2、それぞれの呟き
今日も元気に友達とはしゃいでいるルンの姿を見ながら、母や兄2人は王都熱に罹ってからの日々をそれぞれで思い返していた。
ーージル視点ーー
冬の1月下旬から妹のルンが王都熱なるものにかかった数週間は、本当に生きた心地がしなかった。
バクさん達が作ってくれた薬を飲んで回復していく他の子を横目に、全く回復していかないルンを見て不安だけが募った。
なのに折角の薬を、苦いから嫌と言うルンには正直怒りすら湧いた。
だってそうだよね?治るのに必要と分かっているのに嫌がるんだもの。
だけど、こっそりと味見してみた薬は••••
「うげ、にがっ!これは無理だ••••」
確かに苦く不味く、そして臭かったんだ。
むしろ、これをあの4人はよく飲めたものだと感心すらしてしまった。
それをダル兄に伝えると、ダル兄も味見をして"苦い"との言葉をはいた。
その後2人でどうやったら飲みやすくなるかを考えて、糖蜜を入れたりお茶に混ぜたりしたけどどれも薬の味が際立っただけだった。
半ば自棄になって鶏ガラのスープに混ぜてみたら、意外にも味も臭いも薄まった。
僕にも移るかもしれないからとルンの所へは行けなかったから、ダル兄がルンの元へと持って行ってくれた。
その後ダル兄からスープを飲んでくれたと聞いた時はすごく嬉しかった。
早く治ってまたルンの元気な笑顔が見たいな。それでまた変わった物を思いついたら、一緒に楽しみたい!
そう祈っていたんだ。
それが通じて、今ではちょっと食い意地張った元のルンがいる。
ルンはやっぱりこうでなくっちゃだよね!
ーーダル視点ーー
ジルと考えた薬の飲ませ方で、ルンはどんどん良くなってくれました。
一時はこのまま神の元へと帰ってしまうのではないかと思っていたのです。
ルンは今よりも幼い頃から色々な事を誰に教わるでもなく知っていました。
その事に違和感を持っていたのは僕だけではなかったけれど、僕らの可愛い妹には変わりないからそのまま見守っていたんです。
だけど、もしルン自身がその事に悩んでいるのなら助けてあげようと思っていました。
ルンはもしかしたら、神様がこの世界に授けてくれた贈り物かもしれない。
ルンの突拍子もない発想のお陰で、前よりももっと幸せな毎日を暮らせているのに、ルンには何1つ返せていない。
だからまだ神様の元へ帰ってはダメだよ!
ルンは僕の、僕たちの大切な家族なんだ!
そう思いながら回復を願ってました。
今では歩くのには苦労してるけど、元気な姿を見せてくれてます。
だけど、今度こそ伝えようと思ってます。
見守っているだけじゃダメなんだって気づいたのです。
僕らは唯一無二の家族なんだから。
ーーシャル視点ーー
ルンが朝起き出した時、何故か少し違和感を感じたのですが
「いってきまーす!」
元気に走っていく姿に、気のせいかな?と思ったのが間違いでした。
その日の夕方、隣家のモスさんに抱き抱えられて家へと連れられてきたルンは、意識はなく高熱で魘されていたのです。
心臓が止まるかと思いました。
急いでルンを寝かせ、ナールさんを通じて医者の派遣をお願いしました。
そこで発覚したのが"王都熱"という病の存在です。
しかし薬がないとの言葉に絶望を感じる以外ありませんでした。
毎日顔を見ては"今日も生きていてくれた"と思いながら、何とか飲み物だけでも飲んでくれるよう声かけながら看病をしていました。
病に罹ってから6日目に、バクさんが作ってくれた薬が届きました。
でも臭いからしても苦いようで飲んでくれないルンに、悲しさと不安だけが積もって•••
"どうか神様、大切な我が子をまだ連れて行かないで下さい"と毎日祈ってしまいました。
ダルもジルもかけがえのない我が子ではありますが、ルンは多分•••神が授けてくれた子なのでしょう。
でも、命をかけこの世に産み落としたのは私です。
例え神が相手であっても、私の可愛いルンを渡したりするもんですか!
その思いが通じたのか、ルンはダル達が作ったスープでどんどん良くなり、今では弾けんばかりの笑顔を見せてくれています。
神様、ルンがあなたのお側へ召されるのは精一杯に生きた後にして下さいね。
でないと、私は神にすら挑まなければいけなくなりますから。
ふふ、子を持つ親の思いは怖いんですよ?
閲覧いただき、ありがとうございます。
誤字・脱字等ありましたら都度訂正していきます。




