12、犯罪と切替と新たな動力
発表会後、珍しく王都に滞在していたナールさんが、険しい表情でこの村へと戻ってきた。
そして開口一番
「あなた方が飲んでいたお酒から、少量の薬物が出たそうです。
お酒自体もアルコールを極々薄めたもので、ほぼ水のようなもの。
それをお酒と思ってしまったのは、今までアルコールを飲んだ事がなかったので基準が分からなかったためと、その薬物で誤認していたためでしょう。
その薬物は摂取すると、酩酊感やそれに伴って現実と違う幻想を得られるが依存して生活が成り立たなくなっていくそうです。
恐らくは、菓子にも薬物が入っていたのだと思います。
乏しい村につけ込んだこう言った犯罪が色んな箇所から報告があり、あなた方もその被害者だと思います。」
その言葉は村全体を震撼させた。
国の被害者でもあるのに、それにつけ込んだ犯罪って•••!
どれだけ人を苦しめれば良いんだ!!
意志の強い人弱い人居るだろうが、最悪の環境下で意志を強く持っていられるほどの人なんてそんなに居るはずもない。
そんな心の弱味につけ込んで、手の届く金額で贅沢に浸れる物を見せられたらつい縋りたくなるかもしれない。
そのせいで道を踏み外した人達や犠牲になった人達がどれだけいる事だろうか。
そのやり方は、まるで弱者をいたぶるハイエナだ!
ナールさんも憤怒の表情で、絶対に許さない、と口に出し
「人に幸せを運ぶ事をモットーに商売をしていた私には、この所業は許されない事です。
被害の実情を国に訴えたところ、お金で解決出来る問題ではないのですが賠償金としていくらか支払ってくれるそうです。
国としてもこれだけの被害報告が上がっている以上見過ごすわけにはいかないはず。
これ以上の被害が出ないよう、きっと犯人を捕らえてくれる事でしょう。」
犯人を捕まえる事も大切だしお金がないよりはあった方が良いかもしれないが、お金があっても住みにくく責任者のいない環境は変わらない!
根本を見直ししろ!と訴えたいくらいだ。
そんな怒りの思いを抱いていた時、被害者の1人ビートさんが
「•••では、そのお金でこの村にあるような堆肥を作る機械は作れませんか?
私達には、あの土地しかありません。
ですが、ここで農業を教わり少し未来が開けた気がするのです。
その為にも、土を何とかしたいと•••
どうでしょうか?お願い出来ないでしょうか?」
そう言って、ビートさん始め他の5人も頭を下げお願いしてきた。
いつの間にやら巻き込まれていた被害者ではあるも、その事よりも前へ進もうとする気持ちの切り替えの早さ。
それはここで研修して自身に自信がついた表れなのか、素直にすごいと思った。
だが、ここの堆肥処理機はダムの水力を使用している。初めてダムを見学した時に水力に驚いていたほどなので、恐らく彼らの村近くには水力となるほどの水がないだろう。
どうにか出来ないものか•••
その時、自分の頬を撫でるような風が当たった。
「かぜ••••、ふうりょく!!
ナールさん、かぜのちからでうごかすものつくればいいんだよ!!」
そうだよ!記憶の中で風車など風力を使っているものがあったではないか!
ナールさんや父、バーガーさんにどういった仕組みになっているかを説明していった。
木々に邪魔されない環境である事前提だが、ナールさん曰く遮断されたとは物理的にもだそうで、彼らの村近くには切り立った崖があるためそこを通り抜ける風が強いとの事。
それなら尚更風力には丁度良いではないか!
立派な風車は無理なので、塔風車のようなものを思い描いての説明で伝わりはした。
が、どう作るかとなった時、私には計図など分からないので父やバーガーさんに任せてひっそり離脱。
設計図を基にミニチュア版の風車作りを大人達が頑張っている横で、桶に水を張りミニチュア版の風車を置いて水あげ遊びに興じていた子供達。
そしてそれに混ざりつつも心で謝罪している私と言う構図が出来上がった。
普段の仕事をこなしながらの風車作り、絶対にクタクタになるだろうと子供達で話し合った結果
「おとーさん、ここすわって!私がせなかながすね!!」
今だけは混浴風呂解禁し入浴介助よろしく、甲斐甲斐しく父達のお世話をする事にした。
父達はデレデレになりながらも子供達にお世話され、至福の時を過ごしては明日への活力にしてもらった。
世の中優しいだけではない。
人にはそれぞれ苦楽の人生がある。
だが、それにつけ込み儲けようとするのはどうなのだろう!?
沸々と沸き上がる怒りとそんな輩に負けたくない思いで、"打倒!ハイエナ!!"が合言葉になった。
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第10章完結しました。




