7、今年もやるとな!?
シンセツ号に恋したサーシャちゃんを今度は宥めすかすも、恋した乙女は強かった。
「本当に申し訳ございません•••。サーシャが我儘を言ってしまって•••。」
同じような黒毛の馬ーシンセツ2号ーと交換で何とか収まった。
この黒毛の馬もシンセツ号と同じような表情だと言うのに、サーシャちゃん曰く全く違うらしい。
何よりこの子は牡なのに。恋は盲目とはこの事だろう。
だが、サーシャちゃんの気持ちは違った。
「だってこのこがいれば、ここにこれなくてもさみしくないわ!」
やっぱり健気だった。
もう直王都に戻る事になるサーシャちゃんは、こことの繋がりが欲しかったのだろう。
「みんなで てがみかくね!」
「わたくしもかくわ!まってるからね!!」
そう言ってシンセツ号を携え王都へ向け帰って行った。
シンセツ号婿取り?事件から数日後、ナールさんから父達に相談があるとの事で宿泊所で話し合いがあった。
そしてその日の夜に父から
「模範村として、研修生を今年も取る事になるらしい。
今年は去年よりは少なくて3つの村からだそうだよ。」
そう言った父は何かがおかしい。
明らかに無理した笑顔だし、見つめていると目を逸らす。
だが、口を割る気がないのも明らか。
釈然としないが、そのうち教えてくれる事を待つしかない。
次の日ライ達ちびっ子警備隊の面々も研修生の事を聞いたようだが、大人たちの態度に違和感があったと言っていた。
何故かいつにも増して愛情たっぷりな抱擁に言葉の数々。
逆に怪しんでくれと言っているようなものではないか。
だが幼子にしか使えないウルウル上目遣いも通じないし、無言の見つめ合いも通じない。
大人にしか教えてもらえない事情とかあるのは分かる。今回もそう言う事なのだろう。
仕方ないと諦め、いつもの子供会をして研修生を迎えるための"おもてなし計画"を立てた。
母に似て計画を立てるのは得意なのだ!
約束大事!守る事は信頼と絆を育むのだ!
研修生を迎えるのは春の2月頃になったようだ。
大人たちは怪しいが、子供にだってやらなきゃいけない事が多いのだ。
構ってはいられないのだ。
取り敢えず
「山神様を春らしい装いにしなきゃだわ!」
そうそう、装いを••••?えっ、必要か!?
強制的に連れて行かれた先で、強制的に参加させられ山神様春バージョンに整えたのである。
山神夫には首に薄桃色の布を巻いてネクタイ風に、山神妻にはスカーフ風に、山神子には頭にリボンを付けていた。
何だこれは。守護神ってより、姿はあれだがデカい着せ替え人形風ではないか?
神秘さの欠片もない山神家族のこれから先が非常に心配でならない。
その後は祠の掃除と勉強、おやつを食べてから家へとそれぞれ帰った。
次の日、宿泊所で粘土板に春になってからの予定を書いていた。
・春の大会 ・研修生来る ...
「ルンちゃんそれがどうかしたの?」
どうやら相当考えていたようだ、研修生のところにアンダーラインを引いてしまうほど。
「ううん、ことしはどこのむらからくるのかなーって かんがえてただけ。」
「気になるよね!今年も小さな子が来るかしら!そしたらまた皆んなで遊べると良いわね!」
そっか、研修生の事ばかり目がいっていたけど、幼子が来れば一緒に遊べるではないか!
出会いは大切!アーリやペル、カイにクウそしてサラのように、友達が増えると思えば楽しみになってきた!
現金なもので、さっきまでのモヤモヤはきれいになくなり、出会うであろう人達の事を思い浮かべては皆んなと笑い合ったのだった。
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