4、薬師と言う仕事
唐突のカミングアウトの翌日、意識はあるも目を開けてからの事を考えていた。
どう言った顔すれば良いのだろう?
普段通りで良いのだろうか?
などなど真剣に考えていたのだ。
だが、そんな事よりも今はこの重さに耐えられない!
目をつぶっているから分からないけど、これは明らかに人の重さだ。
うっすらと目を開け覗き見ると、何だこれは。
両親に挟まれその両親の上に兄達が乗り私に抱きついている。
皆んなの気持ちは通じた。通じたが•••
「おーもーいーー!」
「あら、起きたの?おはようルンちゃん。
私たちも起きたらダルとジルに乗られていたから、起き上がれなかったのよ。」
困ったわ、と言いつつも、子供といれて幸せと物語るその表情は全く困っているようではない。
むしろ、蕩けていた。
朝から家族の愛に物理的に押し潰されるかと思ったが、何とか脱出して定位置のコタツへと抱っこで連れて行ってもらった。
もしや、なかなか体力がつかない原因はこれではないだろうか?
だが、言わない。人間楽を覚えたら抜け出せないって言うが、本当のようだ。
「さぁ、ご飯にしましょうね。」
母の作ってくれた朝ご飯を食べ、今日の予定を考える。
まずはナールさんにライ一家が作った物を見てもらう。
このライ一家が作った物は図鑑の域を超え、薬師辞典と言えるのではないか?
そして歩行練習をしてから、おやつを食べて•••それからぁー••
「ルンちゃん、そう言えばバクさん達が作ったあれを使えば、薬草に1番携わってるバクさん達自身が薬を作る事出来るんじゃない?
えっと、ちょうごう?も出来るんじゃないかな?」
そっか!ライ一家が薬師になれば良いのか!!
「それいーね!ライたちにきかないと わからないけど、そうなったらいーなー」
そうなればお医者さんの寿命も伸びるし、薬がもっと身近になる。
もちろんお医者さんに診断して貰ってから薬を受け取るのが1番なのだが、お医者さんにかかるにも町などの人が多い場所にしか居ない。
それに診察にかかる費用に苦心する所はきっと多いと思う。
そういう所では尚更、救急箱のように薬だけでも手に入るような事があれば助かるのではないか!
「バクさんのとこ行ってみようか!」
ダル兄の言葉に笑顔で同意した。
「というわけで、どうでしょーか?」
ダル兄と手を繋ぎ雪道をゆっくりと歩いてライの家まで行き、考えを伝えた。
「うーん、薬草の効果とか種類とか分からない事だらけだから、何とも言えないけど•••
この前のような病に罹ったライや皆んなの助けになれるなら、俺はやりたい。」
「お父さん僕もやりたい!」
「そうね、皆んなで頑張りましょう?」
3人ともやる気を漲らせて同意してくれた。
ライ一家の薬師になるための勉強はこれからで大変だろうけど、この村からこの世界初の薬師が誕生するかもしれない!
最近になって漸く出来たナールさんの新居へと行き、ナールさんに見せた図鑑もとい薬草辞典は
「これは大変な物だよ!然るべき人が持つ物だ!売るとしたら限定しないとダメだな•••」
印刷などの機械があるわけではないこの世界では、全て手書きなのだ。
これをもし売るとしたら複写する人も必要。
そうなったらこれを手離さなければいけなくなる。折角ライ一家が頑張って作った辞典なのに売られては困る。
「だめー!これはライたちの!!
ナールさんはくすりのざいりょうと、つくりかたをしいれて できあがったくすりをおいしゃさんにうるのはどう?」
「それはそうだね。ごめんごめん!
医者と薬扱う人を分けるんだよね?協力してくれそうな医者なら知ってるから、聞いてみるよ。」
何でも商品として見る目は素晴らしいが、何でも売られたらたまったものではない。
まったく困った人だ。
だからお嫁さんが来ないんだ。
「ルンちゃん、今非常に失礼な事を考えなかったかな?」
「こまったちゃんとか およめさんこないのはどーしてだとか、おもってない!」
そんな事を思っても口に出さないのが淑女なのだ。
そう思いつつナールさん宅を出て宿泊所へと向かった。
「••••ルンちゃん、全部口に出てるよ•••。」
そんな涙目のナールさんの言葉など聞こえていなかった。
さてさて、薬師の事はナールさんとライ一家に任せて私も自分の仕事をしよう。
歩行練習という仕事を•••
「今日はこのマシーン使って練習しようか。」
甘い汁にドボドボ浸かった私に、何故歩くマシーンを勧めるのだ。
それは進めど進めどゴールの見えない究極のマラソンと一緒ではないか。
「ルンちゃんこれを頑張ったらタニタさんが作ってくれた出来立てパンがあるからね!」
燃えてきた!タニタさんのパンな上に出来立てだと!?
今私の目の前には、遥か遠くで柔らかなパンが手足を伸ばしてゴールの旗を振っている姿が見える!
待っているのだ!私のパンー!!
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