1、春の気配
新章スタートです。
冬の日課になる雪下ろしや雪かき、それに加えて雪の芸術品作成。
何だかんだと言いつつも、この雪の芸術品を見にお貴族様が来る事でナールさんを通す事なくとも藁の籠や木工作品が、お土産品として売れていた。
こうして世の中は回っているのだな、としみじみ。
そんな中、奇妙な事に父の摩訶不思議な作品にやたらと人気が出ていて••••
「ルン!山神様を作ってみたぞ!!」
自信満々に見せてくれるそれは、空想上の山神様をこれまた空想上で勝手に思い描いた何かだった。
「•••••••くぎゃ?」
もはや鳴き声すら想像もできない。
「これはな、サンドに聞いたがドラゴンと言うものだ!この翼で世界中を飛び回って、冬になったらこの山に帰ってくる!
どうだ!良い出来だろう!!」
うん。父の言いたい事やサンドさんの伝えたい事は分かった。
だが、それを良く見てみるのだ。
どう見てもドラゴンなど神秘的なものではなく、強いて言うなら自前の翼があるのに背中にコウモリのような翼を付けたペンギンっぽい何かではなかろうか。
その表情は獰猛な猛禽類もかくやでドラゴンよりも悪魔と言われた方が納得できる。
サンドさんとは、あの神話おじさんの名前で父はこのサンドさんに山神様の話や他の話も聞いた結果、アレンジに改良を加えこの世にも奇妙なペンギンが出来上がったらしい。
ちなみにこの自称山神様は、雪の祠近くで販売しているようで、祠を見学した人達が必ず買って行くほどの人気商品になっているらしい。
これを見た盗賊も走って逃げるだろう山神様の置物は、良い魔除けになりそうだ。
だがこれだけは言わせてほしい。
父よ、ペンギンは恒温動物だから冬眠はしない。残念。
そんな摩訶不思議山神様を量産する父を横目に外へ出てみると、まだ雪が残る大地や木々が雪化粧している中に微かに匂う春の匂い。
不思議なもので、同じ空気なのにそれぞれの季節毎に独特の匂いを感じるのだ。
「もうすぐ はるくる。」
「そう言えば、そんな匂いするわねー」
私と同じように外へと出ていたエリンも匂いを嗅いで春の気配を感じたようだ。
春になったら何をしよう!
まずは模範村を成功させる事でしょ?
それから他の村から来た人達から生活に使えそうな物を聞き出す事でしょ?
それからそれから•••楽しい事をたくさんして人生を謳歌する!
私が春に向けてやる気を漲らせている横で
「またルンちゃん何かやらかしそう•••
これは皆んなにケーコクしておかなきゃ!」
エリンもまたルンの監視要員として、密かにやる気を漲らせていた。
そんなこんなで刺すような寒さが和らいできた冬の3月下旬
「あっ!わすれてた!まずは たいかい かいさいしないとだ!!」
この言葉と共に長かった冬が終わりを迎えようとしていた。
閲覧いただき、ありがとうございます。
誤字・脱字等ありましたら都度訂正していきます。
春と言えば芽吹きや桜のピンクがイメージとして出てきます。
皆さんそれぞれ思い起こすイメージがあって、その違いがまた面白いですよね。




