5、父と日常と夏野菜
父達が帰って来ると、やはり父のいない生活に慣れていたつもりでも寂しかったようで、子供達は父親にべったりとついて回る姿が見られていた。
「こどもねー」
そんな子供達の姿を見ながら達観したような言葉をはいてしまったのは、私の心は誰よりも大人な淑女であるからだろう。
「ルン•••、お父さんはすごく嬉しいんだよ?
ルンと近くにいられて、すごく嬉しいんだけどね•••動きにくいよ••••」
何を言う。私は他の子のようにどこへ行くにもべったりとくっついて回ってはいないではないか。
「これは一体何なんだろ?
俺らがいない間にでも流行った遊びかな?」
こんな事流行った記憶はない。
二人羽織のような遊びは、カイでなければ思いつかないだろう。
やんちゃな子が思いつきそうな遊びだ。
「ルンちゃん?お父さんはもうどこにも行かないから、せめて背中にしてあげたら?」
「そうだよ?ルン。足にしがみつかれていたら、移動しにくいんだよ•••」
コアラの如く父の足にひしっとしがみついて、どこへ行くにもついて回らなくても一緒に移動できる。
素晴らしい移動方法、いや、一緒にいる方法を思いついたものだ。
ただ難点は••••••
「きもちわるいー•••」
思った以上に揺れるため、車酔いならぬ足酔いしてしまう事だ。
父にはもう少し上手な足捌きを所望する。
父がいない間の寂しさを埋めるように、飽きるまでこのコアラスタイルで過ごしていた。
夏の3月中旬に入る頃には皆んなの気持ちも落ち着いたようで、いつも通りの日常へと戻り警備隊の仕事も復活した。
警備隊としての仕事内容は巡回におやつに昼寝なのだが、父のいない間に手伝った収穫に味をしめ野菜の収穫も警備隊の仕事に加わった。
「ふぉー!アマオウダマが•••ない•••だと!?」
「あれはたくさん実をつけてくれるけど、虫がつきやすくてすぐに弱ってしまうのよ。
だからある程度で、秋野菜を植えるためにも抜き取ったのよ?」
何だって!?そんな事知っていたらコアラなどしないで実を選んだのに!!
私のおやつがぁー•••!
「ルンちゃん達皆んなで収穫のお手伝いしてくれるなら、キャロの方お願いできる?」
•••••••さて、巡回にでも行ってこようかな。
「•••ルンちゃん?好き嫌いはだめよ?」
「えー!ルンちゃんキャロ嫌いなの?美味しいのに!!」
「そうだよ!あれはルンの好きな甘いやつじゃないかー」
淑女たるもの好き嫌いなどない。
ただちょっと、あの苦味が苦手なだけだ。
ただちょっと、あの臭さが苦手なだけだ。
ただちょっと、あれの甘さは違うだけだ。
キャロとは大根の半分くらいの大きさで紫色の、人参だ。
ただこの人参、異様に味が濃いのだ!
苦手でも嫌いでもないけど好んで食べたいとは思えないのだ!
贅沢は敵と分かってはいるのだけど••••
こればかりは勘弁して下さいーー!!
結局母を始め、警備隊の面々に捕まりキャロの収穫を手伝った。
私の気持ちとは裏腹になかなか立派で艶のあるキャロが大量に収穫された。
このキャロの何が困るって
「これだけあれば、冬の間困らないわね。」
そうなのだ。誰かにあげるでも行商人に売るわけでもない。
この村で全て消費すると言う地獄。
「今日お母さんがご飯で出してくれるかな?楽しみー!」
何が楽しみなのだ。全くもって理解できない。
秋に収穫予定のお芋よ、早くできないかなぁ。あのホクホクで甘くていくらでも食べていられるのに、大量に出来る優れ物。
夏野菜の楽しみがなくなった今、秋野菜に想いを馳せるしかないのである。
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