日がな一日まったりとしている。

時にハギとモニータがダイゴをあやしながら仔狼をかまっている。

ヤイバとハガネとツバキはゲンたち狩猟部隊に同行して川の合流地点に待機するのが日課になっていた。

ツルギはエレトンやガトーと一緒に山羊の面倒を見ている。

 

そんな日々が経過した頃の朝、俺は起きたら身体中に変調を来していた。

ああ、この痛みは前に経験した。

脱皮が始まるんだ。

家から出ようとして歩くのにも難が出そうなので足の皮をチリチリ向いていたらゼナが気付いて舐めまわしてくれた。

古い皮が浮き上がって来たので歩けるようになったから川の洗濯場に向かうと、ゼナも一緒についてきてくれた。

全身を濡らすと脱皮が楽になるはず。

ここなら、水浴びしても周囲を汚さないし、俺も汚れが付かないからなあ。

身体中に水魔法で湯をぶっかけて、ふやけた皮を剥いていく。

ゼナが首の皮を剥ぎ取って俺に「どうするこれ」と言いたげに見せる。

〈食ってもいいけど〉

ゼナは咀嚼してみてイマイチだったのか、2枚目からは足元に放置するようになった。

そんな俺たちに気付いたジュンとタエがこちらに駆け付けた。

〈ザンザおっきい〉

そうかタエ、もう体が膨張し始めているか。

皮を剥いたところをゼナは舐めている。

ジュンもゼナの真似をし始めたが、いつものように手や頭を舐めるだけだ。

〈ああ、ジュン、剥いたばかりの体を舐めて。乾かないようにしてくれるとうれしい〉

翼の皮があらかた脱げたので、ゼナは背中の皮を舐めとってくれている。

そこからジュンとタエが舐めてくれるので、ヒリヒリとした痛みは軽減されている。

まあ、前回ほどの痛みはないのだが、舐めてくれてむしろ微妙に気持ちいいのがありがたかった。

迎えに来たつもりなのか、ジニーが飛んできていた。

「ザンザ、でか」

「ふぁあ、でかくなっちファった」

ああ、声が変わった。

なんか口が器用に動く。

練習したら言語障害直りそう。

「バー、マー、ファー(パー)・・・」

うーん、BとMはいけそう。

Pはもうちょいかな。

「ばー、ふぃー、ぶー、べー、ふぉー」

ああ、まだまだ練習が必要のようだ。

最後の尻尾の皮が剝がれると言うより、スポンと抜けたので、エレトン家に戻る。

軒の横の定位置に座って、ゼナやジュンたちにお願いをしないといけない。

〈ああ、お前たち、今朝は朝飯は無しでもいいか?〉

なんか、ジュン以外のゲンとダン他の狼は様子の変わった俺を警戒しているのか遠巻きにしてるし。

〈一皮剥けた体に火を当てたくないんだ・・・ああ、冷えた焼き魚なら数があるか〉

〈夕飯出るなら問題ないって、生肉でも問題ないし〉

タエの中継。

〈そうしてくれ〉

〈ゼナも良いか?〉

「クフム」

いいようだ。

いざとなったら、モニータとハギに手伝わせるという手もある。

「ひっ! 何なの?」

オリパ、そんな露骨に驚くなよ。

「ザンザだよ。だっふぃ(脱皮)したんだ。皮が ム けたんだ」

言葉にしようとすると流暢にはいかないなあ。

「ザ、ザンザなの? 急に太りましたわね」

「そんな風に ミ えるのか。表皮が弛んでるのかな?」

「おおー、どうしちまったんだ? お前ザンザか?」

ヤイバたちにも見つかってしまった。

「皮が ム けたザンザです」

「やっぱり、トカゲの類だったか」

もう、それでいいよハガネ。

「そういうわけで、本調子じゃないので朝ごはんはそちらで用意してくれ。ちな ミに夕食には復調予定」

「そ、そうか、大変そうだな」

と、いう訳でその日の朝食はエレトンたちのスープとツルギたちの蒸かしイモだったようだ。

その日午後まで、俺は家の中でゼナの体にもたれてマッタリしていた。

ジニーはそんな時間が気に入ったのか、俺と一緒に大人しくしていた。

時々、マロンとモニータが様子を見にきてくれた。

午後、と言うか夕刻前に、身体が不自由なく動けるようになったので、夕食のための焚火を始めると、カルナが不思議そうな顔をして寄ってきた。

何故かゼナも俺にくっついていると、必然的にジニーとダイゴ、ラクの仔も続く。

そして、全員が焚火の周りに、いや、俺の周りに集まってきた。

見世物か、お披露目か!

「あー、皮 む けたから、大きくなった。これから も よろしく」

「それは目出度い!」

「お祝いだな」

「あー、お ま えら、割礼祭じゃねーから」

まだ被ったままだから。

爬虫類的に。

「普通にしててくれ。フツーに!」


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