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盗賊の頭 ザイル視点

「頭、良い情報が手に入りましたぜ!」


 俺の名はザイル。盗賊の頭として長年山に住んでいる。たまに旅人からちぃとばかり物を頂いているが、俺達盗賊団の生活を維持するには必要なので問題ない。


 今回はどこかの貴族が山道で俺たちと遭遇した。奴等は運が悪かったと思うしかねえな。残念ながら女は乗っていなかった。


 男はいらねぇ。子分達はいつものように殺そうとした時、情報と引き換えに助けてくれと言ってきた。


 どうやらこの山の奥にある封印の解き方らしい。確かに以前からこの山の奥の岩陰にある封印は俺達も知っているが、どうやっても俺達には封印を開けることは出来なかった。やはりそこには財宝が眠っているらしい。


 その昔、ある人間が魔女と仲良くなり、五百年後に封印を解く約束をしていたらしい。その封印を解く代わりに財宝を手にすると。


 眉唾物の話だが、貴族は真剣に話すので俺は興味を持った。俺は貴族が言っていた男を子分達に探させた。案外その男はすぐに見つかった。


 俺はその情報を元に、鍵となる人物の行動を監視していたが、品行方正、正義の塊で俺とは真逆の存在のような奴だった。


 例え俺達がその男を誘拐し、命令してもコイツを従わせるのは難しいだろう。どうしたものかと考えていると、部下の一人が魔女なら従わせる方法があるのではないかと言ってきた。確かにそうだな。


 貴族は魔女が封印したと言っていたが、魔女が封印したのなら封印自体を解くのも簡単ではないのか?


 だが、いくらなんでも五百年間も生き続ける魔女などいないだろう。


 ここはやはり男に開けさせるのが一番だ。俺はそう思い、魔女の元へ向かった。



 魔女を必要とする時には森が開かれると噂だったが、本当だったようだ。

 

 小屋をノックすると一人の女が出てきた。良い女だ。俺の物にしたいねぇ。だが、部屋へ入る時に気づいた。


 コイツ、足が蛇だ。

 人間じゃないのか!


 流石の俺でも人間の姿をした魔物にはビビった。そして部屋に入ると、テーブルと椅子が置かれていて、壁には所狭しと薬らしき物が置かれていた。


 部屋の様子からみてこの魔物はやはり魔女なのだろう。


 そして驚くことに外からは小さな小屋だったが、小屋に入るとかなり広い。部屋数も複数ありそうだ。


 魔法を使っているのか? 


 人間には絶対出来ないだろう。魔女は俺に幻覚を使い殺すのか? そう思っていたが、魔女は俺の考えを気にする事なく用件を聞いてきた。


 人を操るような物か薬があれば欲しいと。封印の話もした。本来なら話すべきでは無い。財宝を減らす事になるからな。けど、魔女は対価で動くと聞く。


 財宝があれば協力を惜しまないだろう。魔女は俺の目の前で一匹の蜘蛛を取り出した。


 コイツ一匹で人を操るだと?

 俺は騙されたのか?


 そう思っていたが、俺の意思とは関係無く、手が勝手に動きだした。

 疑っていたが、実際に操られて実感した。これなら財宝が手に入るぞ。

 俺は報酬の話をすると、財宝を手に入れてからと魔女は言った。


 クククッ。

 隠された財宝はもう目の前だ。

 笑いが止まらない。


 封印を解く男は代々王宮の魔法使いを輩出している家系のようで押さえつけて捕まえようにも魔法を使えるのは難しいだろう。


 やはり封印を解くには魔女から貰った蜘蛛を使うしかない。


 しばらく男を監視していると、どうやら男は領地へ帰るようだ。俺達はこの機会を待っていた。


 俺達は郊外で待ち伏せし、男の乗る馬車を襲った。やはり男は魔法で抵抗してきたが、蜘蛛に『あの男の動きを止めろ』と命令すると、蜘蛛は糸を伸ばし、スルリと男の肩に乗った。男はピタリと動かなくなった。


「こいつぁ凄いな! 封印を解いた後、こいつを使って一儲けしてやるか」


 俺は魔女から貰った蜘蛛に大いに感謝した。




 俺達は早速、財宝が眠る封印の地へとやってきた。


「おい、やれ!」


 俺は嫌がる男に命令すると、男の身体は勝手に動くようで魔法円を構築し始めた。俺や子分達はその様子を後ろでみているだけだが、もう少しで財宝が手に入ると思うと上機嫌になる。


 そしてパリンと封印が壊れるような音がした。


「おい、行くぞ!」


 封印が解かれた洞窟は人一人が通れるほどの狭さしかないようだった。

 何があるか分からない。


「おい、お前、お前が先頭だ」

「……」


 抵抗しようにも蜘蛛が操っているせいか男は素直に歩き始めた。洞窟内は暗いと思いきや、薄ぼんやりと光があり、灯りがなくても歩いていけるほどだ。


 不思議な空間だな。


 そして広い場所に出てきたと思ったら

 ……そこには竜が眠っていた。


 ちくしょう! これはまずい。

 隠し財産を守るための封印ではなく、竜の封印だったのか。

 逃げるしかねぇ。


 子分達は音を立てて俺達の後ろからゾロゾロと入ってきた。引き返すのに時間が掛かる。


 煩くすれば竜は目覚め、俺たちは一気に消されるだろう。竜の巣だったとはな。


『ここは竜の巣だ。お前達、静かに撤退だ』

 俺は消え入りそうな声で子分達に指示を出し、急いで引き返そうとしたが一足遅かったようだ。


「我の眠りを覚ます者は誰だ」


 竜が俺たちに問いかけてきたが、もちろん俺たちはその答えを知らない。


 操っていた男もその答えを知らないようだ。ガチガチと歯を鳴らし、震えている。


「目障りな人間共め、消えろ」


 竜はそう一言発した。


 ……ああ、俺たちは失敗した。

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