命名でステータス開放のようだ
俺は兄弟を促して、歩いて森に向かう。兄弟は何をするのか分かっていないと思うが、とにかくついて来てくれるようだ。
森の手前で俺は立ち止って兄弟を見る。
そうだ、まだ名前無かったよな、俺達。
しかし、名前ぇ・・・名前かあ。
実はもう決めていたりする。
俺は兄弟に向かって、自分を指さして口を開く。
「ザンザ」
何度も自分を指さしながら念話でも伝える。
〈ザンザ〉
そう、俺の名は『ザンザ』とすることにする。
「ガンガ!」
しかし、ガ行と母音しか発声できない兄弟はそう返してきた。
俺は兄弟を指さして宣言する。
「ジンジ」
〈それがお前の名だ! ジンジ〉
兄弟は自分を指さす。開いた手の親指を向け頭を傾げた仕草をしながら、
「ギンギ」
ですよねえ!
しかし、そうだよな、「ザンザ・ガンガ」と「ジンジ・ギンギ」か、なんか命名として成立するような気がする。
〈俺、ザンザ・ガンガ、お前、ジンジ・ギンギ、決定な〉
「ギンギ・ギンギ?」
〈ああ、そうだ! 合ってる合ってる〉
「ガンガ・ガンガ!」
〈俺がザンザ・ガンガ! これが名前だ〉
〈命名が成立しました。ステータスを開示します〉
ナビーネからの念話だった。
ザンザ・ガンガ(0歳)
LV 一二
人種 竜人 、
状態 ラウドズライグ
HP 九二
MP 一二四
強 二〇
速 三三
賢 一二一
魔 八九
耐 二一
運 二三
スキル
強発声・強化爪・鑑定眼・ふりおろしっぽ
空間魔法・重力魔法・風魔法・火魔法
それは、頭の中と言うか、視界に突然浮き出した日本語の文字だった。一度でもRPGをしたことがあれば、わかりやすいステータス表示だろう。数値化は実に有難い。
特筆すべきはやはりこれか? 「鑑定眼」
〈鑑定!〉
俺はジンジと名付けた兄弟に試してみる。
ジンジ・ギンギ(0歳)
LV 七
人種 竜人 、
状態 ペンドレイク
HP 三三
MP 一四
強 一一
速 一二
賢 七
魔 六
耐 九
運 一〇
スキル
――――
重力魔法・風魔法・火魔法
なるほど、転生プレミアム優秀じゃねえか! 改めてナビーネに感謝。
〈鑑定眼は貴方の固有スキルです。感謝の対象ではありません〉
〈そ、そうなの? じゃ、ジンジも持ってる、重力魔法・風魔法・火魔法とかは?〉
〈それは、竜種のスキルでしょう〉
とか、念話しながら草原を進んでいると、右前方から跳ねながら突進してくるものあり!
「ツノウサギです」
俺は右前に空間切断の座標を水平に固定する。ウサギは自分からそれに衝突して二分されてしまった。俺は二つの分かれたそれを、つまみ上げて森に向かった。
期せずして、手に入れた獲物を気にしながらついてくる兄弟改めジンジ。
森と草原の境界で俺は細い蔓植物を引きちぎって、ウサギの断面が下になるように縛って木につるした。
口を開けて近づくジンジに制止をかける。
〈もう、水分補給は十分できたんだから、これからはちゃんと血抜きして食べようね!〉
「ぎあ~、ぎあ~」
よく分かっていないジンジが抗議の声を上げる。まあ、そのうち舌が肥えれば、この作業の意義も分かってくるだろうと思い、今は腹ごしらえを優先するため、ツノウサギの頭側の皮を剥いてジンジに渡す。
ジンジは丸飲みせず、肉を骨から引きちぎりながら食べる。俺は下半分の断面から魔真珠を取り出し鑑定してみる。
魔真珠Lv1
簡単な表示だ。
俺はそれを食べてみる。
「ぎあ~、ぎあ~」
ジンジが抗議の声を上げる。見ていたか。
〈前はお前が食べただろ? 交代交代だよ〉
俺は視界にステータスを出してみる。
ザンザ・ガンガ(0歳)
LV 一三
人種 竜人 、
状態 ラウドズライグ
HP 九七
MP 一三三(一三六)
強 二一
速 三五
賢 一三〇
魔 九五
耐 二二
運 三一
スキル
強発声・強化爪・鑑定眼・ふりおろしっぽ
空間魔法・重力魔法・風魔法・火魔法
ザンザはレヴェルが上がったってか? しかし、これはいいデータだったな。一Lvあたりの成長がよく判った。
ふむ、MPの表示が二つある。括弧無しが現状、括弧内は最大値ってわけか。ダメージを負っていたら、HPも二重表示になってたってわけか。
やはり、俺は魔力突出型のようだ。魔力に関するパラの伸びに対して体力系の伸びが悪い。
問題は「速」の伸びがイマイチなことだな。戦闘時に大きな瑕疵になりかねない。
何はともあれ、ウサギの残り半分を解体する。
皮をむいた腿だけをうるさく喚くジンジに与えて、部位を間引きながら俺も生肉をかじる。
味については・・・まあ、ある程度血が抜けた分前の餌よりは美味しいが、まだ蛇の方が美味しかったような気がする。
竜としての味覚のせいだろうか?