交差点には御用心
『第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』投稿作品です。
指定キーワードは『交差点』。
勢いが全てです。
じっくり味わおうとせず、喉越しをお楽しみください。
「遅刻遅刻〜! もーお母さんったら〜! もうちょっと早く起こしてよ〜!」
私は急いで学校に向かう。
ここで遅刻したら、同じクラスの半田サム君(ハーフで超イケメン!)に笑われちゃう!
急がなきゃ!
「わ!」
「え!」
交差点で突然横から男の子が飛び出してきた!
私と同じ高校生かしら?
見慣れない制服……。
あ、ちょっとイケメン……。
「うわあああぁぁぁ……!」
あ! 勢いのまま吹っ飛ばしちゃった!
「ごめんなさい! 急いでるの!」
空の彼方でキランと輝いた男の子に走りながら謝ると、私は更に加速する。
「おらおらどけどけ〜! 異世界転生させられてぇか〜!」
きゃ!
交差点から視界を塞ぐように出てきた暴走トラック!
その先には気弱そうな男の人!
このままじゃあの人異世界転生しちゃう!
でももう間に合わない!
「ぎゃあああぁぁぁ……!」
止まれなかった私に吹っ飛ばされて、暴走トラックは空の彼方で星になった。
「ごめんなさい! 急いでるの!」
このままじゃ間に合わない!
更にギアを上げて……!
『地球征服の足がかりに、まずこの街を征服だ!』
『さすが王様! 私達にできない事をやってのける! そこにしびれるあこがれるゥ!』
「どいてどいてー!」
『ぐわあああぁぁぁ……!』
『ぎえええぇぇぇ……!』
「ごめんなさい! 急いでるの!」
宇宙人みたいな二人をお星様に変えながら、私は進む。
『げへへ。ここが人間界か。俺様の魔界の業火でこの一帯を焼け野原にし』
「どいてどいてー!」
『おわあああぁぁぁ……!』
「ごめんなさい! 急いでるの!」
『ここが異世界か。勇者を倒した今、魔王たる我が望むは異世界の覇け」
「どいてどいてー!」
『ほげえええぇぇぇ……!』
「ごめんなさい! 急いでるの!」
『我は神なり。この世界の愚かな人類を殲滅し』
「どいてどいてー!」
『あぁぁぁれぇぇぇ……!』
「ごめんなさい! 急いでるの!」
良かった! 何とか間に合いそう……。
ってあれ!? 学校がない!?
「先生! 学校は!?」
校門で呆然としている先生に問いただす。
「……トラックが飛んできて、学校にぶつかったと思ったら消えて……」
うそ! 私がさっき吹っ飛ばしちゃった暴走トラックが、学校を異世界転移させちゃったの!?
そんな、半田君……!
「あれ? 学校は?」
半田君! 無事だったのね!
「学校なくなっちゃったの! だから一緒に遊びに行かない?」
「えっ? どういう事?」
「いいからいいから!」
戸惑う半田君の腕を掴んで、私は駅前に向かって歩き出した。
読了ありがとうございます。
当初は別れようとしている恋人同士を交差点になぞらえて、シリアスな恋愛ドラマを書こうとしてたんですけどどうしてこうなった。
勢いって怖い。
次回キーワードは『カセットテープ』。
よろしくお願いいたします。