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怨嗟の石2

 ― 三日後 ―


「俺も付いて行っていいですよね」

「構わないわ。ガロン用意して頂戴」

「お嬢様、気をつけてくだされ」

「お前はこれを着けていろ童」


 ガロンはローブと髑髏の指輪を私に差し出した。何かがあった場合に、とカインには胸当てを用意し装備していく。胸当てには模様が描かれており、ガロン特製の装備物のようだ。


「さて、行きましょうか」


 私はガロンとカインを連れてユニコーンの森の入口に転移すると、既にユニコーンが待っていた。


「……待たせたわね」

「魔女、こっちだ」


 歩きながら周囲を観察しているが、既に森全体が枯れ始めている。石の気配はまだ遠いのだが、この状況なら中心部は既に猛毒化しているわね。


「ここまでで良いわ。貴方、既に脚をやられているわね。これを飲んで待っていなさいな」


 パチンと指を鳴らすと水桶と飼葉がユニコーンの前に現れた。


「ふふっ、私ったら間違えてしまったわ」

「こんな時まで嫌味か。いいぞ、相手になってやる」


 ユニコーンは鼻を鳴らしながら蹄をダンダンと地面に叩きつけている。もう一度パチンと鳴らすと飼葉は消え、小瓶を出すと、私はユニコーンに小瓶を渡す。


 ユニコーンはフンッと一息吐き出すと小瓶を受け取り、引き返すように歩きだす。その様子を見てフッと口角を上げる。


「さあ、カイン。行きましょう。ガロンも付いて来れるわね?」

「エイシャ様、もちろんですぞ」


 私達はふわりと身体を浮かせて怨嗟の石が投げ込まれた湖へと急いだ。


 湖へと近づいていくごとに植物は枯れ、瘴気が漂い、生き物の死骸が周辺に転がっている。


 湖に到着するとやはり湖は猛毒の沼と化していた。


 これだけの毒や瘴気をボコボコと生み出す沼は魔獣でも触れれば猛毒に侵され、即死してしまう。


「エイシャ様、どうしますかな」

「大丈夫よ。ガロン、結界を」


 ガロンは私の周りに結界を張り巡らせた。


「保って一分ですぞ」

「充分よ」


 私は結界の周りに風を纏わせ、怨嗟の石を感じる沼に浮遊し、中央まで移動すると、そのまま沼の底に降り立つ。


 石はやはり沼の底で瘴気を出し続けていたわ。


 私はそっと魔法で持ち上げ、沼を出て少し開けた場所に移動する。


「さて、やるわ。カイン、見ておきなさいね」


 私はそう言うと、呪文を唱える。


 普段の透明な結界とは違い、黒い結界で幾重にも怨嗟の石を包みこんでいく。石から漏れ出る瘴気は黒い結界を通す事は無いが、少しずつ結界内に溜まり、結界が膨らんでいく様子が見える。


 すかさず、私は魔法で黒のナイフを結界の周りに無数に展開させて髑髏から餓鬼を次々と呼び出し、ナイフに付かせる。


 私の『食べなさい』と言う合図と共にナイフは黒い結界を突き抜け、石に突き刺さると石からは悲鳴のような声が響く。うめき声や悲鳴で大気が震えている。


「ガロン、今、エイシャ様はどんな攻撃をしているんだ?」

「カイン、あれはな、闇の帳と言う結界の一種だ。死霊やアンデッド等の闇寄りの物を防ぐ効果があってな、呪いや腐敗、瘴気等も効果があるのだ。


 それを何重にも掛けるのはそれ程怨嗟の石は強力な物なのだぞ。そして吸啜きゅうてつのナイフは魂を吸い取る為のナイフ。


 あのナイフで傷を付けて吹き出す魂をナイフと餓鬼で吸収していく。餓鬼も精気を吸うから怨嗟の石にはもってこいなのだ」


 カインはガロンから細かな解説を受けている。そろそろかしら。髑髏から出されたナイフが千ほどを出した辺りで石が吐き出している瘴気が止んだ。


 私は闇の帳を解いて石を確認すると石はただの魔石に戻っているようだ。


 ほぼ中身は無くなったわね。


 空になった魔石を持ち、フッと息を掛けると、魔石はさらりと砂のように崩れていった。


「カイン、終わったわ。帰りましょうか。私、久々にお外に出たから疲れちゃったわ。ガロン、後は宜しくね。種はユニコーンに請求よ?」

「お嬢様、後はお任せ下さい」


 カインは私を心配したのかヒョイと横抱きにした。抵抗しようかとも思ったけれど、抵抗するのは止めておいた。どうやら相当心配していたようだ。過保護ね。


 ……仕方がないわ。


 私は文句も言わずにそのまま家に転移する。



 一週間した後、ガロンはユニコーンの生き血と角二本、木の実の入った袋を戦利品とばかりに意気揚々と両手に抱えて帰ってきた。

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