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17、『傭兵』


 結局、幾つか見つかった残骸のうち、レコーダーの内蔵部が変形していないのはたったの二機だけだった。

しかもその内の一機は俺のヤツだった。

俺と俺の使ってた機体が両方生き残ってるとかどんな確率だよ。


 まぁ何はともあれレコーダーの確保は終わった。

ただレコーダーを取り出すには機材が無きゃ無理だし、山ほど乗っかった瓦礫を除けることもできない。

という訳で、あとはもう増援の本隊を待つばかりだ。


 そうして待つ間、ロッティに少し話を聞いてみることにした。

「なぁ、あんた……一体どこの所属なんだ?」

最初、いろんな事が立て続けに起こっていたせいで全く気にする余裕もなかったが、よく考えてみれば色々とおかしい点があった。


 まず第一にレファールの軍が用いるウィークはウルヴズのみである点。

いやもちろん唯一機体(ユニーク)を除いての話になるが、そっちはそっちで普通は表を出歩かないからあり得ない話だ。

そして第二に、そもそも俺の頭にある知識の中では、どこの国の通常機体にも唯一機体にもブリュンヒルデと同一の構造の機体は存在しない。

というかツインスイング関節(一般的なパーツの末端同士を重ねて回転させる軸関節と違い、円弧状のレールの上をスライド形で実現する関節構造)を採用してるやつなんて初めて見たぞ……。


()()()レファールの予定。所属については私は知らない。」

「ん? ()()()?……ってことはつまり……」

「そう。私たちは"マーセナリー"。」

マーセナリー……意味はそのまま"傭兵"。つまりは特定の国や地域には所属せずに各地を渡り歩き、自分達の技量を商品として売る人々、もしくは組織のことを指す。

「なるほどなぁ……」

確かにマーセナリーは小規模ゆえに軍隊のように厳格な規格を定めて運用するメリットはそれほどない。見たことがないような妙ちきりんな機体を使っているのにも納得だ。

まぁあんまり尖りすぎててもあれだが……。


「そういえば……」と俺が話題を変えようとしたときだった。

ロッティが突然立ち上がり、「着いたみたい」と言うや否やさっさと踵を返す。

まさか移動するとは思ってなかった俺は、慌ててその後ろを追いかけた。


「おいおい、どこ行く気だ?」

ロッティが一体どこへ向かっているのかはわからないが、明らかに目的地がある動きだ。

ふむ。向かっている方向から見るに、中央広場だろうか。

ただなぜ基地の外側へ向かわないのだろうか。

普通、傭兵といえば大型トレーラーなんかで移動するもんなんだが……。


 やがて広場につくと、ロッティがやおら空を見上げる。それに釣られて俺の視線も自然と上を向く。

「来たよ。……()が。」

「……船?……」

もう一度よく目を凝らしてみるも、船と呼べるような物は、というかそもそも人工物自体まったく無い。

俺がさすがに疑惑の目を向けようとしたその時、空の一部が()()()


 いや、歪んだと言ってもほんの数瞬のことだったのだが、変わりにぐにゃりと捩れた景色が元に戻ると、そこにはついさっきまでは居なかったはずの巨大な何かが佇んでいた。

大まかな形だけは航空機に似ているが、その割りには大きい、大きすぎる。全長は100mを優に越えているだろう。

いやそれよりもさっきの不可視化だ! ありゃあ光学迷彩だ!確かまだ実用化はされていなかったはずだぞ!?


 俺が唖然としていると、隣ではロッティが手を振りながら通信機で空に浮かぶ飛行機モドキとコンタクトしていた。

「……艦長? こっち見えてる?」

『あぁ見えてるぞ。で、となりの若造が救難信号の主か。ふーむ…………』

ロッティが持っているのはスピーカー式の通信機なのか艦長と呼ばれた人物の声が発せられる。

ただ艦長と言う割にはいささか……いや、かなり声質が若く高音だ。

そして艦長は微かに唸ったかと思うと、ちょっと間何かを考え込んでいるように黙りこむ。

『……まぁひとまずは置いておくか。先に着陸させるとしよう。二人とも、離れておれ。』

だがしかし一旦考えるのは後回しにしたらしく、艦長がこちらに注意喚起するのと同じくして馬鹿げた巨体がゆっくりと降下し始める。


 降りてくるにつれてよりその詳細が露になる。

航空力学なんて考えちゃいないであろうどうやって飛んでるんだ!?と言いたいぐらいゴツゴツと鋭角に刺々しい外観、翼が付いている癖になぜか垂直移動しているし、あとどういう技術なのかまったくの無音で降下してくる!

俺が見たこともない技術の塊に脳内で興奮半分驚愕半分の大騒ぎをしているとロッティから声が掛かる。

「あれが私たちの家であり足、次世代機動航空母艦『Ζ(ゼータ)ドレイク』」

『そして……ようこそ客人。我らは第152番傭兵小隊(マーセナリーコマンド)『ヴァルハランス』。歓迎するぞ?』

そう言った艦長は、通信機の向こうでニヤリと笑みを浮かべている……ような気がした。

補足

・軸関節はさらに分かりやすく言うとプラモデルみたいに棒と穴を組み合わせてる関節。

・ツインスイング関節は検索すれば出てきますが脆そうな関節って認識で十分です。

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