3、お菓子のダンス
「おうと行ってみたい。」
夏の2月も中旬から下旬へと差しかかりそうなある日、ふと呟いた。
「どうして?何かあるの?」
メルトの当然の疑問に何の迷いもなく答えた。
「きらきらかがやく おかしを見たい!」
遡る事数日前、ナールさんと話をしている時に
「今塔風車にかかりっきりで、王都へはなかなか行けないんだけど、変わった物が王都のお店で売られるようになったって報告がきてるんだよ。
何でも、砂糖をふんだんに使ってキラキラ光っているように見える物とか、しっとりしていて甘いけど食べ飽きないほど美味しい物とかあるらしいよ。
こっちが落ち着いたら1度見に行ってみようと思うんだ。」
そんな事を聞いたら見たくなるに決まっているではないか。
頭の中ではモヤのかかった、でもキラキラと輝くお菓子達がダンスしている。
「ルンちゃん?ルンちゃーん!」
「また違うとこ飛んで行っちゃってるね。」
妄想の中でお菓子達との楽しいダンスをしている私には、メルトやライの言葉など全く聞こえなかった。
そうして若干意識を飛ばしながらも、父へと願望を伝えてみたのだが
「いくらルンの頼みでも難しいなぁ。
まだまだ収穫や秋野菜の種植えに忙しいから、ここを離れられないんだよ。」
呆気なく夢破れたり。
分かっていた。農業とは育てる物によっては、年間を通してやる事があり忙しいと。
だが、この消化できない衝動をどうしたら良いんだ!
「ナールさんにせきにん とってもらう!」
そう呟いてナールさんの元へと走って行った。
私の呟きを拾った父は、何故か焦りだし挙句鬼の形相になっていたらしい。
「責任だと•••!?まさか••••
おのれ!俺の可愛い娘に•••!!」
そしてナールさんの元へは父も走ってやってきた。
「ナールさん!きらきらかがやく 夢のようなすばらしい おいしいおかしを見にいきたいので、つれていってください!」
「な、なな何かな!?
何でダンさんはそんなに睨んでいるんだろ?
そしてルンちゃん、僕の言ったお菓子よりもはるかにハードルが上がってない!?」
何を言う。私の中ではずっと楽しげにダンスして、まるで見においで、と手招きしているお菓子達が不味いはずない!
「お菓子?ナールさん!
お菓子でルンを誑かしたんですか!?ルンの父親として看過できません!」
そして父は一体何を言っているのだろうか?
私にお菓子の話をした事で、この衝動にかられてしまったのを怒ってくれているのだろうか?
何て心強いのだろう!
「おとーさん!せきにん とってもらって!」
「あぁ、可哀想なルン。分かっているよ!
大人の話し合いをするから、ルンはお家で待っているんだよ?」
父の力強い言葉を背に家で待つ事1時間。
何故か顔を綻ばせている父と、やたらゲッソリしているナールさんが連れ立ってやってきて
「夏の3月中旬あたりに連れて行ってあげるよ。」
との言葉。思わず踊り出してしまいそうなほどの嬉しい気持ちになり
「ナールさんせきにんとってくれて ありがとう!ここからつれていってくれる日をたのしみにまってるね!」
その感情のまま言葉を出し、ちびっ子達に報告する為家を飛び出した。
「ナールさん•••?ここからルンを連れ去る気ではないですよね??」
父の凄んだ声で聞かれたナールさんは、首を激しく横に振りながらもまた恐怖を味わう事になったらしい。
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