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第4脱 女の子は強い

「ほえー……」


 裸の彼女は砂浜に降り、輸送艦から次々と人や装甲車が吐き出される様を体育座りで見学していた。


 チラチラと視線を向けられるが、彼女は特に気にしていないし兵士も命令無しには動かないのでこれといったことも無く軍の展開が進んでいく。


 しかし全ての兵士が砂浜に整列したところで、一台の装甲車が機関砲を彼女に向ける。


(……んん? あれ待ってこっち向いてない?)


 気づいた彼女は驚いて立ち上がり、自分が敵でないことを伝えようとにこやかに手を振った。


 あと、なぜかセクシーポーズを決めてみたりもする。


 そのせいで砂浜に並ぶ男達の何人かが股間にテントを張ったが、装甲車はそうならないのであまり意味があるとは……。


 いや一台だけ嬉しそうに砲身を高々と空に向けている。凄い嬉しそうだ。クルクル砲塔を回している。お前の息子は物騒だな。


 物騒だがぶっとくは無いのがたまにキズ。なあに弾はいくらでもあるし速射できると。それはつまり早漏と言ったら怒られそうなのでやめておこう。


 しかし彼女の努力も虚しいかな、砲口を向けている装甲車には効果がない所か、指揮艦の中では「やはり菌に感染した人間だ撃ち殺せ」という命令を招いていた。


 命令を受けた装甲車の射手は発射ボタンを押し込む。砲弾が彼女へ向かって飛んでいく。


 ああ哀れ彼女の人生はここで終わりなのだ。最期はすっぽんぽんのまま砂浜に見るも耐えない……いや蒸発し見るものも無く散るのだ。


 それは流石に彼女も嫌だったのか、すっ飛んできた砲弾を見た瞬間咄嗟に手を出す。


 そんな事をして何になろうか。


「すっぽん!」


 哀れ彼女は……砲弾を裸にひん剥いてバラバラに……部品だけになった砲弾は彼女を飛び越え砂浜に落ちて……さては人間じゃねーなお前?


「あっぶなー……ちょっとぉ! か弱い女の子に何するのよー!」


 何するのよ、はこっちのセリフである。今何した、何したんだお前マジで。


 その場にいる全員が人技とは思えない神業に口をあんぐりと開け「か弱い女の子」を見つめた。





 一方こちらは指揮艦を務める「ユージャオ」の中。こちらもまた士官や研究員が送られてくる映像を見て唖然としている。


 しかしこちらは現場の兵士とは違った意見が出ていた。


「す……素晴らしい!」


 一人の研究員が叫ぶ。


「あれを見ましたか! 人の力ではありません! 菌による突然変異体です! 元々この『強迫裸露的真菌』に感染した人間は身体能力の向上が確認されていましたが、これほどの逸材が現れるとは! これを我が軍に応用すれば小日本など言うまでもなく、美国(アメリカ)も敵ではございません! 兵士が自発的に裸になってしまうのが難点ですが」


 興奮した研究員はメリットをまくし立てる。それに頷く海軍士官。


「くく、そうだな……よし、あれを捕えることとしよう。少々手こずりそうではあるが、我が軍の兵が死ぬ事は無いだろう。やれ。なに、殺さなければ良い」


 そう言って士官はゲラゲラと意地汚く笑った。





 命令を下された兵士が動き始める。「殺さなければ何をしても良い」という命令に戸惑う者もいたが、ほとんどは内容を理解しニタニタと笑いながら近づいてきた。


 砲弾は効かなかったが、人海戦術で掴みかかれば流石に逃げられまいと。


 彼女がなんと言って攻撃を退けたのか分からなかったのが、彼らの可哀想な所である。


 彼女は大挙して押し寄せてくる人の波にビビりまくりその場から動けないでいる。よもやこいつ本気で自分の力に気づいてないのか。


 恐れない中国兵も兵だ。少しくらい不味い事に気づいて欲しい。


 手が伸びる。肩に触れる。涙を目に浮かべる裸女に欲求不満の男達が群がる。


 ゾッとする光景が目の前に広がった時、彼女はあの言葉を叫ぶ!


「すっぽん! 桜舞広原!」


 秘技! 桜舞広原が炸裂! 哀れ兵士達の服は爆散! イヤー!


 砂浜には散り散りになった戦闘服が桜のように舞散り、一瞬でひん剥かれた男達は恥ずかしさのあまり局部を隠して逃げ惑う。


「なっ、な、馬鹿な! 今のはなんだ!」


 海軍士官は多数の兵士が退く姿を見て困惑の声を上げた。


「分かりません! 何としてでも捕まえて検査を!」


 研究員は圧倒的な強さを見せつける彼女に大興奮だ。彼の股間の盛り上がりが気のせいであることを祈る。


「ぬうう! 装甲車だ! 装甲車なら勝てる!」


 本当に生け捕りにする気があるのか怪しくなってきたが、一応殺さないという命令は有効だ。


 怒気を孕んだ士官の命令に、ついに装甲車が動き出す。怒気を孕むとは別にそういう意味ではな……いやお前もかい。


 怒りながら怒るとは器用な事をする。


 男達の劣情はどうでもいいとして、とにかくついに装甲車が彼女を仕留めようと動き始めたのだった。

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