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ニンフの森からの依頼 ケットシー視点

 私達が住むニンフの森では妖精と呼ばれる類の者が数多く住んでいる。もちろん妖精以外にも森には聖獣や大人しい魔獣も共存している。いつもなら気にも留めないのだが、ムーマが増えてきている気がする。


 増えすぎたムーマはある程度間引かねばならない。私は戦闘向きでは無いため、森に住んでいる別の者に処理を頼んだがどうだろう、ムーマは増える一方だ。


 他の妖精達も異変に気付き始め、一斉に攻撃をしているが致命傷を与える事が出来ず増殖する一方だ。


 私は精霊王にどうすべきか伺いを立てに行った。


「精霊王様、この森のムーマが異常繁殖しております。如何なさいますか」

「話は他の者からも聞いておる。この森に住んでいる者からの攻撃には何らかの耐性があるのだろう。


 すまぬが、魔女の所へ行っておくれ。今すぐに捕まる魔女はエイシャだけだ。あの者なら確実に依頼として受けるだろう。頼んだぞ」


 魔女は元来自由人であり、定住せずに放浪していたり、気まぐれで依頼を引き受けたり拒否したりするのだ。


 今はエイシャ様だけが魔女の森に定住し、対価を取るが確実に依頼をこなす。人間にとっても我々にとってもエイシャ様は頼りになる存在だ。


 私は精霊王様の指示でエイシャ様の元に向かった。


 ムーマ退治の対価はガロンか。

 仕方がないな。


 ガロンはその昔ニンフの森を追放された妖精だ。妖精は人間と契約するしかこの森を離れる事は出来ない。つまり、追放されて生き残る事は出来ないのだ。


 けれど、ガロンは何百年も生きている。


 それは驚くほどのことなのだ。そろそろ精霊王様に許されても良い頃だろう。森の仲間が受け入れるかは未知数だが。


 エイシャ様は魔人になったばかりの者を寄越す対価として丁度いいと踏んだのだろう。


 やはり、エイシャ様が踏んだ通り精霊王様の赦しが降りた。他の妖精達からは響めきが起きたが反対する者はいなかった。


 こうしてガロンと見習い魔人は森にやってきた。


 妖精達は森のあちこちに隠れて姿を見せる気はないようだが、興味深そうに二人の行動を見ている。ガロンも他の妖精たちの視線を感じているようだ。


 今はまだガロンも森にいづらいだろうが、そのうちまた昔のように戻る事が出来るだろう。


 私は見習い魔人の様子を近くで見ていると、今まで魔法を使ってこなかったのだろうと思えるほど簡単な魔法しか使っていないようだ。


 剣では容易く倒していたが、魔法の練習を兼ねているのかムーマを倒す事に苦戦し、時間がかかっている。これでは全て倒すのに何年掛かるのだろうか。


 見習い魔人の効率の悪い魔法で倒している様を見物していると、エキドナ様が突如として森に現れた。


 ……なんと珍しい。


 隠れて見ていた妖精たちはエキドナ様の姿を見て一斉に遠くへと避難する。


 魔獣達の始祖と言っていいエキドナ様は各地を気ままに放浪していて魔女以上に自分本位で動く。


 そんなエキドナ様がムーマの調査を行うのか。


 ムーマはやはり今までのムーマとは違うのかも知れない。そしてあの見習い魔人に死者の谷への修行を告げている。 


 あいつ、死んだな。


 エキドナ様の魔法を見様見真似で行いながらムーマを倒していく。コツを掴んだようで三日程でムーマ退治は終わった。

 面白い。あの見習い魔人、覚えはいいらしいな。



 後日、エキドナ様から精霊王にムーマの事について報告があった。ムーマの異常繁殖、分裂にはある木の実が関わっているらしい。


 そして森に住む者の攻撃に耐性があるのではなく、聖属性に対する耐性を上限まで上げていたらしい。それは人為的な物が加わっているとの事。


『ムーマを改良した犯人を追うわ』とエキドナ様は嬉々として消えていったそうだ。


 なんとかこの森に平和が訪れたようで良かったと思う。

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