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美味しいと言うよりも細かい作業で沈黙するようだ

夕食はヤギの乳をもらってサイコロ切りにしたレバーを浸したのち、油脂を引いたフライパン(新品)で野草と一緒に炒めてもらった。

「これはニラか?」

「カンノソウだよ」

と、マロン。

ああ、ノカンゾウとかヤブカンゾウの近種か。

これがニラなら香りがきつくてオイスターソースとかが欲しいところだが、これは香りがマイルドで食感も柔らかいので塩コショウでうまく味が調和している。

「すげえ、マロンの作った料理がこんなに美味いなんて!」

「うっさいねえ! 今まで碌な調理器具が無かったせいだよ! 甲斐性無しのせいでね。ザンザに感謝しな!」

ジニー、お前は菜食主義か?

さっきからカンノソウだけ食べちゃって。

ほら、昼のレバーより美味しいだろ?

俺がフォークで差し出したレバーより、俺の皿から青葉を摘まむジニーに皆苦笑するのだった。


就寝前に祈っとくか。

〈今日から作り始めた釘がうまく使えますように〉

〈女神ポイント1030与えます〉

なんで1030?

ああ、釘の数だけか。


翌朝、早めに起きて竈に火を入れる。

火力が安定したら、石材を前に置いて、ワタ、血合い、鰓を抜いた川魚に塩をまぶして竹串に刺して石材で固定する。

魚から汁がたれてくるが、石材の上なので床は汚していない、OK。

ロッセンマルタは大きすぎるので使わない。

アマゴはダイモンマスの陸封型だった。

カワムツはカワムツ、前世と同じだが大分大きい、20㎝近い、背が黒く腹が黄色い。

ヨシノボリのようなカワハゼは、ドロンゴというらしい? ドンコだけど、大きさはバラバラで10㎝から25㎝、頭のデカいハゼ。

20分程度時間をかけて焼きあげていく。

表面が乾いて、塩を吹いて、割った腹の中の肉の透明感が無くなったら食べごろか。

実食!

うん、皮が美味い!

川魚は鱗を取る必要がないという意味が分かった。

塩が鱗にしみこんで身と一緒だと良い味になってる。

意外とドロンゴが一番イケてる。

カワムツは収納だな。

単体だと悪くは無いのだが、アマゴとドロンゴがあると味気なく感じてしまう。

幸いドロンゴが有り余っている。

焼き上がった魚から櫛を抜いて皿に積み上げていく。

「また、贅沢に塩を使った焼き魚だねえ」

マロンが起きてきて皿に積み上げられた魚を見て感歎する。

「どれ、スープでも作ろうか」

「これ使うか?」

俺はタビトナカイの肉付き肋骨を1本取り出し、12個ほどに細断する。

「こりゃまた贅沢な出汁が出来るねえ」

マロンは鍋の中で骨付き肉を軽く炒めて、水を張ってカブを細切れ(葉ごと)にして煮込む。

ちゃんと灰汁とってるし。

「寝坊しました。すみません!」

オリパが起きてきて、恐縮している。

「ああ、スープと匙、それから小皿をを配っとくれ」

その頃には起きてきた皆がテーブルにつきながら、各々でフォークやナイフを用意していく。

俺はジニーをテーブルの上に座らせて、モニータに食事前の祈りをするよう促す。

〈簡単に、『ナビーネに糧の感謝をします』でいいから〉

「手を合わせて」

「うん、ナビーネに糧の感謝をします」

モニータが皆が手を合わせる前に音頭をとっちゃったが、バラバラに慌てて手を会わて祈る一同が微笑ましい。

〈一同に女神ポイント30を付与します〉

「みんなに女神ポイントが30だって」

「そうか、それはありがたい?」

「なんで、疑問形なのさ?」

とか言ってる脇で俺は取り皿にドロンゴの塩焼を乗せ、左手にナイフで魚を押さえ、右手に竹串の先が尖っていない箸で皮と身を摘まんで、ジニーの口元に持っていく。

〈飲み込むんじゃないぞ~ 良く噛んで食べるんだ。骨があったら吐き出していいからな。口の中がチクチクしたら吐き出して良いんだぞ〉

俺は同じように皮つきの身を食べて咀嚼して見せる。

無事一口を食べ終わったジニーがドロンゴを中央の盛り皿から一本掴んで丸かじりしようとする。

「ジニー! 頭は固いから全部かじっちゃダメだって!」

「ほら、こっちだジニー」

ドロンゴを手に持ったまま、俺の箸から食いつくジニー。

〈モニータ、ナイフとフォークを無理に使わなくていいぞ、頭と尻尾を指で摘まんでかじり取っていけば良い〉

モニータはアマゴ(ダイモンマス陸封型)を手に取ってかじり始める。

「おいふぃー魚だね!」

「ドロンゴ、おいしいぞ」

実は俺とジニー以外はアマゴしか食べていなかったりする。

モニータがドロンゴを掴んでかじりだす。

「ホント! うっま!」

おい、アマゴ半分残ってるぞ!

とか思ってたら、ゼナがいつの間にか顔を出してモニータの皿から半身のアマゴをぺろりと平らげた。

「ゼナ」

〈テーブルの上の物は食べたらダメだ〉

ジニーが手に持ったドロンゴをゼナに差し出す。

いや、突き出している。

素早く、口で受け取って数回の咀嚼後飲み込むゼナ。

ジニー、そんな親孝行はここで発揮しなくていいから。

「ゼナ」

〈お前の分は後で焼いてやるから〉

「くっふー」

不満はないようだな。

味見をしたかっただけなのか、いつもの定位置に寝っ転がるゼナ。

それはともかくお前ら、カニじゃねえんだから黙りこくって食うなよ。

・・・小骨除くのに集中してるのね。


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