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13話 ちょっと神様ぶん殴ってくるわ

 サリーに案内されて連れてこられたのは、雲の上だった。そこは白い雲が足元に広がっているだけの、純白の世界だ。その白い景色がどこまでも続いているため、距離感を見失いそうだ。


 俺の目線の先には、白いひげを長く伸ばした老人が立っていた。老人は背の丈ほどもある木の杖を持っており、仙人のような雰囲気を漂わせていた。


「もう来よったか。まさか大天使を篭絡(ろうらく)するとはな。ただの暴れ悪魔と思っておったが」


 こいつが街に雷を落とした張本人か。何ともまあステレオタイプな神なことだ。


 そして俺は確信する。やはり、創生スキルをくれた神とは違う。このじいさんは俺のことを知らないようだし。


 さて、まずは勘違いを正さないとな。俺は国を滅ぼしたことなんてないぜ。


「自覚無き悪意か。貴様が各国の王や要人を殺したことで、体制を保てなくなった国が続出しておる。これが滅びでなくて何だと言うのだ」


 知らん。俺はムカつくやつを殺しただけだ。勝手に責任を押し付けるな。


「言ってわかるなら、最初から苦労はないか。よかろう。暴虐の限りを尽くし、世界に災いをもたらす悪魔よ。わし自らが、裁きを下してやろう」


 バトルの流れか。俺はサリーを下がらせ、じいさんとの闘いに挑む。


「ソウル様、ご武運を」


 サリーはそう言って、この場から離れていく。サリーはもう、神のことはどうでもいいらしいな。俺の応援だけをしてくれる。


「悪に屈するなど天使の名折れ。あの者には後ほど、罰を与えねばならぬな」


 そんなことさせると思うか。俺の物に手を出すなら許さん。


 というか、殺す。俺のことをさんざんこき下ろしてくれたしな。


 このじいさんだって、好き放題に雷をバラまいていた。自分を棚に上げて、俺のことを災いだの言ってたしムカつくわ。


「悪を滅ぼすためには、仕方のないことだ。わしは信徒達の願いを叶えたにすぎない。全ては貴様の所業によるものだ」


 そう言った後、じいさんは詠唱を唱え始めた。




「世界を(かたど)るは両翼。現世を()べるは鋭爪(えいそう)。誇り高き白竜よ。災禍(さいか)を払え」


 おうおう、のんきな事だ。わざわざ時間をくれてやると思ったか? 今のうちにワンパンで沈めてやるよ。


 俺は翼を広げ、じいさんの所へ全力で飛んでいく。だが、行けども行けども距離が縮まらない。


 おかしい、こんなに遠いはずがないのだが。間合いが詰まる気配は、全くない。何が起きているのかと考えているうちに、じいさんの魔法は放たれた。


「リブロン・メネ・リモンド」


 じいさんの持っていた杖の先端が発光したかと思うと、次の瞬間には白い津波が襲ってきた。まるで壁が迫ってくるようだ。


 とても避けることはできない。俺はそのまま、光の奔流に飲み込まれていった。




「光魔法に耐性があるとはいえ、この神聖魔法に抗うことは出来なかろう」


 だからフラグを立てるのは、やめておいたほうがいいって。とはいえ、今のはやばかったかもな。


「な……に? 今のはわしの最高の一撃だぞ。なぜ無事でいられるのだ!?」


 やばくなったらバリアを張る。アリスとの戦いで学んだことだ。


 さっきの神聖魔法とやらはたぶん、俺を消滅させるほどの威力を持っていた。創生スキルでとっさにバリアを張ったが、今ので亀裂が入って粉々になっている。


「まさか……貴様が魔神か。なるほど、わずか五日で世界を傾けるとは何者かと思ったが、得心がいった」


 まーた何か勘違いしてるよ、このじいさん。


 さて、次はこっちの番だ。俺はレーザーを放つ。


 だが、レーザーがじいさんに届く様子はない。さっきからこれだ。一体どうなってやがる。


「この空間は、特殊な力場を用いて作られている。貴様の攻撃が、わしに届くことはない」


 なにそれ反則だわ。どうやって勝てばいいんだよ。しかもじいさんの攻撃はこっちに届くんだよな。卑怯すぎる。


「大地に轟け。エクリアルミーヌ」


 俺が考えをまとめている間に、じいさんは詠唱を紡ぎ、電撃の魔法を放ってきた。俺は創生スキルで、攻撃を反射する鏡を作り出す。


 俺の攻撃が届かないなら、じいさん自身の攻撃なら届くのではないか。だがそう上手くはいかず、跳ね返った雷がじいさんに届くことはない。これでもダメか。


 俺はさらに創生スキルを発動する。

 イメージはメガホン。


 耳をつんざく大音量が、指向性を持ってじいさんへ向かう。だが、全くダメージを与えられていない。


「音による攻撃か。知恵を巡らしておるようだな。確かに貴様の声は聞こえておる。だがその音波も攻撃である以上、わしには効かぬ」


 目論見は看破されていた。このフィールドで戦い続ける限り、勝機はなさそうだ。




 その後も、俺の攻撃はことごとく無効化された。創生スキルでじいさんをワープさせようとしたり、時間を止めるといったことも試したが、解決方法は見つからない。互いが決め手に欠け、戦いは千日手の様相を呈していた。


 こうなると、あれしかないな。力技だが、俺のスキルは元々そういう性質のものだ。なんでも思い通りにするスキルだからな。


 俺は創生スキルを使用する。

 イメージは剣。


 生み出されたその剣は長い柄を持ち、まるで生き血をすすったかのように赤黒かった。我ながら、不気味な剣を作っちまったもんだぜ。


「もしや、それはフルンティングか。突き刺すことが出来れば、どんな者でも殺すことが出来る名剣だな。だがわしに攻撃が届かない以上、無用の長物というものだ」


 フルチンだか何だか知らないが、馬鹿にしてると痛い目を見るぜ。俺は生み出した剣を、足元に広がる雲に突き刺す。剣には、崩壊のイメージを付与してある。


 膠着(こうちゃく)状態を打破するには、このフィールドをどうにかするしかない。じいさんに攻撃は届かないが、このフィールドへの攻撃は出来るはずだ。


 直後、大きな振動を伴って、空間が震え始めた。


「まさか、この力場を破壊したのか!? 原始の時から変わらず保っていたこの力場を!?」


 どうやら思い付きは成功したようだ。純白の景色は崩れ去り、闇夜に浮かぶ満月が辺りを照らす。


 光と影の混じる雲の上で、俺とじいさんは向き合っていた。さて、これでじいさんに攻撃できるようになった。俺は剣をじいさんに向ける。


「ま、まさかわしを殺す気か。ゆ、許されると思っているのか。わしは、わしは! 原始の時代から、この世界の均衡を守ってきたのだ! わしを殺すという事がどういう事か分かっているのか!」


 知らん。ムカついたから殺す。それだけだ。


「や、や、やめろ! やめろおおおおおお‼」


 俺は持っていた剣で、じいさんを突き刺した。じいさんの体は崩れ落ち、塵となって消えた。


 俺は神に勝利した。

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