地底の穴2
私たちはロード国の王都へと転移した。
王宮前の街は魔物達によって破壊し尽くされ、瘴気が蔓延している。やはり地底の魔物はうじゃうじゃとひしめき合って互いに食べ合いをしている。
私達を見つけた途端、魔物達は唸り声を上げ、襲い掛かってきた。カインは魔剣で斬りかかり、私は空中へ飛び、地上に向けて魔法攻撃をする。
やはり地底の魔物は強いわね。
小さな魔物から十メートルを超える程の大きな魔物まで多種多様な魔物が溢れかえっている。人間はまず倒せないわね。
カインを見ると、お父様と修行していたおかげで難なくは倒しているように見えるわ。やはりお父様との修行はほぼ物理攻撃だったようでカインも剣に魔力をのせた物理攻撃に近い。
……お祖母様に叱られることは間違いなさそう。
そう思いながらも空中を移動しながら王都中の魔物を掃除していく。他の魔物の餌にしない為にある程度死体の山が出来たら燃やしていく。
カインは上手くやっているかしら。
少しカインから離れた場所まで飛び、範囲魔法を撃つ。一気に殲滅できるからこれが一番楽チンだわ。そう思っていると、身にまとう結界を破り、後ろから何かが肩を貫いていった。
振り向くと氷柱を纏った魔物が氷を投げている。
「私の治療費は高いわよ?」
私はすぐにポーションを飲んで回復する。
『集え炎よ、焼き尽くせ』唱詠と同時に地上に炎柱がいくつも立ち上り、竜巻のような炎の柱が魔物を巻き込み移動していく。その魔法を王都の南、東、西側で幾度か繰り返し魔物を倒していった。
丸一日は経っただろうか。
辺りは焼け野原と化している。私は王宮前に移動すると、カインは所々怪我をしながらも戦闘を続けていたわ。
「カイン、大丈夫かしら? 少し休憩しましょう」
私とカインの周りに結界を二重に張る。
「カイン、大分、怪我をしているわね。ポーションを飲みなさい」
「これくらい平気です」
「駄目よ。強い魔物はまだまだいるもの」
私はカインにポーションと魔力ポーションをいくつか渡す。カインは素直に受け取り、一気に飲み干した。
流石に私でも丸一日の戦闘は疲れる。
「エイシャ様、その肩口、怪我をされたのですか?」
「まぁ、少しね。もう傷は塞がったし大丈夫よ?」
カインはそっと貫かれて空いたローブに触れてキスを落とす。
「エイシャ様に傷をつけるものは何人たりとも許せない」
そっと抱きしめてくるカイン。
「ふふっ。そんなに怒らなくても大丈夫よ。もう、傷も塞がったのだし。もうすぐお祖母様が来るわ。王都より王宮の中は魔物が強いから気を引き締めていかないとね」
こうしてゆっくりと会話をしているが、結界の周りには徐々に魔物が取り囲み結界を破ろうとしている。
「さて、そろそろ休憩も終わりよ」
カインは私の髪にそっと口付けしてから魔剣を取り出し戦闘態勢に入る。合図と共にカインは前方、私は後方の敵を倒していく。
そうして少しずつ王宮の入口へと進んでいくと、お祖母様が一人キャッキャと遊んでいる様子が見えた。
お祖母様は私達を見つけると駆け寄ってくる。
「エイシャ! 久しぶりっ! やはり宴は楽しいわねっ! ネメアーは来ていないの?」
お祖母様の何倍もある牛の顔をした魔物をちょん切りながら言うお祖母様はなんだか怖いわ。
「お父様は今、執務室で書類を捌いているわ。来たがっていたし、もうすぐ来ると思います」
「ではネメアーが来るまでに終わらせちゃおっ! そこの彼、少しは成長したみたいねっ。でも、脳筋筋肉馬鹿の弟子になると魔法が不得手になっちゃうわ。エイシャ、後で私の所に寄こしなさいっ」
「……はい。お祖母様。カインで実験はしないで下さいね」
「多分、大丈夫かなっ」
私達は所々壊れて外が見えている廊下を歩いていると、前方と右方向から地底の魔物が何十体と襲い掛かってきた。
「エイシャ、前は私が倒しちゃうからっ!エイシャは右ねっ! カインは私の盾ねっ!」
「はい」
そう言いつつもお祖母様は敵を魔法で弱らせてからカインに攻撃させている。カインがギリギリ倒せるくらいの強さにしているところはさすがよね。
私達はカインを補助しながら王宮内の謁見室があった場所へと歩いていく。カインは先程まで戦っていた魔物達とは違う強さに苦戦しているのが分かる。
自分より何倍も大きな魔物や小さくても強力な魔力を持った魔物、実戦で修行するのは良いわね。半日程戦ったかしら。カインに疲れが見えてきた。
「カイン、そろそろ休憩よ」
私は三重結界を作り、休憩する。お祖母様は嬉々として戦っているわ。やはり私と違ってお祖母様は全てにおいて桁違いね。
「カイン、次の修行場はお祖母様の所で魔法の修行よ。お祖母様もカインと遊びたいそうよ」
カインはポーションを飲みながら眉間に皺を寄せながら言う。
「俺はもう少しエイシャ様と一緒に居たいです」
「ふふっ、嬉しい事を言ってくれるのね。まぁ、お祖母様の修行が完了する頃にはカインは立派な魔王よ?」
私とカインが話をしている間に王宮の入り口付近から爆音が聞こえてきた。
振り返ると、そこには父がいた。
案外早かったのね。