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隙間女

隙間女、という都市伝説があるそうだ。

何だそれと思い大学の講義中セフレに聞いたところによると、そのまんま『隙間にいる女』なんだとか。ぶっちゃけ、改めて何だそれと思ったね。だってそんなにおかしな話ではない。

確かにはなしの流れ的には怖いものもある。一人暮らしを始め、視線を感じると思ったら隙間に人がいたというのだ。けどこの怖さは超常的なものに対するそれではなくて、ストーカーとか、そう言うものへの恐怖ではなかろうか。いつの間に侵入してるんだ、という。

そんな思考もあって、聞いた日の夜にはうっすらとした記憶に、セフレとすることをした後、午前三時頃にはもうほとんど忘れていた。ん?忘れてたなら何でこんなに語れるのかって?そりゃオマエ、思い出すだけの何かがあったからにきまってんだろ。んで、それが何かっつーとだな……


「まさか、マジで超常的なモンだとはな」

「そのぉ……私的には、あなたの方が常識外でして、ですね……」

「そんなことより、酒飲む?それともああいうこと、する?」

「しっ、しません!お酒はちょっと魅力的ですけど、万が一を考えると飲めません!」

「あ、都市伝説でも酒に酔えるんだ。……あと、お互いに同意してねー限り手は出さないって」

「セ……あんな不純なお知り合いのいる方の言うことに説得力があるとでも!?」

「ははっ、そらそーだ」


今ジャーキーをつまみに酒を飲む俺の前。テーブルを挟んだ反対側の箪笥と壁の隙間にいるのが隙間女で、間違いなく超常的存在だったからだ。

しかしそれはそれとして、ベクトルは違うけどそそるなぁ。




 ▽




「ねぇ……この部屋、だれかいたりする?」

「ん?」


恋人でもない相手とそういうことをする。そんな関係にあるものが夜同じ部屋にいれば何をするかはわかりきっており。そう言うことを終えたあとに彼女がそんなことを言い出した。


「誰かって、いないいいない。いたら今日お前呼んでねーって」

「そうよねぇ……でもなんだか、やたら視線を感じるような……」

「外から……ってわけはないか。カーテン閉めてるし、ここ八階だし」


しかしまあ、何とも不思議なことを言うものだ。とはいえ、彼氏彼女でもないんだからそんな変なことを言う必要性はないわけで、となれば何かいる……?

そらねーわ。


「やっぱ気のせいじゃね?」

「うーん……それもそうね。それに、ちょっと疑似的にそう言う興奮もできるし、ありかも」

「わはは、この変態め」

「お互いさまでしょう?さ、あと一回くらいできるでしょ?」


そう言われれば是非もない。普段とはちょっと違う表情の相手を抱いて、中身を飲んでもらったゴムをゴミ袋に放り込んでから互いに服を着る。


「んー、やっぱいいわ。馴れてる相手とした方がよっぽど」

「おや、その言い方は最近誰かと?」

「彼氏よ彼氏。初物で結構好みの顔だったから付き合ってるんだけど、そっちの技術がねぇ」

「おーう、ちょいまち。その彼氏さんに知られたら俺マズくない?」

「大丈夫よ、そんなへまはしないから」


うーむ……まあ、実際彼氏がいない期間の方がなかったような奴だし、これまでにも何もなかった。初物だという彼氏くんがどこまで暴走するのかは怖いものがなくはないけど、しかしまあ、うん。いけるか。


「女ってコエー」

「そんな女と関係持ってるアンタも相当よ。アタシだけじゃないんでしょ?」

「ん?どしたの?ついに3ピ」

「それはない。他の女と一物奪い合いなんて冗談じゃないわ」


この気の強いのに勝てるとなると、そう選択肢はないんだけどなぁ……むしろちょっと初心な子と一緒にやって反応を見てみたい。そういう組み合わせが合うやつな気がする。


「それじゃ、アタシは行くわね。また明日の講義で」

「ういうい、また明日―。課題とかなかったよね?」

「あの教授は課題もテストもなし。出席してれば単位だって教えてくれたのは誰だったかしら?」

「あ、そういやそうだった」


入学二日目でゲットした先輩から聞いた情報をそのまま流したのだけれど、すっかり忘れていた。そんなに真面目な大学生をするつもりもないし。


「んじゃま、今度こそまた明日……ってか今日か」

「それもそうね。それじゃ、また後で」


玄関で一つキスだけして、そのまま見送る。家まで送るつもりもないのでそのまま部屋に戻り、そのまま寝るつもりにもなれなかったのでウヰスキーとジャーキーを取り出してテーブルにおき、割って飲み始める。大概の酒は飲めるからとテキトーに買ってきたモノなんだけど、結構正解だったかもしれない。


「にしても、変な視線がある、なぁ……」


終わってから考えれば、やっぱり変なことだよなぁ、あれって。何をもってそんなことを言ったんだろうか。

と、そう考えたときに一つ思い出した。そう言えば何か、視線を感じるとかそんな感じの怪談話を聞いたことがあったような……


「ああ、そうだ。なんか隣の部屋から覗いてる、ってやつだ」


壁に穴があって、そこから女が覗いてるてやつ。んで、ソイツの目が赤いもんだから隣の部屋が赤いんだって勘違いしてそのままにしてしまうとか、なんかそんなんだったような気がする。たぶん。


「って、それはねえか。両隣含めて借りてっし、鍵だってあるし」


まあ、うん。ちょっち言いにくいことなんだけど、昔宝くじで大当たりして金はある。だから、女を連れ込んでしっぽりやって、それで隣に文句を言われないようにって贅沢に金を使ってみたのだ。親からはあんまりいい顔されなかったけど、まあ自分の金ってことで許してほしい。

というわけで、それはない。うーむ、しかしだからといって何があったものか。というかそもそもそう言ったあれこれは作りものだから面白いのであって、実話だったなんてことになったらとても笑うことはできない。そもそも壁に穴が開いてるのをそのままにするとかどうかと思うし、新たに開けたんだとしたらその時のクズとかで何かしら違和感を感じるものだろう、と。

さて、となれば何だろうか。監視カメラか何かが仕込まれていたとしてもそんなものの視線に気付くなんてそれはもはや人間ではない。はてとなれば何だろう。鮭が入ったおかげか、こういうことを考えるのがちょっと楽しくなってきた。


「例えば……宙づり?」


上の階からロープかなんかで宙づりになって覗いているとしたらどうだろうか。そこまでして覗きたいのかとは思うし、そもそも噂になる。大家辺りに下手をすれば追い出されるんじゃなかろうか。まあ、それくらい常識のない行動をするのも大学生の強みではあるから、ありえなくはないんだろうけど。


「そんな面白いやつなら話してみたいもんだ」


大学生活はまだ始まって一年もたっていない。そんな長い生活の中で考えるのならば一人くらいぶっ飛んで面白いやつと知り合いになってもいいのかもしれないなぁ、とかそんなふざけたことを考えて、一口飲む。うん、やっぱりうまい。


「さて、そろそろこんなバカげた遊びは止めて……AVでも見るか」


あれはあれ、これはこれ。また別の楽しみがあるのだから仕方ないとばかりに最近借りてきたブツでも見ようかな、と。そう考えつつ呟いたところ……ゴト、と。なんか物音がした。


「……え、まさかマジで何かいる?」


一気に、体から酒が抜けたような感覚。一人暮らしのこの部屋に何かいるとしたらそれは間違いなく不審者で、それに気付いてしまってから一体どうなるかというのは、まあおおよそ考えるまでもない。はてどうしたものか、と音のした方を見る。そちらには、服なんかを入れている箪笥が。前に掃除をした時に少しずらしたから壁との間に隙間がある、茶色の、普通の箪笥。


「……え、箪笥?」


全く人が隠れられる要素がない。棚ごとだから中に入っていることはできないし、そもそも毎日開けている。ついさっきも下着を取り出すために開けたばかりだ。そんな場所に何かいるだなんて、そんなはずは……


「えーっと、なんか棒状のものは……」


刃物はちょっと怖かったのでちょうどよいちょっと硬めの棒を取って、それを片手に横へ回る。中にいる可能性はないのだから、もしいる可能性があるとしたら壁との間の隙間である。しかし厚さ的に人間がいられるわけはない。となればまあ、なんかネズミとかGとかそんなんがいるんだろう、ということでまずは隙間から追い出せるように、そしてその後部屋から追い出せるように棒を手に取って窓を開けてから近づいていって、覗き込み。


「……えっと、どちらさん?」

「あ、えーっと、そのー……隙間女、って言います」


なんか、見た目16くらいの可愛い女の子がいた。


「……チラ」

「なんでスカートまくりあげるんですかぁ!」


ピンクだった。




 ▽




「実在するんだねぇ、隙間女って」

「まあ、ハイ……そうですね……知り合いだとメリーさんの電話とか、トイレの花子さんとか、地縛霊さんとかもいますね」

「おー、俺でも知ってるのが二つくらい」

「普通にいるんですよね、都市伝説って」


と、見つけてしまったのでだったら話を聞こう、と。本人が隙間だって判断できるギリギリのところまで箪笥を引っ張り出して、テーブルも彼女の正面に来るように移動させて酒を飲みながら話を聞いていたところだ。


「信じるん……ですね?」

「と、言うと?」

「いえ、その。さっきなんだか不審者がどうとか言ってたような気がしてたので……」


あれ、口に出してたか。自分しか部屋にいないからって気が抜けてたかな。


「まあそれはそうなんだけど、ちょっと超常的なもの見せてもらったし、実際目の前のそれだってその類だし。見ちゃったら信じるしかないかなぁ、と」

「そんな感じでいいんでしょうか……」


隙間から隙間へ一秒もなく移動する、なんてものも見せられたし、今目の前でだって人がたってもギリギリの隙間しかないのに、俺の方に正対して正座で座っている。なんか箪笥と壁がポワーっと光ってすり抜けているのだ。隙間の中に異空間。胸のおっきな彼女でも入れる不思議スペース。

……そそるなぁ。


「なんだか目線が怖いです!」

「だから大丈夫だって、手は出さないから」

「そうだとしても!そうだとしてもなんです!さっきだって彼女さんとその……してたのにエッチなビデオみるとか!私のパンツもみて!」

「だから彼女じゃないって。セフレだって」

「もっと不純です!あとその単語を口に出したくなかったんです!!」


そんなことを言われましても……


「十ちょっといるよ?」

「どうしようもないド変態です!」


あははー、スゲー言われちゃった。


「うぅ……これまで色んな部屋にいったことがありますけど、こんな人初めてですよ……」

「あ、色んな部屋に行ってるんだ」

「はい。そういう都市伝説ですから。さっき上げた都市伝説さん達ともそうやっていった先で知り合ったんですよ」


なるほど、そういう都市伝説同士のつながりみたいなものはあるわけだ。


「……ねえ、その中にヤラせてくれそうなことか」

「いませんけど!?」

「いやいやそんなはずないって。十人十色、中には絶対にいるから。都市伝説とセ○クスとかなんか面白そうじゃん」

「だからそんな単語をしれっといわないで下さいよ!?」

「おー、赤くなってる。可愛い可愛い」

「貴方みたいな人に言われても説得力皆無なんですけど!?・・・あ、私隙間から出たら死んじゃいますからね!?」

「それはヤバイな」


いや、元から無理矢理やるつもりとかないけどさ。


「……あ、一人いました」

「あ、やっぱいるの?どんな子どんな子?」

「ルージュの伝言、っていうんですけど……えっと、オチとして洗面所の鏡に「エイズの世界へようこそ!」って書いてありますけど」

「それはマジ勘弁で」


シャレにならないどころじゃないじゃないのよ。




 ▽




「はう……ついにやってしまいました……」

「あははー、でも気持ちよかったっしょ?ほらオレ、馴れてるし」

「あ、はい。それはもう初めてなのに……ってだからそう言うところですよ!?」

「なははははー」


お互い生まれたままの姿で布団に入りながら、行為の余韻を感じつつそんな話をする。


「というか、今更だけどさ。出てこれてるんじゃん」

「あー、はい。……まあ、予防線のためについた嘘でしたしね……あの嘘で一年半持つとは思ってなかったですけど」

「さすがに死ぬって言われちゃうと、そう言うものなのかなぁって思うからねー。深刻なことだとどうしても」


あと、都市伝説だからこっちの常識が通用しない、って言うのもあったのかもしれない。


「あぁ、これで私もそう言う不潔な知り合いの一人に……今後もこういうことを、不順に行うだなんて……」

「とか言いつつ……ほら……ここがいいんじゃないの?」

「あ、ちょ、まだ余韻が抜けてなくて……ちょ、ま」


といわれたので胸と下半身に伸ばしていた手を引っ込めた。ちょっと真面目な話もしたかったし。


「まあこんなことをした後にいっても説得力ないかもだけどさ、一個いい?」

「?……なんでしょう?」

「俺の彼女になってよ」

「ちょ!?」


あ、真っ赤になった。


「え、えっと、それはその、でもでも、あぁ……」

「まあ返事はまだまだ先でもいいし、そんなに気にしないでよ。それよりも……」


と、再び手を胸と下半身へ送り、今度はちょっとマジなほうで手を動かしていく。


「え、あ、ちょっと!?」

「いやー、また元気になっちゃったからさ。もう何回か、よろしくしたいなぁ、って」

「いや、ちょ、ですから!」


何か言っているがまあ元々了承は取ってあるし、向こうもこっちの下半身に手を伸ばしてきたのでそのまま続ける。左胸の先端を口に含みつつ覆いかぶさって、


「そう言うところがあるから、返事を悩むんですってば―!」


それから、お互いにノリノリだった。


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