11、それぞれの奮闘
王都熱、その特徴として頬が真っ赤になり潜伏期間を経て一気に高熱が出る。免疫の弱い幼い子供にのみなる病気で高熱や咳が続き、元来の風邪に対応する薬では効き目がなく最悪死に至る病との事。
治療法としては高熱続きで徐々に衰弱していく為、まだ体力のあるうちにこの病に対応した薬を飲んで治すしかないようだ。
それを聞いた大人達は藁にも縋る思いで、医師に薬の処方を頼んだ。
しかし•••
「この冬王都熱は大流行していて、薬の原料がなかなか手に入らないんです•••
手に入り次第こちらに届くよう手配しますが
今は取り敢えず、精の付くものを食べさせて体力を落とさないようにするしか•••。」
その言葉は親達を絶望へと突き落とすのには十分だった。
「ルン•••、辛いだろう、苦しいよな?
ごめんな、力のない親で•••!」
この村にいる幼い子供と言えば警備隊のこの5人のみ。
その5人が揃って王都熱に罹ってしまったのだ。
その日からギルド長の立場を活かし、ナールは薬の入手の手立てなどを探し始めた。
親は精のつくような、でも食べ易い物をと考え試行錯誤をしながらも子供達に食べ物を食べさせていった。
そして、ナールが手に入れた情報を持って村へと駆け込んで来たのは、医師に診てもらってから5日後の事。
高熱で魘されてはいるも、まだそれほど酷く衰弱した子はいなかった。
「これを!これをこの村近くにある山で手に入りませんか!?
最悪どちらか1つでも良いそうなんです!」
これ、と言って見せた書類にはユキグサやクマノミと言う文字があった。
それは雪の降り積もる中でも生える強い薬草や春先にのみなる木の実(葉はクマノテと呼ばれる大葉)で、この森にも自生していた。
それを見てライの父バクは、はっとして家に急いだ。
救急箱なる物を作って色んな薬草を入れていたのを思い出したのだ。
「あった•••!ライと見つけたこの草と木の実がライや皆んなの助けになるかも•••!!」
それを持ってナールの元へと急ぎ、どう使うのかや分量を教わり妻のユキと共に食事も忘れ作り続けた。
「••••出来た、皆んなー!出来たぞ!!」
ほぼ1日かけ木の実を擦り潰し薬草を煎じていたバク夫婦の奮闘により出来上がった物を、それぞれに渡して子供達に飲ませた。
その結果、ライやリック、エリンの比較的大きな子が先に良くなっていった。
そしてメルトもそれに続くように良くなっていった。
だがルンは•••••
「にがい•••やー•••!」
この後に及んで苦い物に拒絶反応を示したのだ。これには親も困り果ててしまった。
「ルンちゃん、お願いよ、飲んでくれないと元気になれないのよ?
お願い、早くまた元気に走り回る姿をお母さんに見せて??」
「元気になればまた大好きなクッキーも食べれるんだぞ?
だから、いい加減ちゃんと飲むんだ!」
あの手この手で少量づつ飲ませ、僅かなりと効いているのか高熱は落ち着いてきた。
だがこの小康状態が長く続けば幼児の体力は消耗しきってしまう。
このまま体力がなくなれば、大切な我が子に待ち受ける先の未来はーー
"死"の一文字•••
精神的に追い詰められた親は焦りから苛立ち病気で苦しむ子供に怒ってしまい、そんな子供に当たる自分に自己嫌悪すると言う悪循環な日が続いた。
そんなある日、ダルがお皿を片手にルンの寝る部屋へと走ってきた。
「母さん!これなら飲まないかな!?」
それはルンの大好きな、鶏ガラのスープだった。
その皿を受け取った母親は、もしかしたらと願いを込めてスープをルンに飲ませた。
「ルンちゃんほら、飲んでみて?」
鶏ガラの匂いに反応し、ルンは口を開け
「••おい、しー•••」
弱々しい言葉を出しながらも飲んだ。
その姿は親にしてみれば、我が子を失わずにすむ希望の光が灯った瞬間だった。
その日を境にルンの症状はどんどん良くなり、王都熱に罹ってから4週間ほどでこの村の王都熱は終息した。
薬が出来た辺りから、救急箱をそれぞれの効能や煎じる方法を書いてギルドで売り出し、看板商品となった。
後日その救急箱には、"お子様の服用は根気がいるので、好きな物と一緒の服用を推奨します。"の一言が付け加えられていたらしい。
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第8章完結しました。




