第2脱 「彼女」
ここに一人の女がいる。日に焼けた褐色の身体に巨乳。白いワンピースを着て電車に乗りどこかへ向かっていた。
しかし彼女は突如としてすっぽんぽん菌(仮名)に脳を侵され、自分から服を脱ぐと電車内の人間を次々に脱がせていった。
電車が駅に着くとパニックになった乗客は一斉に逃げ出す。しかし彼女はそれを追いかけ、あの手この手で素早く脱がせていったのだった。
そうして人を追いかけ数十キロ。正気を取り戻した時には、波が押し寄せては退く浜辺にいた。
「ここは……ていうか私なんで裸になってるの……?」
正気を取り戻した事で、彼女は自分が裸であることに疑問を持つ。
しかし貞操概念までは戻っていないのか、顔を少し赤らめただけでどこを隠すことも無く、仁王立ちで海を見つめていた。
そのうち、ポツポツと記憶が蘇ってくる。
(……あー、悪いことしたなあ……)
菌に感染して服を脱ぎ捨てると、まずは手近な会社員のスーツを「すっぽん!」という掛け声と共に破り去る。
ボタンなど弾き飛ばし、上着を。
左手でベルトの端を押して引っ張るための歪みを作ると、右手で引っ張り金具を取り外す。
最後はズボンとパンツを下に思い切り下げて全裸調理完了。哀れメガネをかけ、スマホを弄っていた会社員の男は素っ裸にされてしまったのである。
いきなり痴漢もいい所な凄技で自分の身体を晒すことになった彼はうずくまり、違うんだ俺じゃないなどと泣きながら意味不明な供述を繰り返した。
だがすぐに、俺じゃない、ではなくコレジャナイと呟きながら別のオッサンの服を脱がせにかかっていた。これまた意味不明である。
彼女は最初の犠牲者を思い出し、一人苦笑いする。
「あの人嫌がってたなあ……ごめん……まーでもいっかあ。ネクタイは外さなかったから片乳首は隠せるでしょ」
何も良くない。今頃、メガネをかけたクールな会社員風の男はネクタイ一本を息子と同じくブラブラさせ右乳首、左乳首、右乳首、左乳首、右乳首…と交互に隠しながら人を襲い続けているだろう。
豚小屋よりコンクリート詰めにして東京湾辺りにでも叩き込んだ方が正解なド変態である。
(後はー……)
スーツ姿の男性を脱がせた後は、女性を。
まずおっぱいを揉みしだいた。服を脱がせるのとは何ら関係ないが、とにかく大きい乳だったので使命感にかられ揉みしだいた。
そして上着を「すっぽん!」の掛け声と共に脱がせる。屈伸の要領でスカートも。ブラジャーは素早くホックを外し、パンティーは奪い去る。
その間僅か1秒。目にも止まらぬ速さで高速脱衣を終えた彼女は、金切り声を上げる女性を置いて別の車両へ走ったのだった。
(あの人も嫌がってたなあ……でもそんなに嫌がることかなあ)
嫌がることである。
(でも、ブラジャーは返してあげたからいいかな……真っ赤で綺麗だったから帽子代わりに巻いてあげちゃった)
それは勝負下着という。
そう、脱がされた女性は今頃勝負下着を不出来なターバンのように頭に巻き付け、振り乱しながら人を襲っているだろう。
片乳首エリート共々日本海に蹴落とした方がいいのではないだろうか。
しかし我々は忘れてはならない。一番悪いのは砂浜で腰に手を当て、堂々とすっぽんぽんで日本海を見つめるこの女であることを。
「……あっ、そうだ」
彼女は何を思い出したのか、おもむろに近くの草むらへ入る。それから一分ほどしてから出てきた。
「これで良し!」
葉っぱを局部に張り付けて。
いや何が、良し! なのかさっぱり分からないが、幸いにもレーティング問題はこれで解決しそうだ。してくれ。
分かってしまった人は少し頭を冷やすことをお勧めする。
彼女はやり切った笑顔を、キラキラ光る日本海に向けた。




