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第5夜会 指先で決まる無罪の犯人-フィンガーディレクション(後編)

後編です!

謎解きなので前編・中編からをオススメいたします。



 みなせが指を指した先には驚いた顔のロサナがいた。


 部屋にいる全ての人間が驚きの声をあげた。

 それは勿論、ロサナが犯人というのはあり得ないことだからである。


当然それは反論として声が上がり始める。


「おいっ! みなせどういうことだよ!」


「そうだよ~! ロサナが犯人なんてあり得ないよ!」


「はいっ! 私もロサナさんが犯人なんて信じられません!」


「みなせさま……」


「……」


 女子会のメンバーは叫び、従業員であるイズミとコレットも不安な顔を見せる。


 その中で最初は驚いていたにも関わらず、一番落ち着いた声でロサナが口を挟む。



「みなさん。お静かに……」


 騒ぎ声の響く部屋の中、静かで冷静な声が全員の中に染み渡るようだった。

 全員が不安でガヤガヤ騒いでいる中にすぅ……っと声が響き、全員がとても小さなその声に耳を傾け静かになった。


「……みなさん。感謝を伝えますわ。

 私のためにこんなに必死に否定してくれるのはとても嬉しいです。

 勿論、私は犯人ではございませんわ。

 なので凄い驚きましたがみなさんのお陰で冷静になれました……みなせ。なぜ私を指差したのですか? 

 私はその貴族の名前は本日初めて知りましたわ。

 面識はない……とは完全に言えないわ。

 これでも王国随一の魔法学校の校長……知人を辿っていけばもしかしたらオーレリアに近づく可能性はございます。

 しかし、それがどうして私が犯人につながるのかしら?」


 ロサナの言葉に全員頷き、再度みなせの方へと目を向ける。

 みなせは話始める。


「ロサナさまは犯人ではございません。もう一度答えを指差します」


『えっ!?』


またしても全員が驚きの声をあげた。


「なんで、私を!? 私も知らないっ! 

 ロサナの言ったように知人を辿れば可能性はあるかもしれないけど!」


 次に指を指されたのはチェルシーだった。

 当然チェルシーにも心当たりは内容で狼狽えていた。


「ちょっと、みなせさま? どういうことなの?」


 コレットが不安な表情でみなせに訪ねた。

 そしてみなせは話始める。


「私はロサナさま、チェルシーさまを指差した訳ではございません」


「はあ~? 何をいってるんだい?」


「確かに私たちに指を指していましたわよ」


「そう捉えられてしまったのであれば申し訳ございません。

 私が指を指した場所は【魔の階段】に指を向けました」


「【魔の階段】はみなせさんのお店に行くために通る道の一つですよね? あの長い階段の」


「あそこはキツいよね」


「はい。私はそこを指しました」


「でも! 私を指していましたわよ」


「それは私の角度から指を向けるとたまたまロサナさまと被るからでございます。それはチェルシーさまにも当てはまります」


「わっ、私もか?」


「はい……私はチェルシーさまの後ろに飾られている絵を指しました。そして、その絵を描いた人物は素晴らしい人でよく当店にご来店されてお話をするのですよ」


 チェルシーが後ろを振り向くと他の個の場にいる全員が同じ方向を見た。

 そこには小さな絵が飾られていた。

 それを見て全員は同じことにようやく気が付いた。


「アイリスさんはちゃんと相続書類の場所を指していたんですね……」


 ユアが驚いた顔をして第一声を話した。


「でも、じゃあ何処を指差したんだ?」


「絵……」


『絵?』


 チェルシーの疑問にイズミが囁くように呟く。

 それを聞いた全員が繰り返すように同じ言葉を発生した。


「イズミは言っておりました。

 アイリスさまの寝室は家族の絵が入り口に飾られているだけだと……

 つまりはその絵の裏に相続書類が隠されております。

 私の予想だと有名な画家に依頼したわけでもないでしょう。

 そして、歴史的な偉業を成した人物ならいざ知らず後々莫大な価値がその絵に生まれる訳ではありません」


「アイリスさまは言っておりました。『家族ができたら何よりも大切にしなさい』とアルバムを見ながら……」


「つまり、アイリスは娘オーレリアに家族の大切さを思い出してもらいたいがために相続書類を家族絵の裏に隠したのですわね」


「はい。もしくは、イズミが持っているアルバムの中にあるかもしれません。

 そして指の先にイズミがいたということは全く気付かないでその隠した方向を指したのです。

 指の差す情報は多面的な意味を持ちます。

 ましては一言も発せず指を差しただけの情報などとても1つに断定することは難しく思います」


「では私は……」


「全く恨まれてなどおりません。恨まれるはずはございません。

 アイリスさまより時間は短いですが私が一番それを理解しております……

 イズミ……あなたは人に恨まれるような人ではございません。

 そうなると答えは後ろに飾られていた絵に関係する場所・方向から読み解くほかございますまい」


 がたんっ!


 椅子を倒しイズミはみなせに抱きつく。

 本来であれば女子会のメンバー、そしてみなせに対するヤキモチ焼きであるコレットが文句を言うだろう。

 しかし、全員がそれをしない。

 

 涙を流すイズミを見て心から良かったと思っているため、それぞれの胸に抱いた恋心からのヤキモチは自然と怒っていなかったのだ……



……



……




……





「皆様、本日は改めてこの夜会にお招き頂き誠にありがとうございます」


 数分後落ち着いたイズミが夜会メンバーに頭を下げる。

 みんなあわててそれを起こそうとする。

 そして、その行動が先ほどの重い空気と打って変わっていたので笑い声が店内に木霊する。


「いやーよかったよかった! イズミの心のつっかえが取れたみたいでさ!」


「そ~だね!」


「あんたたち見直したわよ! でも、何だかんだであんたたちじゃなくて結局みなせさまが解決したけどね」


「あはは、それはいつものことなので」


「いや! 私は1度謎を説いたぞ!」


「はいはい。ややこしくなるから黙りましょうね。でも、みなせはどうしてそんなにも何でも解決できるのかしら」


「それは気になるな~。色々知っているし」


「私の故郷が勉強することを国民の義務化していたからです。

 それに本を自由に読め、また自由に知識を深めることができました。

 さらにはそうですね……この国で例えるなら吟遊詩人や劇団員のように語り手が沢山おり、物語が伝わりやすい機械などもございました。

 私は学者さまとは比べるまでもなく、あくまでも私の故郷では一般知識の程度しか知りません」


「へ~なんか気になるな~。みなせの故郷に行ってみたいな~」


「私は元いた場所には戻れないと思っております。それにこちらにいた方が充実しております」


 みなせの発言に皆一同に静まりかえる。

 そして、沈黙を解くようにロサナがみなせに話しかけた。


「でも、なんだかんだで色々解決しますわね」


「そ~そ~」


「それはたまたまという部分と皆様のお陰でございます」


「私たちですか?」


「はい。皆様が話し合って頂く内容を聞いて情報を整理しているだけでございます。

 私一人では思い付かない内容を皆様が話し合い、私の中で整理してたまたま別の答えにたどり着き、それが正解なだけでございます。

 したがって答えにたどりつけるのは私一人の力ではございません。

 では誰が解決したのか? 

 ということですが答えは簡単でございます」


『……?』


 全員が首をかしげる中みなせはニヤリと笑い。

 こう続けた……




「ティアラ会でございます」




……



……




……




 暗い路地裏で一人の女は項垂れていた。


「……ぺっ」


 吐いた唾は赤い色をしていた。

 雲が風でながれ夜空から月現れる。

 暗い路地裏にも月明かりが入りあたりが見えるようになる。

 路地裏が照らされると数人の男が倒れて気を失っている。

 項垂れている女はその紅く長い前髪をかきあげる。

 顔には殴られた後があり、目は鋭いが光は宿っていなかった。


 ふと人の気配を感じた女はそちらの方向に目を向けた。

 この先には10代半ばくらいの若い男が立っていた。


 こんな夜更けの路地裏に若い男の子がいるを女は疑問に感じた。


「なに……? ……見せもんじゃないんだけど」


 男の子に向かい女は話しかける。

 少し声色を変えて……

 脅しているつもりであった。


『自分に関わるな』

『あっちへいけ』

 

 という意味を込め皮肉を言い、そして睨みつけていた。


「あなたがイズミさんですか?」


 男の子は女の名前を発してきた。

 女は驚いた。

 自分のことを呼ばれることはよくあったがそれは異名……

 あだ名みたいなもので名前を呼ばれる何てことは仕事をしていた時以来で久しぶりであったからである。


 きょとんと呆気に取られていると男の子は女の前までトコトコ歩いて目の前で止まった。


「僕の祖母はあなたの主人……オーレリアさまのお友達でした。

 オーレリアさまがお亡くなりになったあと、もしもあなた自身困っていることがあれば面倒を見て欲しいと」


 死んだ主人の名前が出た女は少し驚いた。

 しかし、すぐに立ち上がり男の子の胸ぐらを掴んだ。


「はっ! 何を言うかと思ったら偉そうに! 面倒を見ろだって!? あんたの婆さんは何様だっての!」


「祖母の名前はセラヴァル=ガイラルディア=ヴェシレルフスキーですよ」


「えっ……」


 その名前を聞き女は少し狼狽える。


 セラヴァル=ガイラルディア=ヴェシレルフスキー


 王国の大富豪であり、不老不死の魔女といわれる女で知らないものはいない。

 そして、自分の主人には友達と呼ばれる若いがただならぬ雰囲気を持ち合わせた美人がいたことを思い出した。


「そっ……その女がなんだって……」


「めんどくさいからヤダ……と断ったそうです」


「はあっ!?」


 女は驚きの声を上げた。

 男の子はそれに続ける。


「でも、孫の私が店を始めてしばらくして人手が足りなくなった際、ぼそっと貴方のことを推薦してきました」


「それだけであたしに声をかけてきたっていうのか!?」


「はい」


 女は男の子の胸ぐらを掴む手を緩める。

 そして、ひきつった笑顔を見せた。


「ははっ……バカみたい。見ず知らずの私に声かけてきて」


「無用心かもしれませんね。

 しかし、私は祖母を信じております。

 その友人の頼みで更に祖母から推薦があった貴方なら信じられます。

 それに……だって……」


「だって?」


 男の子は顔を真っ赤にしてうつむく……


「……美人です」


 男の子のぼそっと呟く声を聞き、一瞬時が止まる。

 止まった時は女の楽しそうな笑い声で動き出す。



「あはははっ。なにそれっ! 変なの!」


 女は久しぶりに心の底から笑った……

 そして、少し涙も流れた。


「こほんっ! 私は貴方を従業員として雇いたいです……来ていただけないでしょうか?」


 女の前に手を差し出す男の子。

 その手を取る女。

 そして、当たり前の疑問を口にする…… 


「それで? 私が働き始めるお店って?」


 男の子はにっこりと無邪気な笑顔で答える。


「【小烏(こがらす)】です」








第5夜会 指先で決まる無罪の犯人-フィンガーディレクション 完


つづく



時間が空いてしまい申し訳ございません。

話の内容は決まっていたのですが、

プライベートでブラック企業から転職など

色々重なって書いてる時間がありませんでした。


少し落ち着いてきたのでまた書いていきたいと思います!

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