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魔女の弟子 モリス視点

 俺の名はモリス。平民から王宮魔法使いにまで這い上がってきた男だ。


 ずっと幼い頃から容姿が醜いと馬鹿にされ続けてきたが、俺に魔法があることが分かり、見返してやろうと必死に努力した結果、王宮魔法使いになった。


 俺くらい優秀な奴は他にはいないはずだ。王宮魔法使いになることは当然の結果だ。だが、王宮魔法使いになってからは皆、揃って平民上がりだと俺を馬鹿にしてくる。


 くそっ、優秀な俺を馬鹿にしやがって。


 爵位や役職がでも有れば箔が付いて誰も俺の事を馬鹿にする事はないのに。


 ああ、忌々しい。



 ある日、同僚の一人から魔女エキドナの話を聞いた。先日、隣国の目覚めぬ王女を魔女エキドナが起こしたらしい。


 その話を聞いて俺は良い事を思い付いた。あの有名な魔女の弟子になればそれこそ立派な箔が付くのではないか、と。


 意気揚々と俺は魔女の森へやってきた。魔獣が出るという噂だったが、魔獣一匹遭わずに家へと辿り着いたらしい。



 ははっ、やっぱり俺には運命の女神が付いているなぁ。上機嫌のまま俺は扉をノックする。


 ……これは予想外だった。


 返事と共に扉が開いて中から出てきたのは絶世の美女じゃないか。魔女というからてっきり腰の曲がった醜悪な顔をした老婆だろうと思っていた。


 女は目を布で覆ってはいるが、透き通るような白い肌、口付けしたくなるような淡い唇。

 華奢な体つき。


 こんな美女を師匠に出来るとは俺も鼻が高い。しかし、魔女エキドナが後ろを向き、部屋に入る時に見てしまった。


 あるはずの足が、無い、蛇だ。こいつは化け物なのか?


 まあいい。弟子になってしまえばこちらのものだ。


 俺は魔女に弟子にしてもらうように願った。だが、化け物は俺のことを鼻で笑っている。弟子を取らないだと?


 くそっ。


 このままじゃ俺は馬鹿にされたままだ。なんとか弟子にしてほしいと魔女に縋り付くようにして願った。


「仕方がないわねぇ。弟子になれるか診てあげるわ。私の弟子になるにはある程度の魔力が必要なの」


 そう言って魔女は俺にチャンスをくれたのだ。種を額に? 早速付けてみたが、特に問題が無いようだ。


 魔力が足りない場合は種が魔力を補ってくれると言っていたな。それだけでも凄い代物だ。


 カインと言う不愛想な男に送られて森の外へやってきたが、あの男は魔女の男か? 弟子ではない様子だった。


 あの魔女は化け物だったが、美しくもあった。弟子になり、魔法を覚えた暁にはあの魔女を奴隷として飼ってやってもいいな。


 俺はそんな考えをしつつ、自宅へ戻る。




 翌日からの仕事は怠かったが、いつもより魔法の精度や威力が上がったような気がする。

 種の力なのか。同僚や上司たちは俺の凄さに舌を巻いているのか一線を置き始めた。


 俺と同じ平民出身の同僚は俺を心配してくれているようだ。



 種を付けて四日目。上司から俺は呼び出された。


「目が赤いぞ? 大丈夫か。頬も痩けているし、無理をするな暫く休め」


 と言ってきた。可笑しな事を言うもんだ。


 俺は今までになく体調は良い。魔力も種を付ける前とは比較にならないほど強くなっている。


 上司には大丈夫だと言ったのだが聞いてもらえず上司からの命令で休暇を無理矢理取らされた。


「休めだと!? 俺に取って代わられるのがそんなに不満なのか?」

「そうではない、分からないのか? とにかくお前は少し休め」

「……クソッ」


 文句を言っても仕方がない、仕事を休んでいる間に森へ行き、魔力量の確認とともに魔獣を倒してやろう。


 騎士たちが巡回し魔獣を倒す予定のルートを一人、先回りし、俺一人で倒したとなれば名声はこの上なく高まるだろう。


 そんな考えを持ちながら俺は近場の魔獣が出没する森へ赴き、狩りを始めた。


 身の丈三メートルはあるようなオークやポイズンスネーク。魔獣たちは不思議と俺に惹かれるように向かってきた。


 魔法を唱えるとあっさりと魔獣たちは燃え、首が落ち、粉砕した。


 ふははははっ。

 強い! 

 強いぞ! 

 俺は強い! 


 魔獣が綿のような柔らかさだ。疲れも無い。なんて素晴らしいんだ。こんなに俺は強い。あの魔女も俺にひれ伏すだろう。


 ああ、もしかして俺の女になりたいって言ってくるかもしれないな。


 ククッ、魔女ガ俺のモノにナる、タノシミダ。


 七日目の朝、倒した魔獣たちを全て魔法で浮かせてギルドの買い取り場へ持っていくと、受付の男達は引き攣った顔をしている。


 あぁ、身体を洗うのを忘れていたから全身血塗れだったな。


 少し、匂うな。


 魔獣の血は取れにくいから仕方がないか。


 どれ、約束の一週間が経った。魔女の森へ向かうか。


 魔法で魔獣の返り血を洗い流した後、俺は魔女の森に入っていった。


 今回もまた魔獣に遭うこともなく魔女の家へと辿り着いた。ククッ、魔獣たちは俺の強さに恐怖しているんだろう。


 またあの男が扉を開けた。

 あぁ、忌々しい。

 魔女は俺だけの物だ。


「あらあら。一週間前の彼? 随分と変わったのね。素敵よ。でも残念だけど、弟子にするにはまだ魔力が足りなかったみたいね。ごめんなさいね。不合格よ」


 俺が手を伸ばそうとした時に扉はバタンと閉まった。そんな馬鹿な!


 俺は強くなった。

 何故認めない? 


 ぐぐぁぁ。身体が熱い。俺は焼けつくような痛みに大声をあげる。


 ふと周りを見ると先程とは違う景色だ。

 魔女の家は無くなり、どこを見回しても森の中だ。


 魔女、魔女は何処へ行った?


 俺は魔女を探し、森を彷徨い歩いていると、一匹の魔物がこちらへやって来た。



「アタラシイ、ナカマ。ヨロシク」

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