新婚には新築が良いようだ
外に出てみると、狼たちはまだ狩りには出ずに全員揃っていた。
今日は、このままマッタリするのか、食ってからのんびり出かけるのか。
まあ、肉のストックは豊富なので、どちらでも良いだろう。
焚火台を「掘っ建て」の近くに出して薪に着火すると、狼たちとゼナが距離を取って待っていた。
今朝の肉はレバーにするつもりだが、その前にゼナから魚を食べさせてやろう。
既に焼き上がっているカワムツをゼナの口に入れてやると、骨ごとかみ砕いて食べ干している。
狼、悪いが一頭一本ずつだ。
一巡するとレバーが焼き上がったので、またゼナから与えていく。
量的には均一に200g程度だ。
ゼナも文句はないようだ。
しかし腹の足しにはまだ程遠いので、追加で腸から焼いていく。
既に大腸は消費して小腸から第4胃(赤センマイです)を食べさせると全員満足したようだ。
明日は、筋肉部位を与えてみよう。
さて昨日の続きだ。
釘作りだ。
細い青銅の切れ端に火魔法を使って、溶け落ちた赤い球に鉄針の頭を押し付けて釘にする。
・・・これを1000回?
地味な作業なのは良い。
しかし消費MPが10!?
一日50個しか出来ない!?
これを20日間続けろってか?
これしか方法がないなら仕方ないが、効率化する努力はすべきだろう。
で、何を効率化する? 火魔法だろうな。
俺の使う火魔法は・・・
ファイアーポイント、着火に使う生活魔法。
ファイアーボール、相手に投げつけるハンドボール大の攻撃魔法。
ファイアーピラー、下方から相手を棒状に焼き上げる攻撃魔法。
ファイアーウォール、火の結界で物理は弾き、魔法は吸収する防御魔法。
釘の頭に使う青銅を溶かしたのはファイアーピラーだ。
意識を向けていると、そのままのMPで維持できるのだが、今回は即青銅の球に「針」の頭を押し付けなければならない。
細かい作業なので、どうしても意識が釘に逸れてファイアーピラーは消えてしまう。
なので、別の触媒に熱を維持させる。
石、は青銅の融点を超える温度では割れてしまった。
耐火煉瓦じゃないとダメか。
しかし、それを作るにはその煉瓦以上に熱に強い煉瓦での中で焼き上げるのだったか?
粘土の選定をしながら、トライアンドゴーの繰り返しになるな。
時間と手間の無駄・・・、無駄ではないし、興味はあるが今回は保留にしたい。
別の方法で、熱を維持・・・、温度を維持か。
出来るんじゃねえか、亜空間なら。
地面すれすれに亜空間を開けその上にファイアーピラーを発生させ、亜空間に収納・・・できた。
しかし、亜空間から取り出すと瞬時に消滅。
なので、亜空間面すれすれにピラーの先端を維持する。
そこに青銅の針金を密着させ、引き離すと亜空間入り口に液状青銅の赤い球が残る。
それを鉄の針ですくって、石の上で頭を平坦にして出来上がり。
消費MPは1だ。(最初のファイアーピラー使用のMPは除きます)
よし、量産だ! 家内工業だ。
結局、半分になる500個作って止めた。
やりながらMPも少しずつ回復したけど、どうせ全部作るには足りなくなるので今日はここまでだ。
「細かい鍛冶だったねえ?」
マロンだった。
ずっと見ていたようだ。
「こりゃあ、釘かい?」
「難有りだがな」
「でも、使えるんだろ?」
「品質が均一でない、それなのに抜こうとすると、これ(頭)が抜ける。打ち込んでしくじると、屈曲させて叩き込んでおくことになるだろう」
「ところで、何処に使うんだい?」
「国境のオークたちの教会だ」
「うーん、オークの教会かあ、でも建築しているのは誰なんだい?」
「軍の指導でオークが大工をしているようだ」(資材は俺の調達ですが)
「オークじゃあなあ・・・」
「なんだ、増築か改装を検討か?」
「新築だよ。小さくていいからもう一軒、建てちまえばオリパがすんなり嫁入りしてくれるかと思ってねえ」
「すでにがっちり嫁ぐ気のようだが?」
「ここにきてすぐだから、新鮮なんだろうさ。マンネリな日常が続くと南で越冬した時に逃げちまうかも知れないからねえ」
そのオリパは昨日と同じで、ゼナによるジニーと仔狼の授乳をモニータと一緒に見ながらホッコリしている。
それこそ、子でも作ってしまえば逃げたりはしなくなるのだろうが、先ずは子作りの環境が必要になるか。
「新築するか」
「何年かかるか分からないしねえ。でもまあ、取り掛からなくちゃあ事は進まないか」
「材は調達してやろう。建築の心得はあるのか?」
「エレトンはあると思うんだけど、道具がねえ」
「あの家はどうやって建てたのだ?」
「ありゃあ、ここの先代が、このあたりにあった廃村の材木を寄せ集めて建てたって話だ」
「先代がいたのか」
「入れ替わりで余所者のあたしらが使ってるけどね」
「ともかく、あれ(家)は老朽化してるから、引っ越しを兼ねてあれ以上の大きさが必要と」
ふむ、人手が足りないから、教会のようにā辺、b辺が原木ぎりぎりに届くような間取りには出来ないな。
横長の平屋にするか。
造り(工法)はログが良いだろう。
材は2分割で使って中央を支える構造にすれば、教会より強度のある建築物になるだろう。
先ずは基礎を置く土地選定と整地からだな。
「どこに建てたい?」
「今の家の下方は畑とトイレだから上の方になるんだけど」
俺はマロンを連れたって川の上流方面に向かって歩いた。
「見ての通り土地は岩だらけさ」
「かえって都合がいい、あの家から離れすぎない方がいいのだろう?」
「どうやって土地を平らに・・・また収納を使って岩や土を動かしてくれるのかい?」
「そうだ。エレトンとガトーが帰ったら、位置を決定しよう」
どうせ今はMPが残り少ないので、整地できないからなあ。