先人に習うことは多いようだ
戻った上空から見下ろすと、オリパとモニータが畑の横で何かしているのが見える。
オリパが使っているのは土魔法か?
土を盛り上げたり延ばしたりして、モニータは出てきた石を退けている。
〈畑を拡張してるのか?〉
着陸しながらモニータに訊いてみる。
「あ、ザンザ、ザンザに貰った種をまくの!」
「ちょっとあなた! あの石を退ける土魔法を教えなさい!」
何を上から目線なの、とか思ったが、やる気なのは良い事なので置いておこう。
〈モニータ、伝えて〉
「土魔法を意識しながら土の中を見るんだって。石の位置大きさが分かるはず?」
オリパは地面を凝視している。
「見えた、気がする」
「それでいい、石を上に土を下に」
「魔法で動かすんだって」
岩が地面から顔を出した途端、オリパがへたり込んだ。
鑑定で見てみると
オリペアーネ(17歳)
LV 17
人種 ヒューマン
状態 借金奴隷
HP 70
MP 117(0)
強 17
速 15
賢 88
魔 71
耐 40
運 18
スキル
――――
土魔法
女神ポイント 50
「オド(MP)が切れたんだな。ちょっと休んでいてくれ」
土魔法で前面の土から石の類を浮かび上がらせる。
でもって地面から顔を出した岩や石を収納する。
表面から深さ30㎝程の土も収納しちゃう。
次に土を束にして放出しながら凹んだ地面に並べていく。
50㎝幅の畝が10mで5本ほど並んだら収納の土が無くなった。
畑の脇に2m幅10mの凹んだ土地が出来てしまった。
前日オーク傭兵団に貰った種をまこうと思えば、まだ畑地が足りないが、この種全部春まきなのだろうか?
そうなら、畑地を広げて行っても良いが、全部種なので連作障害とかはないだろうから、収穫しながら畑を使い回す手もあるだろう。
とか思ったらオリパが復活したようだ。
「まったく、私たちが半日がかりで進まない仕事が、あなただと一瞬なのだから!」
俺は、収納からオークから貰って修復した鍬をオリパに手渡した。
「力は要るが、効率は劇的に上がるだろう」
秋からの畑仕事には恐らく俺はいない。
冬の収穫は無いのかも知れないが、もし畑仕事をするのなら鍬1本あれば少しは楽になるはずだ。
鍬を持たされたオリパはしげしげと見てからこう言った。
「どうやって使うの?」
したことないんかい! 野良仕事!
土を掘り起こして、寄せたり、均したり、草を削ったり、一通り実演して見せたが
整地後の土ならうまく耕せるかな。
しかし未整地の草原に鍬を入れるのははまだ無理そうなオリパだった。
結局撒いた種はダイズ、ニンジン、キャベツ、カブだった(小袋に札で書いてました)。
まだ時間があるので、新築予定地を見直す。
雨が降ったら、敷地に水が留まっちゃうよな。
もうちょっと周囲を広げて幅広く溝を作る形にするか。
例の30×30×60の石材を周囲の岩から切り出して、間取り予定通りに並べていく。
これ、台所の竈と煙突を真っ先に造らないといけないんじゃない?
てゆーか、竈の周囲は石壁じゃないと不味くね?
向こうの家はよく火事にならないな。
ああ、煙突は壁の外から上に出る構造になってるのか。
こちらもそれに倣うか。
煙突のトップに雨除けもついてないのは雨水が侵入しても屋内は土間だから気にしないからあれで良いのか。
つまり、竈は水がたまるような構造にしちゃいけないのだな。
先人に習うことは多いな。
結局、竈周辺はその後もこまごまとした理由で組み直すことになるのだった。