9、宴会と子供の戦い
夏の2月が近づき、もう少しで研修生達が帰ってしまう。
その前にこの村での研修の頑張りを労う目的と、今後各々で目指すべく村の立て直しを応援する意味を込めて、宴会をしようとなった。
宿泊所の仕切りを外し、大広間にした場所で母や奥様達の手料理が盛大に振る舞われる。
これだけの人数になれば、1人1人に手渡すなんてめんど、大変だと思ったため大皿をテーブルに置いて各々で好きに取ってもらえば良い、と母に提案した。
「それは良いわね!それなら好きなだけ食べてもらう事もできるものね。」
そうとなれば、ちびっ子達で場所取りに走った。
料理は台所のある右側から出て来る。
そしてテーブルへ置くとするならメインは真ん中に置くはずだ!
「ルン、僕は裏をかいて端っこの方におくかもしれないって思うよ?」
確かに!これだけスタンバっていたら大人は意地悪してくるかもしれない!!
「じゃ、右と左と真ん中でみはるのはどう?」
「それなら他のも取れるかもしれないわね!」
簡単な作戦会議をして、それぞれで散っていった。
よし、いつでも来るのだ!これで色々な物が食べれるはずだ!!
今日の料理のメインは豚肉を柔らかく醤油と砂糖とお酒でじっくりコトコト煮た角煮。
漂う良い匂いと口に入れた時のホロホロと溶けるように崩れる角煮を想像し、涎が垂れそうになる。
そして始まった宴会で、大人達の話しなどまるっと聞かず母達の動向に注視していた。
そして、ついにその時が来た。
醤油と豚肉から溶け出た脂の美味しそうな匂いの他に、野菜やパン、スープと所狭しと置かれていく。
いざ、勝負の時!
「わたしのお肉ーー!くぅーっ!と、届かな、い!!」
思った通りメインは真ん中にあった。
ド真ん中に。
広いテーブルの真ん中••••
手が届かないのだ!
何たる事だ!手前にあるのは見る事も避けたいキャロをふんだんに使ったサラダ。
この配置、間違いなく母の所業だろう!
「おとーさん、お肉とってください!」
淑女たるものいつでも冷静に突発的な出来事にも対応しなければいけない。
こんな時は父に頼るに限る。
「どれだ?これと、これで•••あれもか?
ん?何だか全部お肉じゃないか??」
気のせいだ。
ホクホクで獲物を獲得した私は落ち着いて食べられるように、祠へと足を向けた。
それを伝えるべく他の子達に目を向けると
「それ!あとあれも取って!」
ライやリック、エリンは気まずさなど微塵も感じさせないほどに次々と食べ物を取ってもらっていた。それぞれの産みの親達に。
心の成長と今の親からもらう愛情のお陰かもしれないが、今思うのは
「みんな、くいしんぼうねー」
だった。
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