11、新たな一歩
発表会は好評で、発表会後は最初に考えた思惑通り皆んなが皆んなやる気に溢れていた。
やはり成果が分かると自分のモチベーションも上がると言うものだろう。
かく言う私も、石鹸が出来たお陰で毎日のお風呂が楽しみで仕方がないのだ。
今日も1日の終わりに宿泊所にて石鹸片手にお風呂へと向かっていると、リックに会った。
「リックー!おふろ?いっしょにはいろー!」
「あー、ルンちゃん、エリンちゃんやメルちゃんなら良いけど、そろそろ一緒は止めておこうか?」
普段なら誰も止めないのに、何故か止められてしまった。
何故だ?小首を傾げていると
「どうして?いつも一緒に入ってたのに。」
リックも分からないと、小首を傾げて理由を聞くべくダル兄を見つめていた。
「母さん、お願い•••」
ダル兄には珍しく、困った顔して母に頼んでいた。
「うー•••ん、ルンちゃんこの前6歳になったでしょ?
女の子としてまた一歩成長したから•••
その、そろそろ•••ね。」
何だ?6歳の立派な淑女には何か儀式でもあるのだろうか??
「そういや、6歳おめでとー!僕は夏の1月だからそれまで同い年だねー!」
「ありがとー!あっ、そうだあしたーー」
母や兄の説明を聞き流し、リックと共にお風呂に入っていった。
「母さん•••、ルンちゃんには男女の違いはまだ早いのかもしれないね。
と言うか、リックやライもだろうけど。」
「はぁ、父さんがまた悩んでしまうわねー••」
その後お風呂から出てきた私やリックを前に父が驚愕の表情で
「ルンちゃんは女の子なんだから、お父さんと一緒じゃないといけません!」
冷静に聞くと変態紛いの言葉をはいた父にややドン引きして、これからは別々に入ろうと心に決めた。
次の日皆んなよりも早く祠に来ていた私は、エリン達の産みの親達に遭遇した。
「この村に来れて本当に良かった。
あの時に引き止めてくれて、ありがとう。」
勢いというのもあるが、あの時の事を思うと少々恥ずかしく思いながらもずっと聞きたいと思っていた事を聞いた。
「なんで、なまえないの?」
エリン達も名前がなかったが、それ以前にこの人達にも名前がなかったのだ。
それを知った時の衝撃は忘れられるものではない。
個として存在していないと同様なのだから。
「私たちの村は本当に何もなくて、いつ命を落とすとも分からないほどなの。
だからいつしか、親は悲しみが少しでも減るようにと名前自体を付けなくなったのよ。」
東の実情が、想像を絶するほど酷いものだと改めて思い至った。
「じぶんをたいせつにするためにも、なまえはひつよう!
このむらで、みんなにつけてもらう!」
吹けば消えてしまう灯火のように、自分達の村へと戻ったら彼らが消えてしまう気がした。
また考える前に声に出してしまったけど、目の前にいるのに存在しない人がいるなんて考えただけでも耐えられなかったのだ。
「それは良い案ね!私たちも考えるわ!」
その時、祠の入り口からエリン達の声が聞こえ目を向けると、ちびっ子4人の他にバクさんやカリーさん、ケインさんの姿があった。
丁度それぞれの研修生を迎えに来ていたようで、話が聞こえたらしい。
粘土板片手にそれぞれが名前の候補を考えていった。
結果、エリンの産みの母親はエマ、父親はコウ。
リックの産みの母親はリリー、父親はキース。
ライの産みの母親はラン、父親はビートと名付けられた。
それぞれが初めての自身の名前に感動し、自分の名前を呟いては嬉しそうに笑っていた。
今日この人達は生まれ変わったのだ。
個を持つ存在として。
新たな一歩を踏み出すこの人達を皆んなでお祝いした。
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