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母からの苦情2

「そうだわ。私が協力してあげるわ。対価は頂くけれど。反抗的な貴族とその一族諸共根絶やしにすれば良いのでしょう? 今からやれば残りの三ヶ月は復興に回せるわ」


 宰相は目を見開いていた。まさかこんなに美人な魔女が手伝うとは思っても見なかったみたいね。


「さぁ、急いで処刑リストを持ってきてちょうだい」


 宰相は動揺している様子ではあるけれど、側近従者に指示をしてリストを持って来させる。


「仕事が早い男は好きよ? ふふっ、では早速行きましょうか、宰相様?」


 私はリストを受け取ると早速目を通した。上から順番に始末していけば良いのね。


 私は立ち上がると、宰相に横に付くように手招きをする。宰相は意味が分からないようだったが、私の指示通り横についた。


「では行きましょうか」


 錫杖で床を軽く叩くとシャランと鳴った音と共に床には魔法円が浮かび上がる。


 パッと一瞬で景色が変わると横にいた宰相は目を溢しそうなほど驚いていた。何故ならそこには処刑リスト第一位の大臣とその家族が目の前で食事をしていたからだ。


「あらあら、皆様お集まりで良かったわぁ。手間が省けていいわ。とっても素敵よ」


 執事は突然現れた私たちに驚きながらも襲撃者だと咄嗟に理解し、ナイフを投げた。

 が、ナイフは透明な壁があるかのようにカランと音をたてて床に落ちる。


 執事は優秀なのねぇ。


 私はふっと口角を上げ錫杖で床をトンッと突くと、その場にいた宰相以外の者は身体に輪が巻き付いたような簀巻きにされたような恰好となり、抵抗する間もなく床に転がった。


「あら、もう終わりかしら。何か反撃があると思ったのに。残念、ガッカリだわ」


 私は頬に手を当て困ったような仕草をしてみる。宰相はその様子を冷ややかな目で見ていた気がするわ。


「さぁ、宰相様。この簀巻きを謁見室に送るから次へ行きましょう?」


 パチンッと指を鳴らすと拘束された者は消え、私はまたシャランと鳴る音と共に次へ転移した。転移しては捕縛する事を幾度も繰り返し、リストの者全てを捕らえた。


「宰相様、終わったわ? 謁見室へ戻りましょうか」


 煌びやかな謁見室には似つかわしくない拘束された者たち。謀叛を企てた者とその親族一同を捕らえたのだから五十名はゆうに超え、謁見室は拘束された人でひしめきあっていた。


 宰相の部下達は拘束された者達の顔を確認し、全員リストと合っていると報告しているわ。拘束された者の中には宰相と私を見るなり顔を真っ赤にして叫び、謁見室は騒然となっていた。


「あらあら、うるさいわね」


 私はそう言うとパチッと指を鳴らす。


 すると、拘束されていた者全ての頭が転がった。切り口からは血が吹き出し、会場中が血の海へと変わり辺りは一瞬にして静けさが漂った。


「ふふっ。宰相様、楽しい時間だったわね。これで国も静かになったでしょう?」


 宰相やその場にいた貴族や騎士達は青い顔を通り越して今にも倒れそうなほど白い顔をしている。


「さて、対価は、そうねぇ。アベール地方は今、謀反を起こした貴族の兵士たちが駐留していて貴族の命令で一帯の森が焼かれてしまったの。アベール地方の三分の一を森にしてくださいな。種はこの袋の中に入っているわ。あとは復興をお願いね?」


「魔女様、本当にそれで良いのですか。約束通り、これからアベール地方の植樹や種蒔きをさせていただきます。街が復興し、全ての脅威をなくした後、カイン様をお迎えに上がります」

「分かったわ。カインが望むならね。じゃあ、私はこれで」


 私は沢山の種が入った袋を宰相に渡すと錫杖を鳴らして王宮を後にした。




「お嬢様、おかえりなさいませ」


 ガロンは人間の大きさのまま出迎えてくれた。


「ただいま。ガロン。カインは?」

「お嬢様が連れていかなかったせいですよ。不貞腐れて捗りもしない勉強しております」


 ふふっ、カインはまだまだ子供なのね。


 私はカインの部屋に向かうと、カインはガロンから言いつけられた勉強に取り組んでいたわ。


「カイン、ただいま。勉強は捗っている?」

「エキドナ様。お帰りなさい。勉強の方は、まぁまぁです」


 何となくカインからは連れていかなかった不満が部屋一面に充満しているようだわ。


「そう。お土産よ? これでやる気を出しなさいな」


 私はそう言って一本の万年筆をカインに渡す。


 カインは疑問に思ったようだが、その万年筆を受け取ると、しばらくじっと見つめていた。


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