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着地に良い場所があるようだ。

 一安心も束の間、次は着地しなければならない。

 俺達は湖(仮)と森の境界線を目指す。山岳地帯から一〇㎞二〇㎞移動しただろうか、結構右に左にぶれながら飛んだから、もっと短いかも知れないが、湖に辿り着いた。

 俺は湖の両サイドの山が低くなっている方に向かって更に飛ぶ。水の出口の方が平地が多いのではないかという期待からだ。まあ、見当違いかもしれないが、迷っていることもできない状況なのだ。

 とにかく、羽ばたいたり滑空したりを繰り返しながら開けた場所を見つけることが出来た。

 地表の様子を窺うために、俺は兄弟を手放して、一人で飛んでみる。単独になった兄弟の横に並んでみると、ふらついているが、何とか滑空をこなしている。

 地表は平坦で草も生えており、失速墜落しても大丈夫そうだ。俺は兄弟の前に出て、地面すれすれで体を上方修正して翼に制動をかける。

尻尾が地面に擦れるのを確認して、着地成功。尻尾役に立つじゃねえか。

 しかし、兄弟はおっかなびっくり前を飛んでいる。 俺がいないので鳴き喚きながら自力で羽ばたきながら飛んでいる。

俺はもう一度飛び立つために、地面を四つ足で走りながら翼を羽ばたいた。軽い滑走で難なく浮力を得ることが出来て、再離陸だ。副翼三対の羽ばたく力を得て、速やかに兄弟に近づく、っていうか、兄弟は自力で旋回できるようになっていた。

 俺はもう一度兄弟の前で、今度は着地ではなく制動からホバリングに近い滞空状態をしてみせる。

これが出来れば着地は簡単だ。

 しかし、兄弟は、まだ旋回するのがやっとで、着地した俺の上を喚きながら飛んでいる。

 俺は再び、いや、今度は二本足で走ってジャンプの後、離陸してみる。これも、スムーズに飛ぶことが出来た。

 俺は兄弟の尻尾を掴んで、前面からの風を受けるように翼を広げる。兄弟の尻尾を引きずり下ろすように強制着陸だ。兄弟はイヤイヤするように、バタバタ羽ばたくが、俺が持っている尻尾を地面に擦りつけるように着地したので、否応もなく着地することになった。兄弟は前に倒れるように着地したが、広げた翼が衝撃を和らげたはずだ。

 〈大丈夫か? 兄弟?〉

 「ぎあ~」

 念話に声で返す兄弟。

 まあ、手ごたえから大丈夫だとは思ったが、痛い目にはあったかも知れないが、見た感じ無傷なようだ。これでやっと休めるな。

 俺は周囲を見て、周囲の音を聞く。 鳥のさえずりと、風が草原を吹き抜ける音がするくらいだ。

 草原があって、湖があって、森がやや遠くに見える。まあ、補水を優先するべきだろうということで、俺は兄弟に手招きしながら湖に向かった。

 湖は、やはり俺たちが飛んできた方向が上流のようで、向かった方が湿地帯になっていた。その先は川になるのだろうか?

 植生からなんとなく湖だと思っているのだが、海水かも知れない。

 俺は水面を注意深く観察する。鰐や水蛇のような捕食者が待ち構えていないか確認だ。

 水中に向かって空間切断してみる。水面が不自然に揺れただけで、生き物は潜んでいないようだ。

 俺は水面に顔をつけて水を飲んでみる。塩気はない、淡水で良かった。喉越し半分、首の半分ぐらいしか水を吸い込むことが出来ない。頭を上に向けて自然に水が腹に落ちるようにする。思い起こせば、初めて感じる潤いである。竜人の巣じゃあ、水さえ与えられなかったもんなあ。

 兄弟も恐る恐る水を飲み始め、すぐに夢中になってがぶ飲みする。

兄弟が水飲みを止めて静かになった水面を俺は覗いてみた。初めて見る自分の顔、なんか三つ目って言うより、左右の目が真横を向いているので一つ目に見える。中目? の上には三日月形の頭がある。一見、角に見えなくもないが、左右に突き出した両端は耳と同化していて、これが俺の頭なんだろう。口は鳥っていうかトリケラトプスを小さくしたような燕のような、でも、牙がしっかり並んだ顎だ。鼻孔はそのクチバシのような口の元の方というか中目の近くに一対。

 兄弟とはずいぶん違う顔だなあ、とか思いながら俺は兄弟の横顔をながめた。眺めても腹は膨れねえなぁ、次は狩だよなあ。

 飯の確保だ。


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