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エイシャの話

「あらあら。ガロンの話をしっかりと聞いていたのね。まぁ、隠していた訳では無いから気にも留めていなかったのだけど」


 カインは私の横に椅子を持ってきて私の手を取りながら話を聞いている。


 ……どういう状況なのかわからないわ。


 私は理解できずに首を傾げる。

 ガロンは『お嬢様から離れろ』とドロップキックをしているけれど完全に無視をしているわ。


「まぁ、カイン。魔人になったから私たちの事を少し理解は出来たのではないかしら?」

「エイシャ様。俺は全く分かりません。貴女のことを全て知りたい」


 私の頬擦りしそうな勢いで手を撫でながらカインは聞いてきた。


 カインは魔人になったはずなのに、私の下僕となっているわ。


 魔人への変化に失敗したのかしら?


「人間には教える必要は無いけれど、これから長い時を過ごすカインには話しておかないとね。私の名はエイシャ。

 人間たちは私のことをエキドナと呼ぶけれど、エキドナは私の祖母なのよ。


 お祖母様(おばあさま)もそうだけれど、残念ながら家族みんな存命よ。各地で好き勝手に生きているわ。そのうち会うことになると思うわ。それと私がエキドナと呼ばれる理由はこの下半身よ。


 お祖母様と同じなの。お祖母様は昔、この家に住んでいた頃は神や魔獣、人間たちの折衝をしていたの。今はそんな事はしていないし、気ままな旅に出ているけれどね。


 私が魔女と呼ばれているのは私が薬や魔術で生計を立てているから。これは母である魔女メーデイア譲りなの。


 母は薬の研究が趣味で様々な物を作っているわ。人間たちが使っている回復薬があるでしょう? あれの大元は母が作り出した物なの。人間が使っている物は大分、劣化しているけれどね。


 因みに、カインは人間から魔人になったけれど、私は人間の血は一滴も入っていないわ。どちらかと言えば魔獣の類よ。人の心は殆ど分からないわ」


 するとカインは疑問が浮かんだのか聞いてきた。


「何故、俺を助け、魔人にしたのですか?」

「……そうねぇ。一言でいえば楽しそうだったからよ。たまには人間を飼ってみるのもいいんじゃないかと思っただけね。私たちは気まぐれで好きか嫌いか、楽しいか楽しくないかで生きているもの」


「俺はエイシャ様に救われた」

「ふふっ、人間として一生を終えたほうが良かったかもしれないわよ?」

「エイシャ様と共に生きることを選んで後悔はありません」


「ふふっ、頼もしいわね。カインがもっと強くなれば貴方を連れて外へ出れそうね」

「エイシャ様はエキドナ様のように旅はしないのですか? ここに居る理由でもあるのですか?」


「私がここに住んでいる理由は私の持つ魔力によるもので私が生まれてからある程度成長するまでの間、魔力が体内から溢れ、放出したままだったの。


 その溢れ出た魔力によって魔物は活発化し、人間の国は大変だったと聞くわ。


 お祖母様は私をこの地に呼び寄せ、私が魔力の調整が出来るまでずっと一緒にこの森に住んでいたの。


 この森の結界で魔物が落ち着いたのを知った人間たちはここから動かないで欲しいってお祖母様に訴えてきたの。


 お祖母様は人間たちの願いを聞き入れ、私はここに住むようになったわ。もう魔力調整も出来る歳だし、ここに住み続ける理由もないけれど、なんとなく暮らしているだけよ。


 お祖母様が作ったこの特殊な結界は『この家に住む者に会いたい』と願う者は結界が感知して迷わずに来られるようになっているの。

 人間たちが私を頼ってくるのはお祖母様のやっていたことの延長ね。私の話はそんな所かしら?」


 詳しいことは追々話すしかしかない。なんせ長い時間を生きてきたのだから。


 残念ながらカインは魔人として生まれたばかりでまだまだひ弱な存在でしかない。


 これからのことを考えれば一日でも早く取り組まなければ、私がどんな目に合うかわからないもの。


「ガロン、明日からカインをお願いね」

「エイシャ様、もちろんですぞ」


 ガロンも十分にそのあたりは理解しているようだ。

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