9、見送り準備と指の傷
研修期間が終わり、弟子入り希望者以外は帰り支度をしていた。
折角仲良くなった子達との別れに、皆んなで抱き合って別れを惜しんだ。
「またくるよ!そっちも うちの村に遊びこいよ!」
「いつか いく!」
お互い明るくそう言ってそれぞれの村へと馬車は走っていった。
ちびっ子警備隊予備軍の子達だったが、次に再会する時はお互い"ちびっ子"じゃなくなっているかもしれない。
どんな風に大きくなっていくのか、楽しみである。
「ルンちゃん、あれ出来たわ!」
「ふぉー!エリンありがとー!!」
じんわりと感傷に浸っていると、エリンから声がかかった。
来週には父達がこの村を離れ、ダム作りに行かなければならない。
どんなに嫌でもその日はやって来てしまうのなら、何かお守りになる物を作って渡そうと警備隊達で話し合ったのだ。
エリンの家へとお邪魔して、草木染めしてくれた布を見せてもらった。
「おぉー!もよう ついてる!!」
「まだ力が弱くて、私じゃしぼれなかったからお母さんにやってもらったの。」
どういった経緯か、布を染色液に浸す際絞った状態で浸すと模様のように色合いに強弱が出るようになったと言っていた。
その出来上がった布を今度は母達の元へと持って行き、裁断してもらった。
10㎝四方くらいの大きさに切ってもらっている間に子供達は針を持ってスタンバイ。
1.5cmほどの縫い代を残して袋状に縫っていき、表に返して中にそれぞれ大切な物を入れようとなったのだ。
しかしそこで問題が勃発した。
「これ 入らないわ•••」
「僕のも入らない•••」
「僕も•••」
そんな声に必死で袋を縫っていた私は顔を上げ、呆れてしまった。
そりゃ入らなくて当然じゃないか。
エリンは自分で作った布を、ライは鎮痛作用のあると言う薬草を、リックに至っては明らかに袋よりも大きな木工細工を詰め込もうとしていた。困った子達だ。
「ルンちゃんのそれ、入るだろうけど何か入れちゃダメな気もする。」
それと言って指を差された物を見る。
何故いけないのだ?とても理に適っているではないか。
「だって絶対そのまま持ってると思うし、その間にボロボロになるわよ?」
何だと!?小腹が空いて倒れそうになった時に魔法のように出てきたら、素敵だと思ったのに。大切な宝物を入れても食べずに朽ちるなら、私が食べる!
そんなやり取りを見ていた母達から
「それじゃ、紙に手形でも押したらどう?
旅のお守りに良く使われているのよ?」
それは良い!この世界の紙は藁半紙のような物で、決して上質ではないが紙自体がそうそう安い物でもないため、大切に使っているのだ。
それを外へと出向く家族がいる人達が、それぞれの手形を取って袋に入れていった。
ちなみに袋を縫っている私の姿をハラハラしながら見ていたダル兄が、指を15回ほど針で刺してしまった瞬間から代わって縫ってくれた。
淑女ではあるが、ほらまだ小さいから•••
決して不器用なんて•••認めないのだ。
そして出来上がったお守りを、外へと行く15人の父親や夫達に手渡した。
父はお守りを貰うと、感涙の涙を流し4人まとめて抱きしめた。
父よ、どうか無事に帰って来てね。
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