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ストロベリーブロンドの娘 アイシャ視点

 私の名前はアイシャ。男爵のご落胤って事で平民として過ごしていたけれど、母の死と共に父に引き取られた。


 夫人はいつもいじわるばっかりしてくるし、父は上位貴族の繋がりが欲しくて私を引き取り、嫁がせようとしている。そのために学園にも通わせてもらったわ。その事には感謝しないとね。


 私の通っていた学園ではちょうど王太子殿下とその側近の方々が同期生として在籍していたの。


 王太子殿下やその側近の人たちはとても恰好良くて令嬢たちから人気があった。私だって女の子だもん、王子様たちと付き合ってみたいわ。


 自慢ではないけど、私は可愛いの。


 自分の持てる武器を使って王太子殿下は無理にしても側近の誰かを落としたい。


 男爵や夫人は私が上位貴族の誰かを婚約者として男爵のところへ連れていかないと、年寄りの後妻や金持ちでも不細工な人に男爵たちは嫁がせようとするに決まっている。


 でも、どうやれば確実に彼らの婚約者になれるのか考えたの。たまたまクラスメイトの令嬢が『隣国の眠り姫が魔女の薬で目を覚ましたらしい』という話を耳にしてこれだ! って思ったわ。


 魔女に惚れ薬を作って貰おうと考えたの。


 上位貴族をがっちり捕まえてしまえば後は楽ちんな人生が待っているのよ?

 最高よね。



 私は学院が休みの時、『出かけてきます』とだけ告げて馬車で魔女の森の近くまで向かったの。


 御者は気味悪がっていたけど、待っていてもらったわ。御者がいうにはこの森は魔獣が出ると言っていたけれど、会う事なく小屋にたどり着いた。


 魔女に案内され入った家の中。部屋は薬草や何かの小瓶が棚に沢山置かれているわ。


 さすが魔女って感じの家ね。席に着くと男がお茶を淹れてくれた。


 その男をよく見るとなんて格好いいの!


 魔女はとっても格好いい男の人を従者にしていた。

 なんて羨ましい。


 私もこうやって男の人を従えてみたいわ。


 この人、私を好きになってくれないかしら? 


 そう思ってカップを取る時にそっと触れてみたけれど、この格好いい人は私の事を虫でも見るかのような視線で睨まれた。


 失敗したわ。残念。


 よく見ると、魔女に甘い視線を送っている。悔しい。足が蛇のこんな化け物より私の方が絶対若くて可愛いのに。


 魔女は微笑みながら、私に惚れ薬を作ってくれた。小さな小瓶に入った液体は香りも良いし、お菓子に混ぜるといいかも。


 この薬があれば私は幸せになれる。

 早く帰ってお菓子を作らなきゃ。


 ……何か言っていた気もするけれど、問題ないわよね。


 私はお礼もそこそこに急いで家に帰った。



 翌日からそっと香りが分かるように首元に香水のようにそっと香りをつけて自分の取り巻きを取り込みながら王太子の側近へと徐々に近づいていった。


「クッキーを焼いてみたんです。お口に合うといいんだけど……」

「おっ、良い香りだな。いただくか」


 側近の一人が惚れ薬の入ったクッキーを一かけら口にし、毒見をした後、王太子が口にする。


 そこから男たちは面白いように私を好きになった。


 彼らが私を夢中になる様が楽しくてしかたがなかった。


 学園で側近達と中庭でお茶をする時には必ず惚れ薬を入れたわ。親しくなっていく彼らに焼きもちを焼いた側近の婚約者たちは私に文句を言っていたけれど、彼らは既に私の魅力に夢中で睨みつけながら婚約者達を追い返した。


 あははっ、簡単ね。


 これなら王太子も簡単に堕ちそうだわ。案の定、王太子もコロッといったわ。


 みんな私の我儘を聞いてくれる。

 綺麗だって褒めてくれる。

 沢山贈り物をしてくれるわ。


 やはり私ほどのいい女なんていないわ!

 傾国の美女って私のことなんだと思う。

 このまま王妃になってもいいわね。


 男たちはみんな私に跪くべきなのよ。



 王太子に惚れ薬の飲ませはじめて半月後、学園の卒業と共に王太子たちは豹変した。


 愛という名の独占欲に支配された王太子たち。王太子の意向で王宮の客室に住むようになった。


 そこから毎日、みんなが私のところにきては愛を囁き、誰かと鉢合わせすれば自分を選んでほしいと乞うようになったの。


 その熱烈な言葉を曖昧に返すようにしたわ。


 私が誰かを選んじゃったら一人しかチヤホヤされないじゃない。


 そんなのは嫌なの。


 けれど、最初は言い合いをするくらいだったが、だんだんと嫉妬深くなり、殺し合いになりそうな雰囲気が漂っている。


「私の事で争わないで」


 ウルウルと潤んだ目をして男達に言ったのが間違いだった。


 彼らは話し合いの末、仲良く共有しようとなり、私を後宮の一室へ閉じ込めた。


 そこからは酷い有り様だったわ。毎日、愛していると言いながら私の身体を貪っていく。


 苦しくて、辛くて、逃げだそうとしたわ。


 けれど、彼らは私を捕まえて鎖で繋いだ。どこにも行く自由もなく、食事も一人で摂らせてもらえない。


 魔女が部屋に来た時、私は助かったと思った。


 ……けれど、違った。


 魔女は私が支払っていない対価を取りに来た。対価として私は目を抉られ、光を無くした。


 なんで? 


 こんなのはおかしい。絶対変よ。だってそうでしょう? 


 ちょっと薬を使っただけで目を取るなんておかしいに決まっているわ。美人で可愛くて傾国の美少女の私がこんな目に遭うなんて酷い。


 魔女を呼ぼうとするとなぜか喉が焼けつくように痛みだし、声も老婆のように低くしゃがれた声になってしまっていた。


 私の悲しみと対照的に王太子たちは『これで逃げ出さなくていいね』と喜んでいる。


 あぁ、誰か助けて。

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