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口裂け女

口裂け女という都市伝説はかなり有名なんじゃないかと個人的には思う。なんせ、その噂だけで社会問題になるわ集団下校が行われるわで大騒ぎになったのだから、相当である。故に、そう細かく説明する必要もないだろう。


でっかいマスクをつけた綺麗な人に「ねえ、わたし綺麗?」と聞かれる。

無意識に「綺麗です……」と答える。

「これでも……綺麗?」と、マスクを外して問われる。

なんとびっくり、耳元まで裂けているではありませんか!


はい、以上おしまい。弱点だとかなんだとか、殺されるとかどうとかまあ色々なあれこれはあるんだけど、それはいったん置いておこう。というか有名ゆえにバリエーションが多いから興味があったら自分で調べてみてほしい。

まあそんな例として自分でも調べてみたのだが、まあ結構怖い話だと思った。そもそも、耳まで口が裂けているというのはそれだけで視覚的恐怖が強い。どわっひゃー!ってなる。しかもそれが追いかけてくるとか包丁持ってて殺しにかかってくるとか、怖い要素しかないレベルだ。小学生ならそれはそれは恐怖するだろうし、集団下校にもなるだろう。リアルで起こる可能性も何となくありそうなところとか、当時なら大人も怖がったんじゃないだろうか。

しかし。しかし、だ。俺は今日、そんな要素は大したことないと明言したい。そこまで大きな要素ではないと、ここに断言しよう。なんでって?そんなもの、決まっている。


「えっと、もう一回聞くよ?ほら、わたし、これでも綺麗?」

「超綺麗です。興奮しすぎて前かがみになりそう」

「……ホント、何なのこの子……」


それくらいなんでもないくらい、俺好みなのだから。




 ▽




はっきりと言っておくと、俺は自他ともに認める足フェチ兼髪フェチだ。もちろん性格面は重要なのだが、見た目の点ではその2つ以上に重要視しているものが存在しない。そんな点もあり、彼女の見た目情報で頭に入っているのは一切癖がなく腰まで伸びる黒髪に、スカートから覗きソックスによってぷにっとなっている肉付きのよい足の2つだけであったのだ。故に、これ以上のことをしっかりと見ていない。というかスカーフェイスがどうしたというのだそんなものよりも靴下を脱いでいく様子を見たいのだ。


「というわけなんだけど分かっていただけました?」

「君がどうしようもない変態だってことだけはよーくわかったよ」


ところ変わってファミレスにて。裂けた口を見せてもなんとも思われなかったことが信じられなかったのか無茶苦茶質問攻めになってしまったので場所を変えさせてもらった。だってずっと道端ってのもねぇ。


「はぁ……それにしても、本当に変な子を標的にしちゃったんだなぁ、わたし」

「変なことは失礼な。それだけ綺麗なものを見せられたら当然の反応じゃないですか?」

「当然じゃないよ。綺麗ってのはうれしいけど、そこからのでっかい傷がより恐怖を増すものになるはずなんだから」


そんなことを言われましても……


「うーん……例えば、ですよ」

「うん?え、何に対するたとえ話?」

「まあ聞いてください。例えば、何の変哲もない道があったとします」

「はぁ……」


なんだか釈然としない様子ではあるけれど、まあ聞いてくれるっぽいので続けることにする。


「それで、視界に入る位置に何か妙に嫌な気分になるものがあったとしたら、そっちに目が行きますよね?」

「まあ、うん。当然よね。というか私のがそれよね」

「いえいえ、あなたのはそっちじゃないですって」


まったく、何を言ってるんだか。そっちのたとえはこれからだというのに。


「では次に、その道の先には綺麗にライトアップされた東京タワーなりスカイツリーなりがあるとします」

「……は、はぁ」

「それはもう綺麗です。この上なく綺麗でロマンチックです。……では、他のものが視界に入りますか?」

「……え、それがさっきのだって言おうとしてる?」

「まさにその通りですが」

「……筋金入りだね、君」


どうやら何とか納得してくれたご様子である。すっごく感覚的な説明だから納得してくれたのはとても助かる。

そしてマスクしたままどうやって飲むんだろうと思ってたけど、マスクの下側からストローを入れて飲んでいる。なるほど、これならマスクを外さずに飲むことが出来るわけか。


「まあそう言うわけでした。ということで髪と足を見せてくださいお願いします」

「頭を下げないの。せっかくこっちが納得したところで唐突に何を言うのかなこの子は」

「なんのために俺がここまで説明をしたと!?」

「説明されて納得したら見せてくれるとでも思ってたの!?」

「むしろ見せてくれないんですか!?こんなに必死に頼み込んでるのに!?」

「むしろなんで見せると思ったのさ!」


な、なんてことだ……こんなことがあっていいのか……!?


「なんでこの世の終わりかのような表情をしてるのさ」

「この世の終わりだからです……」

「終わってない終わってない」


と、さっきので飲み終わったのか裂け子さんのグラスが空になっていることに気付いた。マズい、このままではこれ以上の交渉の余地なくさよならになってしまう。何か、何か……!


「あ、ケーキとか食べません?」

「私この口だから外で食べるのは難しいかな」


はい、詰んだ。


「さて、それでは真面目な話に入りますが」

「ずっと真面目だったのですが」

「真面目な話に入りますが」


しれっと流されてしまった。


「まあこれだけ呆れさせられたのも何かの縁だし、1つ警告をしてあげよう」

「警告?」

「うん、都市伝説には気を付けて」


都市伝説……?


「裂け子さんみたいな?」

「まって裂け子さんって誰のこともしかして私のことを指してたりしないよね?」


そう言えば口に出したのは今が初かもしれない。


「ま、まあいいか……うん、私を含めて。口裂け女もそうだけど、基本的に殺す系だから。死にたくなければそう言うものには近づかない方だいいよ」


何ともシリアスな様子なのでしっかり聞くことにする。それと一緒に、疑問に思ったことも聞いておく。


「それにしては学校のトイレとか色々行くけど出会ったの今日が初だよ?」

「まあそれはそうだよ、そうそう出てくるほど暇じゃないもん」


暇とかそういう問題だったのか。そんな趣味くらいの感覚で殺人が実行されてしまうのか。ちょっとびっくりである。


「けどまあ、出ては来るからね。それこそひょいっと」

「ひょいっと」

「ついでに一回でも出会ったってことがばれると『あ、この人行けるんじゃん』ってことで寄ってきたりもするからね」

「なんてこった」


つまり今後の俺は結構大変な立場になってしまうということなのか。


「一応それなりに顔は効くから言っておいてあげるけど、自分から飛び込んだ場合はさすがに知らないよ?」

「あ、顔効くんですね」

「そこそこね~」


意外とすごい人だった、裂け子さん。さすがは口裂け女。綺麗な髪と足をしてるだけはあるね!


「今君絶対全く関係ないこと考えてたでしょ」

「いえいえそんなことはありませんよ」


流石裂け子さん、綺麗な以下略。


「そう言うわけだからね、ここまでにしておきなさい」


と、そう言い残して律儀にもお金を置いていく裂け子さん。さて、と……


「どうしたもんかなぁ……」


色々と話は聞いた。たぶん呆れが大きすぎて途中からもうとっとと話して帰ってしまおうとか考えてたんだろうってくらいに話が変わってたけど、マジなんだろうなぁ、とは思う。思うのだ。だから、自分の中での考えと合わせて色々と、しっかりと考えなければならないだろう。


「さて、どうしたもんかなぁ……」



で、次の日。


「まあそんなことよりも結局足見せてもらってないし髪にも触ってないことに気が付きました」

「ねえ君、絶対周りの人からも変態って言われてるでしょ?」


何でばれた!?




 ▽




「長いこと口裂け女してきたけど、ここまでしつこい子は初めてだよ……」

「そう思うんだったら一回くらい見せてくれたり触らせてくれたりハスハスさせてくれたりしてもいいんじゃないですかね?」

「その理論が一回でも通じたことがあるのかな?」

「あるわけないじゃないですか何言ってるんですか」

「あれ、私がおかしいのかなこれ……」


あれから数年が過ぎ高校も卒業しようという時期にまでなったのだが、いまだに足を間近で見ることも髪に触れることも叶っていない。ただ一つ高校生活に後悔があるとすればそれだろう。


「いいのか、君の高校生活はそんなで……」

「いいんですよ。生徒会長として頼られ主席卒業。生涯付き合いが続くと断言してもいい友人もできたんです」

「変態がなんでそうなった……ッ!?」


一長一短。人間そんなものではなかろうか。無い?ですよね知ってました。


「というわけで卒業祝いに足と髪を」

「何がどうというわけでなのさ」


伸ばした手をしっかりとはたかれた。何かにつけて遭遇してこの言葉を発する俺に、裂け子さんは裂け子さんで必ずこう対応してくる。もう慣れたこのやり取りであるのだが……


「まあ、うん。残念ですけどもう諦めるしかないですね」

「あらら、そうなの」

「はい、そうなんです。大学の関係でちょっと……」


続けて口に出した大学の名前は、はっきり言ってしまえば日本で最もレベルの高い大学の名前である。ぶっちゃけ、まず間違いなく受からないだろうし滑り止めの県内大学って思ってたんだけど、何の因果か受かってしまったのだ。


「……え、マジ?マジでそこに受かったの?」

「受かってしまったのですよ、正直夢だと思った」


もう本当に、うん。学校がうるさいから受けただけなのに予定外にもほどがある。


「ほへー……マジで君、変態でさえなければ完璧なのにね」

「変態ではないのです。髪フェチ兼足フェチなのです」

「定義がどうなのかは知らないけど、一般的には変態といわれるんじゃないかなそれは?」

「そんなばーかな」


よく言われるけども、そんなことはないと信じたい。


「と、言うわけで。これならどうだ」

「や、うん。君はこんなことの交渉材料にそれをつきだしてこないでくれないかな……」


ぶっちゃけ足と髪の前には些事でしかないと思うんだよね。


「うーん……うん、やっぱなしで」

「なしですか」

「なしですよ。というか普通なしだよねって言う」


うーむ、それじゃあ仕方ない。正直に話すとしよう。


「まあぶっちゃけ蹴ったので今後もよろしくお願いしますなんですけど」

「ちょっと待ってそれはさすがにやっちゃダメなやつでしょう!?」


何事も、足と髪の前には些事なのだよ。


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