9、ご領主様の来訪
冬篭りの最中だとて、村人にはやる事がたくさんあるのだ。
決して春近くに準備を完了すれば良いかぁなどと思って、まったりしていた訳ではないが
模範村の準備は、心積りしかしていなかった村人がほとんど。
「ご領主様は何を見ていくつもりなのかな?
そこを中心に準備を始めれば良いんじゃないかな?」
人に丸投げする事で、面倒事を回避していた父の発言とは思えない言葉に
「おとーしゃん、かっこいい!」
思わず口に出して言ってしまった。
その言葉を聞いた父は、ゆるゆる•••いや、デロンデロンに顔が緩んでいた。
「おとーしゃん•••デロン かこわるい」
部屋の隅で小さくなりイジイジとしてしまった父を横目で見つつ
「みんなの うけもちぶんや じゅんびしとけば だいじょーぶ?」
と発言した。
この時期に訪問されると言う事は、ご領主様も農作業が出来ない事を理解していて来るのだろうし、他にやっているこの村独自の事を見て貰えば良いだけではないだろうか?
「まぁ、確かにそうだな。」
「それじゃ他の人は今まで通り手仕事を進めてもらえれば良いな!」
それから1週後にご領主様が来訪された。
お貴族様に会う機会何てない村人は、皆んなそれぞれが緊張でガチガチに•••
「それで、うちの旦那が〜•••」
「おーい、これなんか良く出来てないか?」
なっていないようだ。
むしろ、通常運転だった。
そしてご領主様は、出で立ちは老年のいかにもお貴族様と言う格好をしているが
見る物全てに興味を惹かれ、木工作業に草木染め、果ては子供の仕事に任命したイジイジ作業までも嬉々として体験。
雪の積もる道を歩き、ダムの見学や堆肥&汚水処理機の見学をして担当の村人の説明も熱心に聞いていた。
そして子供達にも気さくに話しかけ、雪の作品を見て回っていた。
あまりにもフレンドリーなご領主様に、こちらの気力が削がれてしまった気がした。
「いやー、素晴らしい村だ。自分達の出来る事を見つけだす観察眼や、より生活しやすくする為の発想。
これは確かに模範となるだろう。領主としてとても鼻が高い!
このダムのお陰で、領地内で洪水や川の氾濫が収まっているのは本当に助かっている。
改めてお礼を言わせてもらおう。」
その言葉に、この村だけでなくダムを通じて領地内の人の助けになれていたと思ったら
嬉しくてムズムズとしてしまった。
ムズムズ モジモジ...
「おや、お嬢ちゃんトイレに行きたくなっちゃったのかな?
寒い中、外で話なんかして悪かったねぇ〜
いやはや、年を取ると話が長くなって仕方ない。ハハハハハ!」
んな!何たる事だ、立派な淑女に対してトイレ発言!
何故私の周りは失礼な発言する人しか集まらないのだ。
やや遠い目をしながら、ダル兄に抱っこされトイレまで連れて行かれた。
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誤字・脱字等ありましたら都度訂正していきます。
短めの小話を連投します。
新章は長い冬篭り後の話になります。




