公爵令嬢の復讐 ラッカ視点
私はランサール国に到着し、謁見室で夫となるサムル殿下と会う予定となっている。
謁見室には既にランサール国の陛下と王妃様がおり、挨拶を済ませた。
「先程、サン国の宰相からの知らせを受けた。冤罪であったとはな。妃教育も済んでいると聞いておる。将来の王妃第一候補として我が国で迎えよう」
「ラッカと言いましたわね。こんなに美しいご令嬢を手放すなんてサン国はどうなっているのでしょうね? 返してくれと言われても絶対返さないわ! これから義娘として宜しくね」
陛下にも王妃様にも受け入れられたようでホッとする。
「有り難き幸せに存じます」
私がそう答えていると扉が勢いよく開かれた。
「父上! 俺は罪人など娶りはしない! 追い返してく、れ……?」
私は振り返ると声の主と目が合った。
「こらっ、サムル! ラッカ嬢は罪人ではない。冤罪をかけられたのだ。サン国からも書状がきておる。こんなに美しく、妃教育を終えた令嬢は何処にもおらんのだぞ? 帰国させても良いんじゃな?」
私はサムル殿下に礼をすると殿下は微動だにしない。横にいた従者に促され手を挙げた。
「サムル殿下、お初にお目に掛かります。私、ラッカ・フォン・レイニードと申します。第二十五側室として婚姻後は後宮で誰にも会わず、ひっそりと暮らしていく予定だと聞きましたが、帰国してもよろしいでしょうか」
サムル殿下は顔を真っ赤にして震えているわ。嫌われたのかしら。そう思ったのも束の間。
サムル様はびっくりするほどの速さで私の側まで歩み寄るとガッと私の手を取った。
私はびっくりして震えていると、
「……美しき姫。まるで女神が降臨したかのようだ。帰国は許さぬ。一目惚れだ。私の唯一の妃となって欲しい」
「……お褒めいただき有難う御座います。嬉しいですわ」
「父上! 盛大に式を挙げたい。我が寵姫としてラッカの美しさを国民に知らしめたい」
陛下は、サムル殿下の姿に笑いながら了承した。
一ヶ月ほど過ぎた頃、サン国の陛下から私の婚姻の取り消しやラッカの帰国を望むと使者が来ていたけれど、ランサール国の陛下もサムル殿下も拒否したの。
そして本来なら二十五番目の側室として婚姻届のみのはずだけれど、私は盛大な結婚式を挙げてもらい、国民へのお披露目もあったわ。
父と母はランサール国で大事にされていると知り、良かったと泣いていたわ。
「美しさもさることながら、豊富な知識でサムル様を支えている。サムル様はラッカ様ばかりで私達には目もくれない。悔しいけれど、ラッカ様には敵わないわ」
「そうよね。ラッカ様が来た日からサムル様は一度も後宮への渡りがないもの。ここは外部と接触も制限されているし、つまらないわ。さっさと出たほうがよさそうね」
「希望する者は王宮の方で相手を探してくれた上で下賜される時に少し余裕を持たせてくれるらしいわ」
「それは助かるわね。我が家の財政は厳しくて家に戻ってもここより暮らしは酷くなるんだもの」
「若くて貰い手があるうちに下賜された方がいいわよね」
そうして二十四人いた側室達は私が寵姫となった事で争いを辞め、下賜される形で後宮を去っていった。
ラッカ王妃は三男二女と子供を産んでもサムル殿下の寵愛は冷めず、生涯幸せな王妃として後々語られる事になる。
サン国の王子? 彼は王太子になる事なく辺境の地に送られたわ。瑕疵の無い令嬢を罪人に仕立て国外に追放した罪で。
ファナはサン国で処刑となるはずだったけれど、サムル殿下の意向でランサール国へと連れて来られ、拷問後、市中引き回し、公開処刑となった。
魔女様、有難う。
基本的に魔女は気まぐれです。が、見合った対価と自分の身の丈に合った欲の大きさで依頼者はハッピーエンドにもなるのかなと考えてはいます(´∀`)
魔女は珍しい物があればいつもより魔力を奮発してくれるはず!?
クレクレ君は苦手なようです(´-`)